※ダンジョンわんこ日記 三十五日目<中編>
残ったカレーは春人と冬人にご馳走することになったのだ。
ちょっと残念だけど、春人達になら食べさせてもかまわないぞ。
後、鷹秋も来た。仕方がない。また膝で接待撫でられをしてやるのだ。
体が大きいからか、鷹秋はいっぱいお代わりをした。
マスターが鷹秋から空の皿を受け取って、お代わりを入れて返すのを見ていたフヨウはなぜか楽しそうだった。
んん? 恋の予感? 確かに鷹秋からはマスターを好きな匂いがするぞ。
ダンジョンマザーツリーのデータベースにアクセスしてみる。
ふむふむ。人間の男女が好き同士になると、赤ちゃんができるのか。
……赤ちゃん? くふー! 吾、マスターの赤ちゃん欲しいのだ! マスターの赤ちゃんを守って、サクラと肩を並べる犬になるのだ!
フヨウにいろいろ教えてもらう。
ダンジョンマザーツリーのデータベースにアクセスできないのに、恋愛映画好きのフヨウはいろいろ知っていた。
男女が好き同士になっても、告白してお付き合いしないと赤ちゃんはできないのかー。帰る前に鷹秋がマスターに告白するかと思ったが、しなかった。マスターはまだそれほど鷹秋を好きでないみたいなので、マスターのほうから告白することはないと思う。
吾らダンジョンモンスターは異世界のモンスターの複製だ。
複製された肉体を持つが、戦闘と生存以外の本能はない。ダンジョンモンスターが繁殖することはないのだ。リポップ時に進化したり変異したり、増えたり減ったりするくらい。
スライムも繁殖はしないが、ヤツらは自然発生して分裂して増えていく。
ダンジョンマザーツリーも樹木なので、人間の生殖に関するデータはあまり豊富ではなかった。
吾のアクセスに関する権限が限られているのもある。
むー。早くマスターの赤ちゃんと会うには、吾はどうしたらいいのだろう。動画で見た犬と赤ちゃんのように仲良くしたいのだ! 揺り籠も揺らしてやるし、『騒霊』でオムツも替えてやるのになー。