48・モフモフわんことアイテムコアを改良するよ!
本日(11月20日)は三回更新します。
これは1/3回目です。
夕食の後、しばらく歌音と遊んで、彼女がおねむになったのを機に自室へ戻った。
わたしはベッドに寝転んでアイスを齧る。
溶けた汁をこぼすといけないので、タロ君はアイスの半分をお皿に入れて床で食べているのだった。
「美味しいのだ」
「そっか。……サクラ子も少し食べる?」
「……オォォ……」
ゴーストのサクラ子は、さほどアイスを好きではないようだ。
闇の魔気を放出したら簡単に作れるんだったりして?
……アパートに帰ったらヒマワリやスズラン、モモ子の力を借りて試してみよう。
「えっと……あなたがいるところに『転移』できるから、たまに様子を見に来るわね」
「……オォオ……」
喜んでくれてるみたい。
アイスを食べ終えたので、棒を部屋の隅にあるゴミ箱に向けて投げる。
うっ……入らないかも、と思った瞬間、タロ君がジャンプして棒をくわえた。
「おおー。ありがとう、ゴミ箱に入れてくれる?」
(わかったのだ)
念話で答えて、くわえた棒をゴミ箱に運んでくれたタロ君だった。
もちろん帰ってきたタロ君をなでなでして称賛したよ。
お皿が空になっていたので、タロ君の口の周りをティッシュで拭いてベッドの上に抱き上げる。ティッシュはちゃんと自力でゴミ箱に入りました。
ドロップ品リストを呼び出して、影のコアを取り出す。
「マスター、なにするのだ?」
「歌音にもマントを作ろうかと思って」
「おー、いいな。マスターの作るマントはカッコいいからな」
アイテムコアの付与効果は、ダンジョンの中でしか使えない。まあ我が家の場合、サクラ子の半径三十センチ以内(マスターのわたしより範囲が狭い)にいれば使えるんだけど。
付与効果だけでなく、剣は斬れないし弓は刺さらない。
ダンジョン外の物質を壊すこともできない……が、ダンジョン外の物質がアイテムコアを壊すこともできない。
「この辺りは大丈夫だと思うけど、もし刃物で襲われても大丈夫なはず」
ほかのダンジョンでは防具がドロップしていないから、そういう目的でアイテムコアが使われてはいない。
どこかの研究所で研究はされてるんだろうけどね。
「歌音を刃物で襲うような奴がいるのか? 吾が許さないのだ!」
「もし、よ、もし。それにこのマントは夏涼しくて冬暖かい……予定だし」
「ん。闇の魔気は涼しさを大地の魔気は温もりをもたらすからな」
「うーん。歌音用なら色を変えてみようかな」
「色?」
「前にいろいろ試したとき、魔法属性の割合で色が変わったんだよね」
大地属性は黒、闇属性は紫、ふたつの属性のバランスを変えると緑(植物属性?)っぽくなる。
炎属性はもちろん赤、光属性はちょっと金色が混じる白、水属性は銀色が混じる青、風属性は植物属性? よりも淡い緑だ。
混合属性は植物以外にもあるので、対応する組み合わせにしたら好きな色が作れるだろう。
「歌音はピンクが好きなんだったかな。単純に考えれば炎属性と光属性を多くすればいいんだよね。でもそうすると、夏涼しくの要素がなくなりそう」
「大地属性と闇属性、両方削除すると吾の影コア自体が消え去るのだ」
「あー、そうだったね。じゃあ元の属性は残そう。……タロ君『MP譲渡』してもらってもいい?」
「もちろんなのだ!」
『MP譲渡』してもらって、わたしは本格的にアイテムコア作成を始めた。
まったく新しいものではないから、ある意味以前の改良版だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「完成ー!」
「おー!」
「……オォオ!……」
【影のマント】
【攻撃:*】
【防御:S】
【魔法攻撃:*】
【魔法防御:*】
【集中:*】
【敏捷:C】
【魅力:*】
【精神:*】
【光属性:C】
【闇属性:C】
【炎属性:C】
【大地属性:C】
【風属性:*】
【水属性:*】
【特徴:使用者に合わせて大きさが変わる】
【 使用者の防御の値が基本の二倍になる】
【 百度攻撃を受けると壊れる】
【付与効果:活性化(光属性、マントを着ている間HPの自動回復率を上昇させる)】
歌音に、と思って作ったアイテムコアは、綺麗なスモーキーピンクになりました。光属性の金色の煌めきを闇属性の紫と大地属性の黒が抑えてできた落ち着いた灰色と、炎属性の赤が上手く混じったのだ。
敏捷のアップがなくなっちゃったのは、風属性を増やさなかったからだと思う。
やりたいことが多かったので、壊れないアイテムコアにするのは諦めたよ。
付与効果の『活性化』は炎属性と光属性で微妙に効果が異なる。
炎属性の『活性化』は上昇率が高い代わり、効果が終わると反動があるんだよね。
注入したMPの量で効果が変わるのはなんとなく感じてたので、同じランクで光属性を優位にするためレベルアップバーを調節しました。色もレベルアップバーの長短で調整した。
魔法属性以外のステータスと組み合わせたら、炎属性光属性対応のステータスを上昇できるんだろうけど、歌音はダンジョンに戦いに行くわけじゃない。
というか、わたしやサクラ子が近くにいるとき、ふざけてお兄ちゃんにパンチした歌音の攻撃が強くなってたりしたら問題だし。
今はこれが精いっぱいだよ、歌音。ちゃんとケモ耳と尻尾はあるからね。
ちなみに光属性の『活性化』は上昇率が低い代わりに常時発動スキル。
護衛のサクラ子が近くにいれば、歌音は元気!
……お兄ちゃん、お義姉さん、ごめん。そんなものなくても歌音は元気だったね。
このマントはバサッと羽織って首のところをボタンで留める方式。
ボタンは後ろから引っ張ると外れて、首を絞めないようになっている。
元々タロ君用に考えたので、ペットの首輪感覚で安全を重視してるのだ。
「すごいのだ、マスター! 歌音が喜ぶぞ!」
「そうだといいね。じゃあ寝ようか」
「……歯磨きは?」
「……忘れてた」
賢い犬に注意を受けて歯磨きをしてから眠りに就いた、ダンジョンマスター生活十九日目の夜だった。
明日で二十日か。
キリがいいような、中途半端なような……
お読みいただきありがとうございました。
次回はタロ君日記です。