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24・モフモフわんことレッドボアキング

 コロッケを食べ終わったのでダンジョンへ『転移』。

 ちょうどレッドボアがリポップするころだった。

 いつもの自衛隊員とダンジョン訓練生に混じって、鷹秋さん達DSSSとアーサーさん、ソフィアさんもいる。アーサーさんは一昨日みたいに上半身裸ではなく、ちゃんと防具をつけていた。


「……ソフィアさん、こっち見てる?」

「……見てる気がするのだ」


 結界が張ってあるから、エントランスからだとボス部屋の出入り口の場所すらわからなくなってるはずなんだけどね。

 呪いが解けてモンスター化できなくなったアーサーさんが心配だったが、さすが呪われる前から軍人としてダンジョン攻略をしていた人だ。危なげなくレッドボアを倒していく。

 鷹秋さんも大きな剣を振るって活躍していた。


「あ」

「お?」


 ボス部屋入り口の特等席で、オルトロスモードのタロ君ソファで見物していたわたしは、思わず前に乗り出した。

 新しくリポップしたのはただのレッドボアではない。レッドボアキングだ。

 うちのダンジョンは大体週一で変異(レア)種が現れるんだけど、キングは初期のマッドゴーレムキング以来だ。マスターのわたしにも出現を制御できないんだよね。


 ちなみに変異(レア)種は継続しない。

 今日変異(レア)種を倒しても、明日リポップするのは基本種だ。

 もっと迷路っぽいダンジョンだと能力の高い変異(レア)種は長生きすることもあるらしい。


「アーサーさんもいるし、ちょうどいいからレッドボアキングが倒されたらミドルポーション+を放出しようか」

「……結界開くのか」

「あー……でもほら、ソフィアさんが好きなのは黒い豆柴姿のタロ君だから……」


 ひとりでも大丈夫そうなアーサーさんの護衛なだけあって、ソフィアさんは強い。

 防具を装備していてもスタイルの良さがわかるしなやかな体で、踊るようにレッドボアを倒していく。

 彼女の武器は金属製の糸のようだ。……漫画みたい。


 下級モンスターしかいないうちのダンジョンは、海外のダンジョン攻略で下層の上級モンスターと戦っていた彼女達にはトレーニングルームのようなものだろう。

 実際、だからこそ自衛隊や警察が訓練に来ている。

 でもだからって、ソフィアさんがずっとこっちを向いているのは怖い。対戦相手のレッドボアのことも見てあげてください。今日はキングがいるから能力が底上げされて、いつもより手強いんですよ。


「あ、そうだ。『(シャドウ)』『隠密』」

「タロ君?」


 タロ君はいきなり豆柴モードに戻り、(シャドウ)を生み出した。

 豆柴モードで生み出すと、(シャドウ)も豆柴型だ。……か、可愛い。

 その後続けて『隠密』をかけられた(シャドウ)がエントランスへと走っていく。タロ君の(シャドウ)だからレベル40結界も関係ないようだ。オルトロス種のレベル4は人間のレベル40と同等なのである。


 『隠密』をかけているからだれにも認識されないはずなのに、ソフィアさんの動きが止まった。

 タロ君を抱っこして肉球を借りて様子を見る。


『タロくーん』

『おい、なに言ってるんだ、ソフィアっ!』

『ミズ・カロン?』


 レッドボアキングと対峙しているアーサーさんと鷹秋さんには答えず、ソフィアさんは見えないタロ君(シャドウ)を追いかけ始めた。

 自衛隊員も驚いているようだが、ソフィアさんはレッドボアに『突進』されても華麗に避けているため、放置しても問題ないと判断したらしい。

 変異(レア)種のレッドボアキングの出現は珍しいけれど、レッドボア自体は毎日全滅させているし、ほかの変異(レア)種が出現したときも無傷で勝利しているしね。


「これで結界を解いてもボス部屋に入って来られることはなくなったのだ」

「そうだね」


 ミドルポーション+を放出するためには、どうしても結界解かなきゃいけないからねえ。

 わたし達はエントランスの訪問者(ビジター)達がレッドボアキングを倒すのを待った。

 呪いが解けたアーサーさんは、ボクシングのようなフォームで戦っている。手に装備したナックルダスター(いわゆるメリケンサック)がアイテムコアで、彼の攻撃を増幅しているようだ。ナックルダスターなんて妙なものを知っているのは、昔プレイしたゲームに武器アイテムとして出て来たからです。


「おっといけない」

「マスター?」


 すっかり忘れていたことに気づいて、天井のスライム達に念話を送る。


(合図したら明かりを消してねー)

(((マスターの仰せのままに)))


 うちのダンジョンはタロ君の闇属性魔力を反転して生まれた光属性のスライムがいるので明るいけれど、よそのダンジョンはそう明るくはない。

 どうもうちほどスライムが多くないようなのだ。

 長年の歴史がある異世界ダンジョンの挿し木(コピー)だからスライムを食べるモンスターがたくさんいるのもあるし、悪いモンスターじゃないというイメージが強い日本人と違い、B級SF映画やTTRPGで不定形モンスターへの恐怖を植え付けられた海外の冒険者による虐殺もあるという。ステータスボードの仕組みがはっきりするまでは、モンスターを倒したらレベルが上がるんじゃないかって思われてたしね。


 それと、海外ダンジョンのスライムはほかのモンスターに倒された冒険者の死体を食べたりしてるんだけど、熊みたいに味を覚えるのか食べた後で狂暴化するそうだ。

 そうなるとなぜか天井まで上がらなくなり、地面に隠れて酸性の液体を吹きかけてくるという。

 うちのスライム達はそんな子になりませんように。


 明るいのが当然だから、うちのダンジョンに来る訪問者(ビジター)達は照明器具を持参していなかった。

 ああでも、以前のマッドゴーレムキングのときにもスライムに光消させたから、今度も同じことが起きるんじゃないかと予測してテントからライトを取り出してる。

 ほかのダンジョンなら外のバッテリーからコードを引くのだろうが、うちは今ゴーストがいないからバッテリーをテントに持ち込んでいるのかもしれない。


「ライトなら(シャドウ)に壊させるから大丈夫なのだ」

「こ、壊させるのはちょっと……」

「じゃあ(シャドウ)をオルトロスモードにして邪魔させるのだ」


 うちの(わんこ)マジ有能じゃない?


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