初めて向けられる殺意
「なんだあ? 勝手について来てんじゃねーぞ!!」
黒いフードの男は僕らを威嚇するように怒鳴り続ける。
男の目は血走っていて正気じゃないように見える。
その異様な雰囲気を前にして僕とレオは緊張で動けないでいた。
「そ、そうだ。この子たちは私とは関係ない。この子たちは解放してくれないか?」
ユウキ氏が僕らを庇うように前に立って、黒いフードの男に話しかける。
「はあ? 関係ない?」
男がユウキ氏の言葉に大げさに反応して見せる。
そして、さっと右手を上げた。
ガガガガガ!
その次の瞬間、何か硬い物がぶつかるような音が部屋に鳴り響く。
「え!?」
気付くと僕の目の前に金属の太い針のようなものが浮かんでおり、最初は何だかわからなかったが、それが僕の自動防御魔法が作った数枚の魔法の板に突き刺さっているのだとわかると、僕はサッと血の気が引いた。
攻撃された!?
金属の針で!?
防御魔法がなかったらこれが僕の頭に突き刺さっていたところだ。
「なんだそりゃ? なんでお前死んでねーんだ!?」
ヤバイ!
フードの男が両手を上げる。
僕はレオとユウキ氏の前に出る。
僕の自動防御魔法に数本の金属の針が突き刺さる!
なんだよこれ!
金属の針は僕の魔法が作った魔法の板を五六枚打ち抜いたところで辛うじて止まっている。
大会用の攻撃魔法なんて比較にならない威力だ。
これが本当の魔法の攻撃なのか。
「はは! 面白れーもん持ってんじゃねーか!!」
フードの男の攻撃は更に激しさを増していく。
横殴りの雨のように金属の針が僕に向かって降り注ぐ。
まだこれだけの攻撃でも僕の自動防御魔法が全て防いでくれているが、これ以上威力が上がったらわからない。
魔法の板が止めている金属の針は僕らの体まであと数センチで届くギリギリのところまで来ていた。
それに魔法力切れの心配もある。
フードの男の目が笑っている。
僕らの様子を見て楽しんでいるのか!?
ガガガッ! ガガガッ! ガガガッ!
金属の針の雨は止む様子を見せない。
「う、うわあああ!!」
僕は恐怖を感じて思わず叫んでしまった。
フードの男は明らかに僕らに殺意を持って魔法を使っている。
怖い!
今まで僕はこんな風に魔法を怖いと思ったことはなかった。
僕は恐怖で気が遠くなりそうなのを必死に堪えた。
「アスラ……!」
レオが僕を支えようとしてくれる。
ユウキ氏がフードの男に向かって叫ぶ。
「や、やめなさい! お前の目的は私だろう!? この子たちに危害を加えるな!」
「はあ? こんなの前にしてやめられるかよ! 初めて見たぜぇ、俺の針を全部受けられるつもりか!? ああん!?」
フードの男の攻撃は止まらない。
……もう限界が近い。
このままでは僕もレオもユウキ氏もフードの男の針でズタズタにされてしまう!
誰か、助けて!!
その時、何かが弾けるように、バン! という音がしてフードの男の攻撃が止んだ。
いや、攻撃は全て空中に留められていた。
僕らの周りが先ほどまでの部屋の空気とは異なる物に包まれる感覚がある。
「やあ、アスラくん、よく頑張ったね。おかげで助けに来られたよ。」
僕らの目の前に校長先生が立っていた。
夢じゃない。
校長先生が杖を一振りすると、フードの男は拘束されたようにガチガチになり動けなくなっていた。
フードの男は校長先生を睨み付け、絞り出すように喋る。
「お、お前……、なんでここに……!?」
「魔法学校の異空間とここを繋げたんだよ。痕跡を追うのに手間取ってしまった。よくも私の生徒とお客様を危険な目に合わせてくれたね。まさか私の部屋の前に罠を張るなんて何者なのかな?」
校長先生が更にフードの男を縛り上げる。
フードの男は一転、何も話すものかと口を固く閉ざす。
でも、校長先生の転生スキルの前ならそんなことは無意味だ。
「んんん? 中央センドダリア出身で、名前はアイン。なぜこのステータスでこんな魔法が使えるんだ? こいつはいったい?」
なんだ?
校長先生がフードの男の『ステータス』を読んでいるようだが様子がおかしい?
「……いや、詮索は後だ。まずは魔法警察に引き渡そう。もしかしたら、この間の剣技大会の事件とも関係があるかもしれない。ユウキ外交官、アスラくん、レオくんは安全なところへ。」
「あ、はい。」
校長先生が来てくれてすっかり安心して緊張が解けた僕はなかなか立ち上がれないでいた。
校長先生が僕の手を引いて立たせてくれる。
「ありがとうございます。」
「フハハハハハハハ!!」
僕が校長先生にお礼を言ったのと急にフードの男が高笑いをしたのは同時だった。
そしてフードの男は何かに飲み込まれるように消えた。
校長先生が杖を咄嗟にかざすが魔法は何かに弾かれる。
ヘビだ。
部屋の半分くらいの大きさの巨大なヘビが校長先生の魔法が当たった一瞬、僕らの目にも見えた。
透明化魔法だ。
透明になったヘビの魔物がいる!
部屋の壁が外に向かって吹き飛んだ。
おそらく透明になっているヘビが逃げていったのだ。
フードの男はヘビに飲まれたに違いない。
「逃がしてしまったか……。」
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