※ダンジョンわんこ日記 三十五日目<後編>
鷹秋達が帰った後、マスターとお風呂に入ったぞ。
吾はモンスターで抜け毛がないから、マスターと一緒に湯船に入ってもいいのだ。
湯船でチャプチャプするのも、マスターにワシャワシャ洗ってもらうのも楽しいのだ。お風呂から上がったら吾専用のバスタオルで拭いてもらって、炎の魔気でぽふって乾かしたらブラッシングしてもらうのだー。んふー、至福なのだ。
「……ふう……」
暗い窓の外を見つめていたマスターが、溜息をついた。
「どうしたのだ、マスター」
「真朝ちゃんのこと。どうするのが一番いいのかと思って」
「吾はいつでも『大地の祝福』を使うぞ。マスターの友達が痛かったり苦しかったりするのは嫌なのだ。真朝はマスターを好きな匂いがしたから、吾も真朝が好きなのだ」
今日はダンジョンへ行っていないから、吾のMPはMAXだしな。
「タロ君の『大地の祝福』って、どれくらいの範囲を回復できる?」
「ダンジョンなら階層全体を回復できるのだ。でも外だと吾とマスターのダンジョン域の中だけだな」
吾が答えると、マスターは悩み始めた。
どうもそれでは狭過ぎるらしい。だったら……
「吾が『活性化』をかけたら、マスターのダンジョン域を広げることができるぞ」
そう教えて、いくつか確認したらマスターは笑顔になった。
これから真朝の怪我を治療しに行くという。
そのとき、近くにいる人間の傷や呪いも全部回復させるそうだ。んむ。吾の『大地の祝福』なら、死者以外回復できるぞ!
真朝が泊まっているホテルの屋上へマスターと一緒に転移した吾は、『活性化』でマスターのダンジョン域を広げてから『大地の祝福』を使った。
怪我が治った真朝は、すぐマスターに電話してきたぞ。
マスターがダンジョンマスターなことも、吾らが魔法スキルで回復したことも秘密だったのにどうしてだろう?
それから吾らは家へ帰って、アイスを半分こして食べた。
そのうちカレーも味見じゃなくて、食事としてたくさん食べたいのだ!
……カレーのときはお代わりしてみちゃおうかなー。鷹秋がお代わりしたとき、マスター嬉しそうだったぞ。