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6・モフモフわんことお別れします。

本日(11月2日)は三回更新します。

これは3/3回目(本日ラスト)です。

 ダンジョンモンスターに重火器は効かない。

 魔眼の付与効果を持つアイテムコアでの確認によると、剣や弓、肉体による攻撃は人間の魔力を帯びるが、重火器による攻撃にはそれがなかったらしい。弾丸を直接指先で弾けば魔力を帯びたものの、モンスターへのダメージはほとんどなかったという。

 モンスターの攻撃はもちろん、向こうの魔法スキルによる攻撃もこちらには効くのだが。


 カメラやレコーダーなどの記録機器もダンジョンでは役に立たない。

 ダンジョンに流れる魔力と機器を動かす電気の相性が悪いようで、壊れたり動かなかったり、妙な映像や声が入り込んだりするのだ。

 しかしダンジョンマスターだからなのか、わたしのスマホは普通に使えた。


 スマホに表示される時刻は、夜の六時を過ぎている。

 大学の夏休みが始まったばかりの七月だから、まだ外の空は明るいはずだ。

 とはいえアパートを出たのはお昼過ぎ、そろそろ戻らないと大家さんに心配されてしまう。


「タロ君」

「なんだ、マスター」


 わたしは、体育館もといボス部屋の出入り口からグラウンド改めエントランスを覗いてマッドゴーレム達を観察しているタロ君に告げた。

 ボス部屋の入り口の結界は、こちらから外は見えるけど外からは中が見えないマジックミラー仕様だ。

 調査会社が来てもタロ君に気づかれることはない。


「わたしアパート……ホームに帰るね」


 わたしのステータスボードの特殊スキルの項目には『転移』があった。

 タップして確認したところMPを5消費することで発動できるようだ。MPは基本的に寝ると回復する。

 DP消費じゃなくて良かった!


 ただしどこへでも『転移』できるわけではない。

 設定されたホーム(アパートでした。実家じゃなくて良かった)とダンジョンを行き来できるだけだ。

 ダンジョン内ならどこへでも行けるのだけれど、このダンジョンってボス部屋(体育館)エントランス(グラウンド)しかないからなあ。


 DPを消費すればフロアも増やせます。隠し部屋とか迷路とか、いろんなパターンがあるみたい。

 エリア(階層)も増やせるんだよね。

 余裕がないからしないけど。


「……」


 オルトロス姿のタロ君は、巨体を震わせて驚愕している。

 黄金の瞳が潤んで見えた。

 あー、生まれたばかりだから寂しいのかな。


「えっと……まさかダンジョンマスターになるなんて思ってなかったから、アパートの大家さんに外泊するって言ってないの」

「ん……わかったのだ。……明日は来る?」

「うん、来るよ。タロ君に会いに来る。ダンジョンのことももっと考えなきゃだしね」

「そうか」


 黒い(わんこ)はしょぼんと項垂れる。


「……一緒に来る?」

「え?」

「無理かもしれないけど、わたしとホームに行ってみる?」

「行くぞ!」


 タロ君が黒い豆柴姿に変わる。

 巨大なオルトロス姿だと外に出られないとわかっているのだ。賢いなあ。

 わたしは彼を抱き上げた。


「外に出たらおしゃべりもダメだよ?」

「わかったのだ!」


 嬉しそうなタロ君には悪いが、(モンスター)をダンジョン外に出すのは無理だ。


 モンスターがダンジョンから出られないことは、これまでの五年間で実証されていた。

 ダンジョンモンスターを兵器として使おうとしていた国が積極的に実験したのだ。

 戦車で乗り入れて蹂躙しようとしたけどダンジョンの入り口を崩せなくて立ち往生する羽目になったのも、同じ国だったっけ。


 ダンジョンはモンスターコアやアイテムコアと同じ物質でできている。

 現代科学では傷ひとつつけられないそれらのものは、同じモンスターコア同士アイテムコア同士をぶつけても変化させられなかった。

 ダンジョン外でも鈍器としてなら使用可能だが、鈍器ならダンジョン産でなくても良いものがたくさんある。


 ダンジョンマスターの説明書チートを得たわたしは、ダンジョンとモンスターコアとアイテムコアを構成しているのが魔力で、この世界の人間は魔力を操作する術を知らないから変化させられないのだと知っている。

 ちなみにわたしも説明書経由じゃないと変化させられません。

 魔法スキルないしね。


「試す代わりにダメだったらおとなしくダンジョンで待っててね。大家さんに外泊するって伝えて、布団やタオルケットを持ってくるから」

「ん……。転移できなかったらお留守番してるぞ」


 可愛い! うちのボスモンスター可愛い!

 心の中で叫びながら、わたしは転移スキルを作動させた。

 ……MP消費するんなら、これも『魔法』じゃないのかなあ。


「わふ!」

「……え?」


 次の瞬間、わたしはアパートの畳の上に立っていた。

 タロ君は腕の中にいる。

 そして頭の中で声がした。響きと文字が同時に浮かぶような感覚だ。


(ここがマスターのホームか)


「ね、念話ってヤツ? というか、なんでタロ君外に出られたのーっ?」

お読みいただきありがとうございました。

次回、謎のアイテム電池スペーサーとは?

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