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進級試験

 進級試験実技。

 まさか、こんな結果になるなんて……。

 僕は頭を抱えてしまった。



 結局あの時、ダンクとの決闘は、僕の方が先にステラにバラの花を散らされたとダンクが主張して譲らず、僕の負けだということで僕が折れた。

 それでもダンクは密かに勉強を自分でやり始めたらしいと噂で聞いた。

 僕たちも図書館の隅で机に向かっているダンクを見かけたことがあった。

 それにもかかわらず、ダンクの先週の進級試験の筆記の結果は悪かったらしく、今週のダンクは以前にも増して塞ぎ込んでいるように見えた。

 まあ、ゴリダムには申し訳ないけど、僕としては出来ることはやったのだ。

 ダンクとは友達にもなれなかったな……。


 僕はと言えば、進級試験の筆記はバッチリだったので、実技試験も楽勝だと思っていた。

 もう春休みの計画をステラとも相談しているし、ファーとどんな休みを過ごせるかって想像して今からウキウキしてる。

 実技試験は、二人一組でペアになり、課題の魔法を作ってお互いに魔法をかけ合うというものだった。

 採点は公平に採点魔法で行われるらしい。

 課題の魔法は火、水、風、土の中から一つを選ぶ。

 僕は水の魔法を選んだ。

 もちろん、スキルの魔法陣は使わない。

 授業で学んだことの成果として自分で魔法陣を作らないと意味がない。

 実技試験のペアは先生が決めるらしい。

 僕はファーとペアになれたらいいなと思っていた。


 しかし、先生が決めた僕のペアの相手はダンクだった……。


「なんで、僕がダンクとペアなんですか?」


 僕はルカ先生に聞いた。


「成績で決めたのよ。詳しいルールは教えられなくて申し訳ないけれど。」


 きっと、成績の上の方と下の方で順番にペアにしていったのだ。

 他のペアを見ていればなんとなく想像が付く。

 クラスで成績一位のファーの相手は……あれ、ファーはペアがいない?

 実技試験はいつもの実習で使っている裏山の広場で行われる。

 ファーはルカ先生と何か話した後、ルカ先生相手に課題の魔法を使っていた。

 ルカ先生が防御魔法でファーの魔法を防ぐと、採点魔法が点数を読み上げた。


「百点!」


 ファーなら当然だな。

 僕がファーに小さく手を振ると、ファーも小さく手を振って返してくれた。

 そうやって順番にクラスメートたちが課題の魔法をペアの相手にかけ、相手は防御魔法で防ぐ、という試験をやっていった。

 僕とダンクのペアの順番は最後だった。

 僕はダンクとはこの間の決闘以来、全く話をしていなかった。

 目を合わせてもいない。

 ハァ……、さっさと終わらせよう。



 僕とダンクの試験の順番が回ってきた。

 まずダンクが杖を構える。

 僕はいつでも防御魔法を出せるように構えた。

 しかし、ダンクはなかなか魔法を使ってこない。


「どうした? ダンク?」


 僕の問いかけに応えるかのように、ダンクがボソリと言う。


「……竜議員の息子。悔しいが、俺はお前のことを認めてやる。」

「は?」


 なんか嫌な予感がする……。

 ダンクが杖を頭上に掲げた。

 ダンクの杖の先から炎が溢れるように出て、火の玉を形成し始める。

 たしかに課題の魔法の一つは火の魔法だ。

 でもこれは授業で習った通りの魔法ではない。


「なあ、お前だったらこれも受けれるだろ? 俺が一発逆転するにはこれしかないんだよ!!」


 ダンクの頭上の火の玉は見る見るうちに大きくなっていった。

 わかったぞ。

 ダンクは課題の魔法に独自のアレンジを加え、この試験で披露しようとしていたのだ。

 空が見えなくなるほど大きな火の玉が頭上を覆う。

 チリチリと熱が伝わってくる。

 こいつ、こんな魔法力を持っていたのか?

 だけどこんなの、僕だけじゃない!

 みんなを巻き込みかねないぞ!


「うわああ!」

「キャー!」


 危険を察したルカ先生やクラスメートたちが防御魔法で身を守ろうとしているが、おそらくこの火の玉を防御魔法で防ぐのは無理だ。

 目の前にいる僕がダンクを止めなければ!


「ダンク!」


 僕はダンクの作り出した頭上の火の玉に左手を向けた。

 魔法無効化のスキルを発動するしかない!

 僕は左手のスキルが火の玉よりも大きな手になるようにイメージした!

 イメージ通りに僕の左手から出たスキルの手は、なんとか火の玉を掴んで握りつぶすようにそれを消し去った!

 ボンッという音と共に火の玉と左手のスキルは相殺され、周囲に火の粉と僕のスキルの残骸が降り注ぐ。

 やった……!


「は? 不発だと?」


 ダンクが、状況を理解できていないというような顔で、火の粉が降る空を見上げながら言った。

 不発じゃない!

 僕が消したんだ!


「ダンク、自分が何やろうとしたのかわかってるのか!?」

「何って……みんなをあっと言わせるにはこれしか……。」

「あっと言わせる必要がどうしてあるんだ? 普通にやればよかったんだ!」


 僕はダンクに怒りを通り越して呆れてしまった。

 やっぱりダンクのことは全然理解できない。


「ダンクくん、後で職員室に来なさい! ……さ、アスラくんで試験は最後よ。課題の魔法を見せて。」


 え……、こんなことになっても試験やるんですか?

 仕方がないので僕は自分の魔法の杖を、うなだれてるダンクに向けて掲げた。

 ……あれ?

 魔法が出ない。

 何度やっても杖から魔法が出ない。

 もしかして、さっきの魔法無効化スキルが僕の魔法の杖の魔法まで消してしまったのか?

 マズい……。


「あ、あの、ルカ先生。試験は後でもう一度……。」


 しかし、僕の訴えを遮るように、採点魔法が高らかに点数を読み上げる。


「採点結果……二人とも零点!!」

「……前代未聞だわ。」


 ルカ先生が開いた口が塞がらないといった顔で言った。


 なんで、僕まで零点になるんだよ……。

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