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オンラインゲーム・ギャングスタ  作者: 神立雷
第一章 VRゲームのランカーは、不遇職の初心者少女
11/22

其の異形、世界を御す者、未来人




     ◇◇◇




 都合よく初心者の前に現れたボスモンスター。

 それはいとも簡単に、不遇職の一撃で倒せてしまう。

 それを受けた掲示板は叩きではなく、驚きと称賛ばかり。

 そればかりか、『かわいい』や『あの初心者少女を邪魔しないように見守ろう!』とまで言われている。


 なんて都合のいい状況だろう。

 こんな優しい世界が幸運と偶然で生まれるだろうか。


 否。世間はそんなに甘くない。

 未発見のボスモンスターを初心者が見つけられる訳がなく。

 ゲーム開始直後にボスを倒せるなんてこともなく。

 掲示板の名無したちが見知らぬ初心者を応援するはずも、手を出さずに見守ろうとするはずない。


 これは作られた都合の良さだ。

 なるべくしてなった、設計図のある優しい世界だ。


 そしてそれをしたのは他でもない――――



――――ガチ勢である。




     ◇◇◇


     ◇◇◇



□■□ 時は少しさかのぼり □■□

□■□ 朱が捕らわれ、スゥが変身をしている最中 □■□



     ◇◇◇


     ◇◇◇



「森のボス、あの初心者に殺させねぇ?」


 

「……はぁ? あのパイパイデカ美にぃー?」


「さっきのえちえちビームでヤらせるつもりかァ?」




 マツダイの提案に、スゥを見ながら首を傾げるEAKと椎茸強盗。

 ちなみにスゥの名前は『スゥ・ラ・リュンヌ』であるし、彼女の上にもそう表示されている。

 間違ってもパイパイデカ美なんてトチ狂った名前ではない。


 そしてまた、スゥが見せたスキルも“えちえちビーム”なんてふざけたものではない。

 というかそもそも特段えっちだった訳でもない。

 鮮やかな菖蒲あやめ色の、普通のビームだ。


 そうしてなんともふざけた調子のEAKと椎茸強盗の2人。

 しかし曲がりなりにも、ガチ勢クラン『ああああ』の最前線に立つ者だ。

 ならば、ことゲームの話においてはきちんとするし、ちゃんと頭を回すこともできた。



「……いやー…………」


「ダメージは……2219かァ。ウ~ン、確かに出てるっちゃあ出てるけど……」



 彼らはマツダイと同じように、頭の中で見えている情報を精査する。

 しかしマツダイとは違い、考えたうえで改めて険しい表情を浮かべた。

 ヤギ面とスライムに表情は無いので、そういう雰囲気を出しただけだが。




「ん~、やっぱ無理っしょー。いくら瞬間火力があるつっても、あの初心者がボスとガチンコ出来るわけなくね? ボスのレベル61だぞー?」


「それなァ。2発目は不発してたってことはクールタイムもあんだろうから、ボスのHP削り切る前に潰れて終わるわ」


「ロマン砲は確殺じゃないと輝かないぞー」


「だからロマンっつーんだしなァ」




 やはり無理だ、と、マツダイに首を振る2人。


 確かに先程のアイアタルの眷属への一撃は目をみはるものがあったが、ただそれだけだ。

 あくまで一瞬の火力だけが極端に振り切れた、閃光のような力でしかない。


 それに、いくら遠距離から2000超えというダメージを出したところで、という話だ。

 それだけで倒されるほどボスは軟弱ではなく、必ずその後に反撃が来る。

 そうなった場合、スゥの動きの鈍さは致命的だ。

 彼女がボスの前に立った時、木の葉のように軽々と吹き飛ばされることは容易に想像ができた。




「確かにおっぱいはすこぶる大きいけど、ボス狩りは無理よー」


HP(エッチパワー)はあり余ってるけど、HP(体力)が足んねェな」




 そしてさっぱりと頭を切り替え、サキュバス鑑賞モードに戻る2人。

 その思考がそちらに引っ張られた結果、話す言葉ですらもふざけたものに変わる。 




「だから、“一撃確殺(一確)”にしとくんだよ」


「ハァ?」


「一確って、何をどうやってー?」


「え~っと……」




 しかしマツダイは諦めない。

 そればかりか、2人の反応は予想のうちだと言わんばかりに自信満々で答えてみせた。


 それに(いぶか)しむEAKと椎茸強盗。

 その視線の先では、首を傾げながらくるりと回った貴公子が黒猫の姿になる。

 そして手足をほぐすようにぷらぷらとさせ、いつもの無愛想な調子で言葉を発した。




「……説明長くなるし、とりあえずアイアタルの眷属(アレ)殺すわ。EAK、《闇の霧(ダークミスト)》敷いて」


「えー? 別にいいけど、何でよー?」


「初心者共に見られたくにゃい」



「いやそうじゃなくてさー、何で初心者助けんのー?」


「…………後で使うから」


「……無駄だと思うけどねー」




 "後で使う" というマツダイの言葉は、紛れもない本音であった。

 しかしながら、本音の全部を言った訳でもなかった。


 ここで初心者が死んでしまえば、この地域に嫌な思い出を残してしまう。

 そうなるとボスを狩らせるためにおびき寄せるのも難しくなるだろう。

 なので後々利用することを考えて、ここは救出しておこうとする考え――。

 それも確かに心にあったが、それとは別のもう一つの思いもあった。


 変身師(メタモラー)という不遇職の可能性。

 それを見せてくれた初心者に、マツダイはいくらかばかりの恩を感じた。

 だから命くらいは救ってやろうと、気まぐれに考えたのだ。


 しかしそうした情に流されるような真似をするのは、どうにも居心地が悪い。

 だからEAKにも言わずに、そして初心者にも知られずに。

 “後で使うため”とあくまで冷たいフリをして、なるべく関わりを持たずに。

 一定範囲を不可視にする《闇の霧(ダークミスト)》の中で、隠れながらに助け出すことにした。


 霧で顔と名前を隠すのは、知られないため。

 自分が助けたことを認識され、エンジョイ勢に懐かれるような最悪を避けるため。

 決して照れや格好つけなんかじゃなく、あくまで自分の効率的な毎日のためだ――と心の中で自分に言い聞かせながら。




「ミストどんくらいー?」


「眷属が残り2700前後だから、《飛爪》6回だにゃ」


骨粉パウダー強化バフいるかァ?」


「いい。ブレ考えたら確殺数変わらにゃいし。あとお前の粉マズいし」


「うーん、じゃあミスト30秒なー」


「は? 回しギリじゃねぇか、ケチるにゃよ」


「あーはいはい、自信ないのねー。じゃあ余裕持たして40秒にしてやるわー」



「……30秒でいい」


「あらあらークソネコちゃんは負けず嫌いでちゅねー」


「うるせぇクソスライム。お前殺すんだったら10秒だ」


「おいおい、喧嘩すんなよクソブラザーズゥ」


「てめぇも黙れにゃクソ骨野郎――……《夜装やそう》」




 そしてマツダイは駆け出した。

 黒猫の姿で、金色の三つ首ヘビめがけて。これからの効率のためと、些細な恩返しのため。




「あぁー! 暗い! 暗くてなにも見えないですよー! はっ! ま、まさか朱はすでに食べられてしまったあとなのかー!?」


「あ、朱ちゃん……まだ食べられてないよぅ……も、もうすぐ食べられそうだけど……」




 初心者2人の周辺が、黒色の濃霧に包まれる。


[アイアタルの眷属]が死亡したのは、それから28秒後のことだった。




     ◇◇◇


□■□ ココノハ大森林 □■□


     ◇◇◇




「……で?」



[アイアタルの眷属]を倒し、逃げるように森へと入ったガチ勢たち。

 そして大きな何かが這いずってできたような獣道をだらだらと歩く。


 そしてたっぷり森の中へと入り込んでから、ようやくEAKが口を開いた。




「ボスを呼ぶ、一撃で倒せる状態にしとく、あの初心者共に殺させる。そうすりゃ俺の顔は晒されにゃいし、新エリアで狩りができて効率もいい。それにリーダーにだって怒られずにすんで優勝だ」


「はー? いやだから無理だってー」


「無理無理無理無理カタツムリィ!」




 呆れた声を出すEAKが、ぼふ、と大きく煙を吐く。

 彼の口元には火のついた香木がくわえられており、その煙が口内にたまっていたのだ。


 そのアイテムは[アグル]と言う。

 燃やすことで独特の味わいがある煙を生み出す嗜好品の一種だ。

 価格は決して安いものではなかったが、EAKにとってははした金だ。

 それに[アグル]はただの格好つけだけでなく、煙を嫌うモンスターを遠ざける効果もある。

 なおかつ、今の時代ではすっかり過去のものとなった『タバコ』という古代文化を体験できるとして、それなりに広く普及しているものだった。


 ちなみにその[アグル]のレシピを発見して普及させた第一人者は、今もその煙をくゆらせているEAKである。

 ついでに言えば、首都セブンスターズで[アグル]の取引をする場合、EAKに()()をする必要もあった。

 著作権や商標登録などのルールは存在しないが、主張する者はいるのだ。

 それは例えば、性根の腐ったガチ勢であるとか、そういうクズが。




「そもそもさー、その一撃で倒せる状態ってのが無理っしょー。いつもの検証ができないのに、どうやってボスのHP調べんのよー」



 大きな口の先で白い香木をぴこぴこと動かすEAKが、白煙入りのため息と一緒に言葉を放つ。


 このLiving(リビング) Hearts(ハーツ)には、ダメージ表示がある。

 しかしモンスターの体力(HP)表示はされない。

 そしてなおかつ、それを調べるスキルやアイテムも存在しない。


 だがそれでも、ガチ勢たちの頭や攻略Wikiには、詳細なHPが記載されていた。


 そんな情報の出どころは、運営が開示した訳でもゲーム内データへ不正にアクセスをした訳でもなく、『有志による検証』それのみである。


 単純な話だ。

 確かにHPこそ確認できないが、ダメージ値は表示されるのだから。


 まずはモンスターが死ぬまで普通に攻撃し、合計いくつのダメージで死んだのかを足し算する。

 そうしておおまかなHPを知ったら、今度は加減しながら攻撃を加えることで実数値を限定していく。

 そんな地道な作業の上で成り立っているのが『Living(リビング) Hearts(ハーツ)攻略Wiki』と、ガチ勢たちが仲間内だけでまとめているデータベースなのだ。



 しかしながらその対象がボスともなると、そう簡単な話ではない。

 なぜならば、殺してはいけないからだ。


 HPを調べるためには、少なくとも『0』を知る必要がある。

 しかしボスを倒したくないガチ勢たちは、"死にそう" までは削ることができても、"死んだ" までは確認することができない。

 そうした理由でボスのHPだけは、彼らの前であっても未知数だった。




「EAK、お前調教師(テイマー)持ってたよにゃ?」


「え? あぁ、あるけどー?」


「俺にテイム使え」


「はぁー?」


「いいから」


「んだよー、サブ変えるとクールタイム伸びんのにー……」




 マツダイの無茶振りにぶつくさ言いながら、どぷんとスライム状態に戻るEAK。

 そしてひょろ長い触手でインターフェイスを少しだけいじくると、目の前を歩く猫にその触手を伸ばしてスキルを発動させる。




<< EAK の《テイミング》

→→ スキル使用失敗。マツダイ には効果がなかった >>




「いや普通に失敗したけどー」


「じゃあ、椎茸。俺のこと殴れ」


「どんくらいだァ?」


「8割ちょっと減らせばいい。4500ちょい」


「あいよォ」




 次に名を呼ばれた椎茸強盗が、全身の肉と皮をどろりと溶けさせ骨だけになる。

 そしてどこからともなく取り出した『謎の白い粉』を口内へ流し込むと、ぽっかり空いた眼窩がんかに赤い光を灯し、マツダイに向かって腕を振りかぶる。




<< 椎茸強盗 の《()凡骨(ぼんこつ)

→→マツダイ に1473のダメージ >>


<< 椎茸強盗 の《(とく)遺骨(いこつ)

→→マツダイ に1811のダメージ >>


<< 椎茸強盗 の《()骨牌(かるた)

→→マツダイ に2218のダメージ >>




――――3連続の同士討ち。

 多少ではあっても確かに痛みを感じるLiving(リ ) ()Hearts( ハ)だ。

 よほどのことでもない限りは、フレンドリーファイアは避けられていた。


 それが一切の躊躇(ためら)いもなくされるこの場所は、間違いなく間違えていた。

 くわえて狂ったようにアゴを鳴らすヤギスケルトンの不気味さもあって、なんとも異様な光景だ。


 しかし。

 彼ら3人にとっては、これがとりとめのない日常風景だ。


 例えどれだけリアルな世界であろうとも、どうせゲームなのだから。

 それなら命がどうだとか、暴力が何だと重く考えることはない。

 殺し殺されはじゃれあいの範疇。どうせ元々生きていないし、死んでも特に問題はない。

 そこにある痛みのフィードバックですらも、友人同士でしっぺをするような感覚でしかなかった。


 彼らは馬鹿にしているのだ。

 リアリティを突き詰めたゲームを、“たかがゲームだろ”と鼻で笑って、たかをくくっているのだ。

 そしてそのうえで、あくまでゲームとして攻略をするのが、彼らガチ勢だった。




「……は? ギリギリにゃんだけど。死ねよ下手くそ」


「ア゛ァ~? てめぇの紙装甲を恨めやカスゥゥ~~~」


「うっぜ。EAK、テイム」


「いやなんなんー?」




 そして再びEAKに指示を出すマツダイ。

 その繰り返しの意図が読めないEAKは、少しだけ不機嫌になりながらもう一度スキルを発動させた。




<< EAK の 《テイミング》

→→ スキル使用不可。マツダイ には効果がなかった >>




「だから普通に無理だってー」


「一回目と二回目、にゃんて出た?」


「はー? いや普通に "できねえ" ってだけだけどー」


「そのシステムメッセージだよ。一回目は『スキル使用失敗』って出たろ? で、二回目は?」




 マツダイの言葉を受けて、EAKは戦闘ログを確認する。

 二度のテイムはどちらも効果なし。と言ってもそれは当たり前だ。

 プレイヤーをテイムできるなら、EAKは今頃よりぬきの巨乳を集めたぽよよんハーレムパーティを作っているに違いないのだから。


 そんな当然のテイム失敗のログを見比べ、その小さな違いに目を止める。

 一度目は『スキル使用失敗』。しかし二度目は、違っていた。



「……『スキル使用不可』、ってなってんなー」



 失敗と不可。

 それはたった二文字の違いだが、違う以上は必ず意味がある。

 その謎に少しだけわくわくしたEAKと椎茸強盗は、期待を込めた目でマツダイを見た。


 彼らは道徳観こそ壊れているが、結局根っからのゲーマーであり、ゲームが何より好きなのだ。

 だったらこうした小さな気付きにだって、胸を踊らせたりもする。




「テイムの条件は対象のHPが2割以下。その条件を満たせばテイムが通って『テイム不可』って出る」


「んー?」


「条件満たしてないとそもそもテイムが発動してにゃいから、メッセージは『テイム失敗』だ」


「……あーはいはい、なるほどねー」


「ア゛~、つまりはアレか? モンハンの捕獲名人ってことかァ?」


「そんにゃ感じ」




 そうしてマツダイが説明したのは、スキル効果処理の優先順位についてだった。


 調教師(テイマー)のスキル、《テイミング》。

 それは一定確率でモンスターを従属化させるスキルだ。

 そしてその使用には、『対象の体力が2割以下』という条件がある。


 そんなHPの減りは言わば前提であり、その条件を満たさない限りはそもそも()()()()()()()()

 つまり《テイミング》というスキルは、まずHPを参照してスキルが『発動』するかどうかを判定し、その後にテイムの『可否』を判定するものになっていた。


 順序立てて言えば、こうだ。

 まずは《テイミング》対象が存在するか否かを確認する。

 次に対象の体力が2割以下になっているかを参照する。

 続いて対象が《テイミング》可能な相手であるのかを調べる。

 そして最後に《テイミング》の成否の判定をおこなう。

 そういった手順で処理がされているのだ。


 そうしたスキル効果処理の優先順位によって生まれたのが『失敗』と『不可』。

 その似て非なる、2つのシステムメッセージだった。


 その些細なメッセージの違いを使ってできること。

 それが『対象のHPが2割以下になっているか否かを確認できる』というものだ。




「知らんかったなァ」


「いつから知ってたん? もっと早く教えろしー」


「前リーダーに聞いた。つってもどうせ普通のモブは殺せば済むんだから、こんにゃ仕様覚える必要もねぇだろ」


「確かにそうだけどー」




 マツダイの言う通り、それは本来大した意味を持たない仕様だった。

 それがあるからと言って、ユーザーに有利になることもなければ、不利になることもない。

 バグや不具合というよりは“そういうゲーム” で終わるような取るに足らないものだ。

 だから今まで放置をされていたと言ってもいい。


 しかしそんな何でもない仕様こそが、この場にあってはとびきりだった。

 殺してはいけないという特殊な制限のある相手のHPを調べるためには、他の何よりうってつけだったのだ。


 《テイミング》を利用したHPのあぶり出し。

 ボスを呼び出し、ダメージを与えて《テイミング》使用を繰り返し、そのメッセージが『失敗』から『不可』に変わる瞬間を探り出す。

 そうしてHP2割以下になるまでの数値がわかれば、あとはいつもの計算だ。

 やる気になれば1の位まで調べることが可能な、ただの人力解析作業となる。




「時間がにゃい。今日の狩りは中止にしてボスのHP調べるぞ。最初は1000ダメージ刻みでテイムかけてく」


「途中で誰か来たらどうすんだ?」


「殺す」


「あいよォ」



「1000刻みだけかー?」


「その後500、最後は100刻みまでやるぞ」


「えー、そんな入念にやる必要あるー?」


「《アヤメの灯(あの女のスキル)》の計算式わからんし。何が影響してどんだけブレるか調べられにゃい以上、500くらいまでは削っておこうぜ。そこ面倒がってしくじったらそれこそ最悪だし」


「ふーん? まーいいけどー」




 独占を続けていたキーアイテムは、手元に腐るほどある。

 そのうえ[【The weeder】アイアタル]は、じっくりなぶり殺しにできる程度に格下だ。


 ならばこれからはいつもの時間だ。

 数値を調べ、検証を行い、万全を期して攻略をする。

 それがゲーム。それがMMO。

 それを誰よりうまくやるのが、VRMMOのガチ勢だ。




「削りに使うスキルはァ?」


「一回[アイアタルの眷属]相手で調整する。強化バフで1000前後出るようにしたスキル2つで回す感じでにゃ」


「なんで眷属で調整すんの?」


「ボスが[【The weeder】アイアタル]にゃんだから、その眷属は耐性やら防御力やらも似通ってんだろ、多分」


「あーなるー」




 性根の腐ったPK猫。

 女性を全力で性的に見るスケベスライム。

 他人を傷つけることに一切の躊躇いもないクズガイコツ。

 そんなどうしようもない3匹が、森の奥へと歩いて行く。


 独占したキーアイテムを手の上で転がしながら、何よりも得意なゲームをするために。




「勢い余ってボス殺しちゃったら終わりだからにゃ。ちゃんと《テイミング》連打しろよ」


「うわー、ヒリつくなー」


「ロシアンルーレットみてェだなァ」


「当たっても死にはしにゃいだろ」


「名前と顔が公式に載るとか、俺ら的には死ぬようなもんだろー」


「そんなんなったら引退不可避だなァ」



「引退すんにゃら装備とカネください」


「ぼくと椎茸は、ズッ友だょ! 装備大切にするねー!」


「お前らだけには絶対やらねェわァ」


「じゃあハチミツください」


「クーラー忘れましたー」


「なんなんこのゆうた共ォ……」




 VRMMOガチ勢のボス狩り計画は、こうしてはじまった。



 なお、これは余談になるが。

 本日は西暦2310年(宇宙暦223年)4月3日で、マツダイたちも当然、今の時代を生きている。

 しかしそれでもここにいる3人は、モンハンシリーズ通してプレイ済みだし、オンライン上で『ゆうた』と呼ばれるような人種に会ったこともある。


 彼らは決して、聞きかじりの知識で会話をしているわけではない。

 まごうことなき実体験を元にした、自身の経験からくるやりとりだ。


 あの時代(2020年)の人間は、この時代(2310年)の人間と喋ることはできない。

 だが、この時代(2310年)の人間は、あの時代(2020年)の人間と喋ることができるのだ。

 何しろ、未来だから。




     ◇◇◇




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