※ダンジョンわんこ日記 三十四日目
ボスモンスターの吾と掃除機との仲はなかなか進展しない。
この世界には魔法がないから掃除機はゴーレムではないとわかっているのだが、なんとなく意識がありそうな気がするのだ。
この前マスターが尻尾を仕舞おうとしてたとき、抵抗してマスターにびちってやってたのは怒ってやったぞ。マスターの見てないところで尻尾だけオルトロスモードにして、ペちってやったら壊れちゃったので、こっそり『大地の祝福』で直したのは秘密だ!
掃除の後はダンジョンへ行った。
昨日会った呪われた男と吾のファンがいた。
呪われた男は後一ヶ月ほどで完全なモンスターになりそうだった。それを教えると、マスターはいろいろ考え始めた。吾の『大地の祝福』の効果について聞かれたぞ。マスターは優しいので、アイツの呪いを解いてやるつもりなのだろう。
男にかかっているのはレッドミノタウロスに変身する呪いだ。
炎属性の中級モンスターだが、この前吾も炎属性を設定されたので敵ではないな。
大地属性と闇属性だけなら、ちょっとヤバかったぞ。大地属性にとって炎属性は苦手属性なのだ。もっとも、オルトロスである吾から見ればミノタウロスなど食材に過ぎぬがな。くふふ、牛肉なのだー。
玲奈から電話がかかって来たので、吾は邪魔が入らないようボス部屋の入り口をお尻で塞いでやった。
もちろん呪われた男に破られるような結界ではないのだが、ファンの視線がウザかったのだ。人気者は辛いのだ。
スマホも魔道具だと思うな。きっと呼び方が違うだけで、科学も魔法の一種なのだ。
真朝が明日遊びに来るらしい。
……だれだ? 真朝は玲奈と同じようにマスターの友達だという話だ。
豆柴モードで抱っこされて家へ帰ったら、真朝からもメールが来ていた。ふんふんさせてもらったけれど、真朝がどんな人間かはわからなかった。でも玲奈のようにマスターを好きな人間なら歓迎するのだ。
お客が来るのなら、明日の朝も掃除だな。
お隣と違って、我が家は一日置きにしか掃除しないのだ。まあ吾もマスターもゴーストも、春人や冬人と違って部屋を汚さないからな。
ふむ。明日こそ掃除機を従えてやるのだ!