46・モフモフわんこと新しいモンスター(食材?)
本日(11月19日)は三回更新します。
これは2/3回目です。
帰省中のダンジョンマスター卯月 晴です。
やっぱり実家は楽で落ち着くので、ついつい長居をしてしまう。
とはいえ、一日一回はダンジョンに行ってるんだけどね。
玲奈ちゃんが『各国の諜報機関』とか怖いこと言うので、わたしは『花言葉辞典』を片手にすべてのゴーストをボス部屋に召喚した。
名前付けて特別なモンスターにしないと命令できないからね。
町に放った花の名前のゴースト達には、お巡りさん以外が持っている武器の弱体化、対象者の意思を確認せずに行われる録音録画に使用される記録機器への介入(=呪いの心霊映像にする)、違法な通信の妨害などをお願いしている。……たぶん日本の公安とかも巻き込まれてる、ごめん。
本日はダンジョンマスター生活十九日目。
ゴーストがダンジョン内にリポップしなくなっても(外だと倒されないから)四時間六交代制で訪れてDPを稼がせてくれている自衛隊に罪悪感がいっぱいになったので、七月最後の今日の日に、新しいモンスターを作成しようと思う。
ちなみに現在のDPは──
【現在のDP :7591000DP】
【昨日の消費DP: 7000DP】
【※消費DP内訳 ダンジョンコア消費: 1000DP】
【 ダンジョン施設消費: 1000DP】
【 ボスモンスター消費: 3000DP】
【 モンスター消費 : 2000DP(二百体分)】
【昨日の生産DP:600000DP】
【※生産DP内訳 訪問者生産:600000DP(六百体分)】
ここで表示される生産DPはあくまで昨日が終わるまでの時点でのものなので、今日が始まってからの生産DPを詳しく確認したら総合計はもっと増える。
四時間ごとに新しい訪問者が来るからね。
倒されてリポップしないだけで、ダンジョンの外で活動していてもゴースト達の分のDPは消費されていっている。
このままならタロ君と千日以上、三年弱くらい生き延びられるのだけど、これからなにが起こるかわからないし、この短期間でこれまでのいろいろを変えてしまったのが申し訳ないので、とりあえずポーションをドロップするモンスターを増やすよ。
影のマントによる『隠密』状態でボス部屋に『転移』したわたしは、改めてタロ君を召喚した。
面倒なんだけど、タロ君とお散歩に行くとか言ったら歌音がついて来るので、別行動してこっちで合流するしかない。このときのタロ君は押し入れの奥とかに隠れている設定です。
「タロ君!」
「マスター♪」
抱き合って再会を喜び合った後、タロ君のステータスボードを開いて状況を確認する。
種族レベルの横にあるバーはかなり伸びている。残りわずかでレベルが上がりそうだ。
植物魔法のスキル『MP譲渡』を毎日使っているせいだろう。
「それじゃタロ君」
「わかってるのだ。……『MP譲渡』」
MAXを越えていてもMPを継ぎ足せるので、とても重宝している。
これを利用してアイテムコア作成に励んでいるせいか、わたしのMPの横にあるレベルアップバーも伸びてきた。経験は力だね。
タロ君が魔力の霧を放出すると、
ぴこーん♪
レトロゲームの電子音のような音が辺りに響いた。
【オルトロス『タロ』はレベルアップしました!】
【オルトロス『タロ』はレベル4になりました】
【オルトロス『タロ』は新しい魔法属性を設定できます】
早速タロ君のステータスボードで魔法属性の項目をタップする。
設定するのは炎属性と決めていた。最初から持っていた大地属性と一番相性の悪い魔法属性だ。
今でも最終的には訪問者が来なくてもDPが生産されるダンジョンを作ろうと考えているのである。ただまあ、しばらくはモンスターがリポップするたびに倒されちゃうだろうから、ダンジョンの生態系? が確立されるのはまだまだ先の話だろうけどね。
そして新生タロ君は、
【タロ/0歳/雄/オルトロスLV4/ボスモンスターLV1】
【HP:40000】
【MP:10000】
【状態:健康】
【攻撃:A】
【防御:S】
【魔法攻撃:A】
【魔法防御:S】
【集中:A】
【敏捷:A】
【魅力:A】
【精神:A】
【光属性:*(未設定です)】
【闇属性:S】
【炎属性:A(新しく設定しました)】
【大地属性:S】
【風属性:*(未設定です)】
【水属性:*(未設定です)】
【魔法スキル:索敵・石礫・遠吠え・硬化・大地の祝福・咆哮】
【 隠密・弱体化・HP吸収・催眠・騒霊・影】
【 MP譲渡】
【 NEW!→火球・強化・活性化】
【特殊スキル:モンスター作成(DPを消費)】
レベルが上がったので、タロ君の一日の消費DPは4000に増えた。
相性のせいか、炎属性はA止まりで自動習得した魔法スキルも少なめだ。一時的にステータスの値を上げる『強化』とHPの自動回復率を一定期間上昇させる『活性化』はゲームなら役に立ちそうなんだけど、タロ君を戦わせる気はないからな。
タロ君がレベル4になったことで、ボス部屋の結界がレベル40結界になった。
「レベル4のボスモンスターって、レベル40の人間と同じくらいの強さってこと?」
「そんな感じなのだ。この世界の人間は魔法が使えないから、レベル20になるのも難しいと思うが」
「そっか」
わたし達は炎属性の下級モンスター、レッドボア(赤い猪・お肉はドロップしないけどイメージ的に食材)を作成した。
もちろんドロップ品はポーション。
口から『火球』を吐くレッドボアを自衛隊はあっさり殲滅した。ドロップ品設定で止まってる時間もあったしね。
(((マスター、私どもの実が生りましたよ)))
「う、うん。おめでとう?」
以前スライムの花(薬草)でミドルポーションを作ってから、すでに二週間近く過ぎている。
ボス部屋の天井を覆うスライム達の体内には再び花が咲き、中には実をつけるものまで現れ始めた。
花でミドルポーションが作れて、実ならミドルポーションとハイポーションの中間の効果があるものが作れるんだよね……はは、どうしよう。
何日か置きに変異種も出現しているんだよねー。
……なんかこのダンジョン、説明書の記載よりも変化の速度が速くない?
思い悩むわたしに向けて、もの言いたげな念話が頭上から降り注ぐ。
(((……)))
「えっと……お祝いに苺でも作ろうか。今日はなにも用意してないから、今度ね?」
(((ありがとうございます、マスター!)))
「吾も苺食べるのだー♪」
最近は歌音がタロ君を探して押し入れに入り込む前に急いで帰るので、オルトロスモードのタロ君をソファにしてくつろぐことがなくなった。
黒い豆柴姿のタロ君を抱き上げて実家のサクラ子を目印に『転移』する──と、たちまち歌音に見つかった。わたしはタロ君と違ってマルチタスクできないので、『転移』を発動すると『隠密』の効果が消えてしまう。
歌音は、てけてけと家の廊下を走って近寄ってくる。
「ハルちゃん、お買い物に行ってたんじゃなかったの?」
「お財布忘れて取りに帰ったんだよ」
「ダメねえ。カノが一緒に行ってあげようか?」
「歌音もでかけて一匹でお留守番だとタロ君が可哀相だから、一緒にお家で待っててあげて」
「タロ君すぐいなくなっちゃうからなあ。……でもいいよ。おいで、タロ君」
「わふ!」
まあお母さんは家にいるから一匹じゃないんだけどね。
実家の廊下を歩いていくタロ君と姪の後ろ姿を見つめて考える。……アパートに戻ったら、一匹でお留守番できるようになってもらわないとなあ。
歌音はわたしが二十過ぎでケモ耳付きのマントを着ていることについては、今のところ見ない振りをしてくれているようだ。
お読みいただきありがとうございました。
次回、晴が家に帰るとタロ君が?