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11・モフモフわんこと夕ごはん食べるよ!

 今日の夕ごはんは茹でたカリフラワーと、お肉と卵のそぼろを載せた豆ごはんです。


「タロ君もう一杯お肉かける? もう卵にしておく?」

「んむー、悩むのだー」


 歌音へのお土産用だった百均のおままごとセットから流用したプラスチックのお皿は、それほど量が入らない。

 大きめの木製スプーンでもう一杯お肉のそぼろをかけた上に卵も載せると、外にこぼれ落ちてしまいそうだった。


「卵にして食べてから、お代わりしたら?」

「んー……マスターはいつもお代わりしないのだ」

「わたしに遠慮なんかしないでいいんだよ?」

「そうじゃなくて……吾はマスターとお揃いがいいのだ」


 なにこの可愛い生き物。


「もっと大きいお皿買う? フリスビー買いに行ったとき、一緒に買えば良かったね」

「このお皿はこのお皿で好きなのだ」

「そっか」


 我慢できなくなって、わたしはタロ君の頭をなでなでした。

 タロ君は嬉しそうな顔をする。


「んふー」


 そんなダンジョンマスターとボスモンスターのラブラブタイムを妨げるものがあった。


 ぴらりらりーん♪


 スマホの着信音だ。

 発信者は葉山さん(大人のほう・弟)である。

 ちょっと意外に思う。前に(シャドウ)のマントのことで連絡をくれたときは、メールで確認してから電話してきたのに、今回はいきなり電話だなんて。


「ちょっと待っててね」

「ん!」

「……はい、卯月です」

『葉山です。今お時間いいですか?』

「大丈夫ですよ」


 スマホの向こうで深呼吸をする音が聞こえてくる。

 葉山さんは緊張しているようだ。

 なにを話すつもりなんだろう。


『卯月さん、俺がこういうことをいうのは余計なお世話だと思います。あなたはもう二十歳の立派な成人女性なんですから。ですが……見知らぬ外国人男性の道案内を引き受けるような真似は感心しません』

「あはは、そうですよね。あのときはタロ君がいたから気が大きくなってて」

「わふ(吾がいればどんな悪い奴がいても大丈夫なのだ)!」

『確かにタロ君は頼り甲斐がありそうですが……それでも気をつけてください。卯月さんはかわ、かわ、かわわわわっ!』

「葉山さん、大丈夫ですか?」


 突然どうした?


『すいません、むせました』

「お仕事で疲れているんじゃないですか? お水でも飲んで落ち着いてください」

「わふー」

『は、はい』


 アーサーさんはかなりの自由人ぽかったし、ソフィアさんはそれを上回る感じで自由な人だった。

 案内役の葉山さん(大人のほう・弟)は大変だろう。

 少しの間があって、会話が再開する。


『お待たせしました。えーその、卯月さんはかわ、わ、若い女性なんですから、見知らぬ男性には気軽に近づかないほうがいいですよ』

「はい、気をつけます」

「わふ」

『それと、あの、図々しいお願いがあるんですが』

「なんでしょう?」


 昨日作った帽子の件は、まだだれにもバレていないはず。

 実は(シャドウ)のマントで彼には三十万円もらっている。ご本人とハル君ふー君の三人分だ。

 ありがたいけど、ちょっともらい過ぎの気もするので、帽子はマントに使った布地のあまりで作ったことにしてプレゼントしようと思っていた。


『俺……俺も、あなたのことを名前で、(はる)さん、と呼んでもいいですか?』

「いいですよー」

『そうですか! じゃあ、じゃあ、は、晴さんも俺のこと、た、た、鷹秋って名前で呼んでもらえませんか?』

「わかりました、鷹秋さんですね」


 葉山さん(大人のほう・弟)って思って区別するのは面倒だったから、ちょうど良かった。今度また一緒に遊びに行くこともあるだろうしね。


 ……ん? なんかフヨウが楽しげな気配を送って来てる。

 いつも『隠密』を使ってるからいるって意識してないけど、ダンジョンマスターだからか、彼女達が感情を高めたときは存在を察することがあるんだよね。

 フヨウ、なにか良いことあったのかな。


『は、はい、鷹秋です……』

「鷹秋さん、お電話ありがとうございます。なんだかご心配をおかけしてしまったようですいませんでした」

「わふふ……」

『いえ、俺が勝手に……あの、またお電話してもいいでしょうか?』

「いいですよー。タロ君やハル君達と遊びに行く計画楽しみにしてます。わたしもなにか良い案を思いついたら連絡していいですか?」

『もちろんです!』


 葉山さん(大人のほう・弟)じゃなかった、鷹秋さんの空いている時間を教えてもらって、電話を終える。

 夏休み中のわたしと違って、鷹秋さんは毎日お仕事だもんね。

 アーサーさんが来たから、これまでより忙しくなりそうだし。


「マスター、お電話終わった?」

「終わったよー。どっちにする?」

「卵のそぼろにするのだ!」

「そっか」

「くふふ」


 卵のそぼろをかけ終えても、タロ君は待ての姿勢を崩さない。

 わたしが食事を始めるのを待っているのだ。


「じゃあいただきます」

「いただくのだー」


 そういえば、家族以外の男性と名前で呼び合うのって小学校以来だ。しかも八歳も年上の人。

 大学の男友達とは名字で呼び合ってる。

 ……鷹秋さんは(わんこ)っぽい感じがするから、あんまり抵抗なかったな。初対面のときから、ゴールデンレトリバーかボーダーコリーみたいな人懐っこい(わんこ)のイメージなんだよね。


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