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君の夢

 僕が見る前世の賢斗の夢は同じ場面を繰り返すこともあるし、子供の頃の夢だったり、高校生になってからの夢だったりする。

 僕は賢斗の夢を見ている時、僕がアスラであることを忘れていることが多い。

 夢の中の僕は賢斗として賢斗の記憶を思い出す。

 その思い出した前世の世界の記憶を僕は夢から覚めても憶えている。

 僕にとって賢斗は何なのか。

 目が覚めた後の僕は、自分を賢斗だとは感じてはいなかった。

 やっぱり賢斗のどの記憶も、僕にとっては遠い過去のことなのである。

 その後にアスラとしての自分の記憶がしっかり根付いている。


 でも、その日見た僕の夢は賢斗の世界の夢なのに少し様子が違った。

 賢斗の部屋にいる僕……。

 そう賢斗の部屋にいるのはアスラだった。

 僕は賢斗の部屋の本棚を見る。

 懐かしい漫画が並んでいる。

 手に取ってパラパラとめくってみる。

 こんな話だったっけ?

 それにしても夢の中で自由に動けるなんて今までなかった。

 僕は賢斗の部屋のテレビを付けた。

 テレビには天気予報が映っていた。

 そうか、今は朝なんだ。

 二千十九年の七月……。

 何かあったはずだけど何だっけ?

 思い出せない。

 僕はしばらくぼーっとテレビを眺めていた。


 急に賢斗の部屋のドアが開いた。

 僕はビクリとして、ドアの方を見つつ硬直する。

 ドアがゆっくり開く。

 部屋に誰か入ってくる。

 僕が、アスラが賢斗の部屋にいるのはまずいのでは?


「賢斗?」


 部屋に入ってきたのはいつもの少女だった。

 制服姿で、いつものように賢斗を起こしに来たのだろう。

 ゆっくりとドアを開けたのは賢斗が寝ていると思って気を遣ったのか。

 そういえばいつも賢斗は彼女に起こされるまで、目を覚ましたことはなかった。


「なんだ賢斗、起きてたの。」


 制服姿の少女は僕を見て、そう言う。

 彼女には僕が賢斗に見えているのか。

 彼女の表情からはわからない。

 いつも僕には彼女の顔はぼやけていて見えないのだ。


「起きてたなら、早く支度してよ。」

「あ、ああ。」


 僕はできるだけ賢斗のふりをして答えた。

 賢斗ならこんな感じだろうか?

 しかし、彼女は何か違和感をおぼえたようだ。


「なんか変ね? もしかして風邪? 熱があるの?」


 彼女が僕の額に手を当てようとする。

 彼女のぼやけた顔が近づく。


「あ!」


 突然、彼女の顔がファーの顔に変わる。

 どうして!?

 ファーは僕の頭に手を当てて、そのまま僕の頭を撫で始める。


「ファーなの?」

「何? 変なこと聞くのね?」


 目の前にいるのは、夢の中の彼女じゃない。

 完全にファーだった。

 僕はファーにされるがままに頭を撫でられ続ける。

 頭がぼんやりとしてくる。


「アスラ。」


 ファーが僕の名前を呼んだ。

 気付くと、僕の目の前には服を着ていないファーが立っていた。


「ファー!?」

「アスラ……。」


 裸のファーが僕に近づいてくる……。


 いやいや!

 さすがにこれは夢でしょ!

 これは完全に僕の夢だ!

 僕は無理矢理に頭を起こした。

 目が覚めた場所は寮のいつもの僕の部屋だった。

 まだ外は暗い。

 心臓がドキドキしている。

 頭もジンジン痛い。

 僕は、なんて夢を!

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