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改めてそう言われると僕はへこむ

「ねえ、アスラ。起きてる?」

「……ん? 起きてるよ。どうしたの、ステラ?」

「ううん。明日ついに出発するのだなと思ったら寝れなくて。」


 電気を消した部屋にカーテンの隙間から月の光だけが漏れて見える。

 僕は隣のステラのベッドを見たが、ステラの姿は暗くてよく見えない。

 僕とステラは小さい頃からずっと同じ部屋で隣同士のベッドで寝ていた。

 いや、本当は十二歳の時に別々の部屋に分かれた時があったのだけど、その時ステラがおねしょをするようになってしまい結局元の部屋に戻ったのだった。


「もしかしてステラ、僕と離れて寝ることになるのが不安だったり?」

「そ、そんなことない! いつまでも子供じゃないんだから!」

「じゃあいいじゃないか。僕はやっと魔法学校が楽しみになってきたよ。」

「そう! それはよかった……。ちょっと心配だったのよね。もしかしてアスラが本当に嫌がってるんじゃないかって思って。最近は稽古をやり過ぎたかなとも思っていたし……。」

「そりゃキツかったけど、ステラが僕のことを思ってのことだってわかってるから。」

「……やれることはやったし、あとはアスラの頑張り次第だからね。私の稽古に付き合えたんだからきっと大丈夫。うん、大丈夫だから。」

「うん……。」


 ステラは優しく言ってくれているが、僕の剣術はあんまり上達していない。

 おそらく魔法学校の入学水準にも達していないだろう。

 それはステラもわかっているので、今さら僕の入学を条件にして僕を巻き込んだことに後ろめたさを感じているのだと思った。


「まあなんとかなるさ。明日は早いからもう寝ようよ。」

「そうね……。」


 僕はそう言うと目を瞑って、さっさと寝ることに努めた。



 翌日、魔法学校への出発の日の早朝だ。


「ほら……、荷物は先に送ってあるから……。他に何か必要なものがあったらすぐに言うのよ……?」


 母ティアラが僕らの見送りに駅まで来ていた。

 母は昔から声が小さい。

 それでいて剣術の稽古の時には容赦なく僕を打ちのめすのでちょっと怖い。


「大丈夫よ、お母さん。」


 既に魔法学校の制服に身を包んだステラが僕に同意を求めるように僕を見て言った。

 僕らの手にはカミエラ先生があの日、僕らに贈ってくれたお守りが握られている。

 僕らがカミエラ先生にケーキを贈ったあのディナーの席で、カミエラ先生も僕らにプレゼントを用意してくれていたのだ。

 僕はそれを握りしめてステラに向かって頷いた。


「うん、心配ないよ。行ってくるね。お父さんは見送りに来れなくて残念だったね。」


 父はこの国の議会の仕事をどうしても抜けられなくて見送りに来なかった。

 というか、もうしばらく会ってないかもしれない。

 今この国はあまり治安がよくなかった。

 十年前に憑依者たちが立ち上がり王政を倒して議会制を敷いた。

 憑依者革命と言われる。

 父はたまたまその時の革命の中心人物たちに近いところにいたため、なし崩し的に議会に参加させられて、今でもその地位から離れることができない。

 王に仕える騎士だった僕の家、特に厳格な騎士だった祖父は父たち憑依者の行いに憤ったが、結局今の家が以前と変わらず存続できているのは父のおかげなのだと思う。


「お父さんには……たまに手紙書いてあげてね……寂しがるから……。」

「わかったわ、お母さん。」


 この国で微妙な立場に置かれている僕らが家の外に出してもらえなかったのは、父の過保護のためである。

 最初、父はステラと僕の魔法学校入学には大反対していたのだが、カミエラ先生からの説得と魔法学校が全寮制であること、そして東の国の方が僕らにとっては良い環境なのではないかと思い直したことで渋々ながら入学を承諾したのだった。


「それじゃね。たぶん長期休暇には帰るから。」

「うん……、いってらっしゃい……。」


 僕とステラは、手を振る母に別れを告げて東の国行きの汽車に乗り込んだ。

 僕らの国、中央センドダリアから東の国イーストラへ行くには、この汽車が唯一の交通手段である。

 これも憑依者の技術によって作られた蒸気機関車だった。

 僕とステラはこの後東の国に着いたらすぐに入学式に出席するので魔法学校の制服を着ていた。

 汽車の中には僕らと同じように魔法学校の制服を着ている人が何人かいるようだった。


「同級生かな?」

「上級生かもよ?」

「アスラ、声かけてみたら?」

「え、やだよ、ステラがやりなよ。」


 僕とステラは汽車に揺られてる間ずっとヒソヒソ声で相談していたのだが、結局誰にも声をかけることはできなかった。

 こう言ってはなんだけど、僕らには同年代の友達がいなかったので人見知りだったのだ。



 東の国の駅に着くと僕らは、駅で待ってくれているはずの人を探した。


「あっ! ステラくん! ようこそ! こっちだよ!」


 すぐに僕らを見つけて手を振ってくれている女性が見つかったので、迷子にならずに済んだと思い僕はホッとした。

 女性は長い髪で眼鏡をかけていて、すらっとしたスーツを着ている。

 一緒に汽車に乗っていた魔法学校の生徒たちがその女性に次々と会釈をして降りていく。


「校長先生。わざわざお出迎えいただき、どうもありがとうございます。」

「いや、いいんだよ。ステラくんを是非とスカウトしたのは私なのだからね!」


 へえ、この人が魔法学校の校長先生だったのか。

 一回戦負けした僕は剣術大会の時には会えなかったので知らなかった。

 女性だとは聞いていたけどもっと歳のいったお婆さんなのかと思った。

 まあそれでも年齢はオバサンくらいなのかな……?

 若いわけではない。


「やあ、君がステラくんの双子のお兄さんのアスラくんだね? 私は校長のマリカ・スプリングだ。よろしくね。」

「あ、はい。初めまして。アスラです。僕まで入学できるようにしていただきどうもありがとうございます。」


 僕は一応感謝の言葉を伝えてみたが、校長先生はなぜか応えず僕のことをじろじろと見ている。

 いや、僕を見ているようでなにか宙を見ているような視線が合わないような感じだ。

 空中の何かを読んでいるというような……。

 そして僕と微妙に視線が合わないまま話しはじめた。


「んー! なるほどなるほど! これはこれはだね! そうか双子ね! いや、入学のことは気にしないでくれていいよ。そうかそうか。いやこれは大会の時に君にも会っておくべきだったね! そしたらきっとアスラくんも一緒にスカウトしていたはずだ。よかったよ、ステラくんが君の入学のことを言ってくれて。危うく見逃すところだった。」

「え? 何がですか?」

「まあ、そのうち話すことになると思うよ。今はまだ自覚が無いようだからね。しかしこれだったら君は……、騎士学科じゃないな……? アスラくん、君は騎士に向いてないだろう?」

「ええええ……。」


 何なんだ?

 僕はいきなり校長先生に騎士の才能について否定されてしまったのだった……。

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