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4・モフモフわんことフリスビーするよ!

 ダンジョンマスター生活三十二日目。

 タロ君との暮らしも二ヶ月目に入りました。

 わたしこと卯月(うづき)(はる)(二十歳JD)は、さっきペット用品店で買ったばかりのフリスビーを持ってダンジョンのボス部屋に来ています。


「行くよー、タロ君」

「んー!」


 わたしから距離を取り黒い豆柴姿で気合十分のタロ君に向かって、大きく振りかぶる。

 手を離れたフリスビーは弧を描いて、弧を……描かずに落ちたーっ!

 うーん。毎日タロ君と散歩するようになって、インドア派のヌルゲーマーとはいえ少しは体力がついたつもりだったんだけどな。


「大丈夫だぞ、マスター。『騒霊(ポルターガイスト)』!」


 ダンジョンの地面に着く直前にフリスビーは浮かび上がり、タロ君の元へと飛んでいく。

 タロ君は跳び上がり、軽々とフリスビーをくわえた。

 これ……なんか違わない? しかし褒めて伸ばすのがうちのダンジョン!


「すごいねー、タロ君」

「んふー♪」


 モフモフなボスモンスターの毛並みを撫でながら考える。

 ……フリスビーの大会で同じことをしたら反則退場?

 ううん、ほかの人には『騒霊(ポルターガイスト)』だとわからないから、謎の自然現象として末永くテレビの驚愕映像系の番組で放映されそうだな。


「そういえば、『騒霊(ポルターガイスト)』ってどれくらいMPを消費するの?」

「たったの50MPなのだ」


 それでもわたしのMAXMPの半分は持って行くんだね。


「タロ君のステータスボードでの順番からして、結構高位の魔法スキルかと思ってた」


 『騒霊(ポルターガイスト)』の次に表示されているのは、MPを1000消費する『(シャドウ)』だ。


「高位の魔法スキルだぞ。ステータスの『集中』や『精神』が低いと制御ができず、自分や仲間を攻撃してしまうことになるからな」

「タロ君は『集中』も『精神』もAだもんね」

「ん。『騒霊(ポルターガイスト)』は常時発動(パッシブ)スキルではないものの、一度発動するとかなり長時間活用できるのだ」


 言いながら、タロ君はフリスビーを宙に走らせた。

 タロ君を中心にフリスビーが回転している。

 フリスビーの渦は少しずつ大きくなっていくようだ。


「同じ闇属性の『隠密』もそうだったよね」

「闇属性の魔法スキルの共通点だな。だが、『騒霊(ポルターガイスト)』は『隠密』ほど長時間保たない。疲労は『集中』と『精神』を劣化させるのだ。……わふ!」


 タロ君はわたしギリギリまで近づいていたフリスビーに飛びついて、くわえた。

 回転の渦が大きくなっていったのは、わざとではなかったらしい。

 フリスビーで口が塞がったタロ君は念話で語りかけてくる。


(マスター、大丈夫か? 上手く制御できなくて悪かったのだ)

「大丈夫だよ。オルトロスモードのときのほうが魔法スキルは使いやすいのかな。この前ミドルポーションをエントランスに運んだよね?」

(あれは投げ込むだけだったから難しいことはなかったのだ)

「そっか」


 タロ君からフリスビーを受け取って、ダンジョンの天井を見上げる。

 たちまち全身に広がる鳥肌。集合体恐怖症(トライポフォビア)の発症だ。

 代表に名前も付けて念話で話せるようにもなったんだけど、びっしりと天井を埋めるクッションサイズのスライムの姿には恐怖を禁じ得ない。プルプルしてて細胞っぽいのも恐怖を煽るんだよね。


 タロ君との会話でミドルポーションが出たので思い出した……というか、なるべく考えないようにしていたんだけど、考えなくちゃいけないと決意したというか。

 天井を覆うスライムのほとんどは、その半透明の体内にカカオによく似た実を内包していた。モンスターコアと合わせれば、ハイポーションとミドルポーションの中間の効能を示すミドルポーション+の原料となる。

 ミドルポーション+は欠損こそ治せないものの、皮一枚でもつながっていればほとんどの外傷は治療できる代物らしい。


「……どうしようかなー」


 わたしは呟いて、溜息を漏らした。


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