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7・モフモフわんこに電池スペーサーの名称を教えられる。

本日(11月3日)は三回更新します。

これは1/3回目です。


「なんでタロ君外に出られたのーっ?」


(マスターの心臓にダンジョンコアが融合しているからな。ダンジョンはダンジョンコアのあるところだ)


 目を閉じてダンジョンマザーツリーのデータベースにアクセスしながら、タロ君がわたしに説明してくれる。


「わたしのいるところがダンジョンになるってわけ? あ、タロ君、ホームの中でほかに人がいないときならしゃべってもいいよ」

「そうか! ん、そうだぞ。マスターがいるところがダンジョンなのだ」

「じゃあマッドゴーレム達も外に出ちゃうの?」

「マスターがこうして一緒に転移したり、ダンジョン入口の結界を解いたらな」


 あのダンジョンの出入り口の結界は、人間は出入り自由でモンスターは通れない仕様だ。

 わたしがダンジョン本体で、あのダンジョンは外付けとか端末って感じ?


「そっか。……うーん、もしかしてわたしの近くだとアイテムコアの付与効果が使えたりする?」

「マスターが作ったアイテムコアならな。それ以外は無理だ。マスターの魔力とほかのダンジョンの魔力はサイズの違う電池のようなものだから」

「じゃあ逆に、うちのダンジョンではほかのダンジョンで手に入れたアイテムコアの付与効果が発動できないってこと?」


 確か調査会社もダンジョンでは付与効果のあるアイテムコアを使っているはずだ。銃刀法があるので、ダンジョン外での使用は認められていない。

 いくら体を鍛えている調査員達とはいえ、アイテムコアが使えなかったらモンスターに対抗できないのでは?

 マッドゴーレムは下級モンスターだから大丈夫かなあ。


 下級モンスターは自分から人間に襲いかかるような真似はしない。

 弱く臆病な存在なのだ。

 それでも攻撃されたら反撃をする。


 なお中級モンスターは積極的に攻撃してくるし、上級モンスターは知恵を巡らせて人間を罠に嵌めて攻撃することもあるという。

 相性の悪い敵モンスターとは、どれも問答無用で戦うようだ。

 生息場所を取り合う縄張り争いだもんね。後スライムを食べると能力が上がったり進化することもあるらしくて、モンスター達がスライムを奪い合ったりもするんだって。


「それは大丈夫。ダンジョンマザーツリーがサービスしたあのダンジョン、というかダンジョンの施設はこの世界でいう電池スペーサーなのだ。元々この世界に挿し木されているほかのダンジョンも全部が全部同じ世界からコピーされたものではないからな。ダンジョンコアの魔力、電池のサイズが違ってもアイテムコアは使用可能なのだ」

「電池スペーサー」


 タロ君の説明でイメージは掴めた。

 電池スペーサーって百均とかにも売ってるヤツだよね。

 でも名称までは知らなかった。ダンジョンマザーツリーのデータベースすごい。


「そっか。わたしのいるところがダンジョンならもしかして、どこでも好きなところへ転移できちゃうのかな」


 夏休みが終わっても、授業が始まるギリギリまで寝てられるのかな。

 それまでDPが0にならなければ、の話だけど。

 タロ君は首を横に振る。


「施設なしでダンジョン化するのはマスターを中心にして半径一メートルくらいだ。モンスターがいれば、そこをダンジョンと見なすこともできるが」


 タロ君が大学に常駐してくれれば、いつでも転移できるのか。

 うん、却下! わずかな移動時間を惜しんで、この可愛い(わんこ)と離れて暮らすなんてとんでもない!

 マッドゴーレムは外に出しちゃいけないと思うしね。


「あ」


 泥だらけのマッドゴーレムを思い出したことで、わたしは気づいた。

 抱っこしていたタロ君を畳に降ろす。


「マスター?」

「畳に土足で立ってた。お掃除するから、しばらくお部屋を探検してて」

「わかったのだ!」


 タロ君は辺りをふんふんし始める。


 わたしはサンダルを脱いで玄関に運んだ。

 濡れた地面は歩いていなかったので、畳の上には砂が少々落ちているだけだった。

 コロコロで砂を掃除しながら、ちらりとタロ君を見る。


 ダンジョンは洞窟だったが、タロ君の肉球は土で汚れたりはしていなかった。

 あのダンジョン自体は魔力の結晶だから、普通の洞窟とは違うのだ。

 マッドゴーレムの泥攻撃を受けたりしたら汚れてしまうのだろうけれど。


「お掃除終わったよー。これからタロ君も一緒に暮らすって、大家さんにご挨拶しに行こう。大家さんの前ではしゃべっちゃダメだよ」

「わかったのだ!」


 ここはペット可のアパートだ。

 冷暖房もネット環境も完備していて家賃も安いのだけど、建物自体は古い。

 六畳一間とバストイレ、台所をふんふんし終えたタロ君が戻って来て満足そうに言う。


「どこもマスターの匂いがしたのだ!」

「そっか」


 わたしはタロ君を抱き上げた。

 そういえばあのダンジョン、どこにあったんだろう。

 行くときは意識がなかったし、ここへ帰るときは転移だったからわからないのよね。


 これまでのダンジョンは人気のない場所にできてたっていう。

 夏休みで生徒のいない大学敷地の近くにできてたりしないかな。

 でも出入り口は警官が封鎖するだろうから、ダンジョンに転移できても外には出られないか。


「あ! あの襖の向こう……押し入れは探検してなかったのだ」

「帰ったら襖開けてあげるね」


 わたしはタロ君を抱いて、玄関の扉を開けた。

お読みいただきありがとうございました。

次回、タロ君大家さんと会う!

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