夏の剣技大会が始まった
学校の剣技大会は魔法学校の敷地内の競技場で行われる。
普段は体育の授業が行われたりするところだ。
制服姿の僕とファーとタイムとメイノは生徒のために用意された二階の観客席の後ろの方に座った。
前の方は騎士学科の応援団に占められてしまっている。
「この席なら上からだけど全体がよく見えるね。」
「声は届くかしら?」
隣のファーがどこから持ってきたのかメガホンを構える。
ほどなくして校長先生の開会の宣言が行われる頃には小さな競技場の観客席は人でいっぱいになった。
入場料無料らしいので今日は学校の外からの来客も多い。
「出場者が六十名のトーナメントか。結構多いね。」
「参加は申込制だけど騎士学科の三年生は全員参加だって。二年生と一年生は各クラスから数名が出てるだけみたいだ。」
タイムが来場の時に受け取っていたパンフレットを見ながら僕に教えてくれた。
三年生にとっては自身の能力を外にアピールするチャンスであるらしい。
「これは二人が出てくるまで時間かかりそうだね。……あれ、ちょっと待って? この出場者のダンク・サイドパークってうちのクラスのダンクじゃない?」
僕は出場者の中にその名前を見つけてびっくりした。
魔法使い学科なのに剣技大会に出るのかあいつ。
「ほんとだ、魔法使い学科から参加してる人がいるね。」
タイムが興味深そうに言った。
「……サイドパーク家は名家だから剣術の心得があってもおかしくないけれど、騎士学科の三年生ばかりの大会に出てどうするつもりなのかしらね?」
ファーがどうでもいいという感じで答える。
「クラスのお友達ですか? 一緒に応援しましょう!」
「いや、友達ってほどじゃ……。」
メイノはハチマキを頭に巻いていて声を出すのに準備万端といった風で、すっかり応援モードになっていた。
僕も妙なところに気付いてしまったものだ。
ダンク……、期待はしてないけど、ついでに応援だけはしてあげようかな?
トーナメント表を見るとどうやらステラとレオは決勝まで進まないと当たらないようだった。
僕はこっそりファーに例の騎士学科の先輩の名前はどこにあるのか聞いた。
すると先輩もステラとは決勝まで当たらない位置にいた。
つまり、レオと先輩が先に戦う可能性があるということだ。
時間がかかると思っていた試合だったが、対戦は線を引かれた四角の中で行うこととルールで決められていて、その四角が競技場には二箇所用意されていて二試合が同時に進行することになっており、一試合五分くらいで終わっていくので、一時間ほどで最初の対戦はすべて消化されていた。
もちろんステラもレオも三年生相手に圧勝だった。
ファーとメイノが応援の声を出す間も無かった。
ダンクはステラたちの試合の裏でいつの間にか負けていたようだった。
そのまま二回戦、三回戦とステラもレオも進んでいき、準々決勝のレオの相手はついに例の騎士学科の先輩となった。
優勝したらなんてステラに言うだけあって、この先輩も剣術の腕はそこそこであるようだ。
でも僕は密かに先輩の試合を注目して見ていた。
先輩は確かに弱いわけではない。
先輩が使う剣は、中央センドダリアの騎士団で多数派の『ダリアの剣』だと思う。
しかしそれであるならば先輩の剣の構え方はバランスが悪く不完全だ。
隙も多いように見える。
これならレオの敵じゃない。
「レオー! 絶対勝てよー!」
「レオ! 頑張れー!」
「負けたら許さないから! レオ!」
「レオくん! 頑張ってくださーい!」
僕たちは大声でレオに声援を送った。
声が届いたのかレオが僕らを見て剣を掲げる。
そして次の瞬間にはもう集中に入り、目の前の先輩を見据えていた。
試合開始の笛が鳴る。
先輩が先制してレオに斬りかかる。
しかしレオには先輩の剣が見えているのだろう。
レオはその剣を冷静に躱すと軽く手首を返してカウンターを仕掛ける。
先輩はレオの剣を受けて、両者は力の押し合いの勝負になり睨み合う。
レオが先輩を押し飛ばし一歩後ろに下がる。
先輩はレオに追撃をせず体勢を整えるため剣を構え直す。
と、その隙を突きレオが一気に距離を詰めて剣先で先輩の右手の甲を打った。
レオの持ち味は正確な剣のコントロールとスピードだ。
無駄のない動作で確実に急所となるポイントを狙ってくる。
レオの攻撃を右手に受けても辛うじて剣を落とさなかった先輩はレオに反撃を試みるが、焦っているのか大振りになっている。
これではレオに当てることは難しいだろう。
レオはそのまま先輩の胴と頭を剣で打ち一本勝ちとなった。
「やった! さすがレオだ!」
レオはその後の準決勝も勝ち進み、同じく準決勝を勝ち上がったステラと、ついに決勝で相まみえることになった。
二人の決勝戦は良い勝負をしているように僕には見える。
レオの特訓の成果は表れていて、ステラの剣を抑え込んでいる。
というよりもステラの様子が少しおかしい気がする。
なんだろう?
勝ちを焦っているような。
その時、ステラの剣が急激に変化した。
ステラの白い光る髪が閃光のように走る。
あれは『ガラストラスの剣』奥義……!




