5・モフモフわんことモンスターを作ります。
本日(11月2日)は三回更新します。
これは2/3回目です。
このダンジョンは、わたし達がいる体育館だけではない。
ステージの正面に出入り口があって、細い通路がグラウンドに続いている。
あ、大きさのイメージね。
近いうちに来るであろう調査員の相手をしてもらうモンスターは、グラウンドのほうに配置するつもりだ。
グラウンドには外へ通じる通路があるからね。
特に迷路にもなっていないふたつのお部屋がわたしのダンジョンです。
タロ君が倒されたりするのは嫌だから、体育館の入り口には結界を張る。
これはDPを消費しなくても大丈夫。
買った新築の家に最初から付いている扉を閉めるようなものだ。
鍵は二種類。
グラウンドのモンスターが全部倒されたら開く結界と、レベルが30以上の人間でないと通れない結界。
ほかの鍵にするためにはDPが必要です。
「レベル30結界にするね」
タロ君に言って、説明書の結界という単語をタップして設定。
──ステータスボードで確認された、人間という種族レベルについての統計がある。
普通の特に鍛えていない人は大体1~5。
アスリートなどの体を鍛えている人は6~10。
格闘家などの戦闘力を持っている人は11~15。
各国の軍隊にいる実戦を知っている人は16~20。
レベル20を越える人は極わずかだということだ。
日本だと20に達した人はいないという。
入る人は調査目的だから命を賭けてまでは戦ったりしないしね。とはいえ事故や予想外の出来事も発生するから、日本のダンジョンでも何人かは命を落としている。
そんなわけでレベル30設定ならだれも体育館に入れないはず。
なおステータスボードのレベルや能力値はダンジョン内での戦闘力を重視した評価なので、低くても気にすることはない。
……わたしのダンジョンマスターのほうのレベルはどうなんだろう?
タロ君みたいに上がったら消費DPが増えちゃったりするのかな。
迂闊に上げないよう、後でレベルアップ条件を確認しておかなくちゃね。
「それじゃモンスター作ろうか」
「作るのだ!」
モンスターは百体で一セット。
下級だと一セット作成して10000DP、一日に1000DP消費。
リポップする際にはDP不要なのが救いだ。
ボスモンスターが倒されてからリポップするまでの間に倒された通常モンスターはリポップできなくなるようだが、タロ君を戦わせるつもりはないので、一度作ってずっと頑張ってもらう予定。
人間に倒され続けるとストレスを感じてリポップ時に上位種へと進化したり変異種になったり、リポップしなくなったり逆に増えたりするらしい。
減るのはいいけど、進化したり増加したりされたら消費DPが増えるから困るなあ。
作れるモンスターはボスモンスターの持つ魔法属性に準ずる。
さっき闇属性の制限が解除されたから、ふたつの属性から選択可能だ。
ただ大地属性と闇属性は相性が良くて敵対しにくいらしいので、今のところはどちらかの属性のモンスターだけ作ることにしよう。
片方制限されていたものの、ふたつの頭を持つオルトロスは最初から魔法属性をふたつ持っていた。
レベルが上がると、さらに増やすことも可能だという。
……DPを使って設定するんだけどね。
説明書のモンスターリストを見ながら、タロ君と話す。
犬は群れる生き物だから、タロ君は仲間が欲しいかもしれない。
でも──
「えっと……大地属性のゴーレムにしようかな」
「ブラックドッグではダメなのか?」
「ごめんね、タロ君。わたしは犬が好きだから、人間に倒させるために作り出すのは嫌だよ。ゴーレムならいいってわけじゃないけど、ゴーレムはあんまり生き物っぽくないから」
「そうか。マスターが決めたのなら、それでいい」
というわけで、わたしとタロ君は10000DPを消費して下級モンスターのマッドゴーレム×百体を作成した。
次々とエントランスにポップするマッドゴーレム達の大きさは成人男性よりひと回り大きいくらいなんだけど、マッドなだけあって、その体はどこか不安定でバランスがおかしい。
体の一部が泥に戻っていたりもする。
すべてのゴーレムが完成すると、ぴこーん♪、とレトロゲームの電子音のような音が辺りに響いて、
【ダンジョンマスター『晴』はレベルアップしました!】
【ダンジョンマスター『晴』はレベル2になりました】
わたしはレベルアップした……けれど、能力値はオールFのまま、HPMPが増えることもなく、新しいスキルも追加されませんでしたとさ。
たぶんモンスター作成の経験で、ダンジョンマスターのレベルアップバーが一瞬で満杯になったんだな。ステータスボードで確認したが、幸い消費DPは1000のままのようだ。
やっぱり人間とモンスターではレベルアップのシステムが違うんだね。
なんて思いながら、グラウンドで蠢く赤黒い泥でできたゴーレムを見つめる。
うん、ベチャベチャしていて可愛くない。
調査員に倒されるところを見ても胸が痛むことはなさそうだ。
「ドロップ品も設定しなくちゃね。……ポーションっと」
説明書でマッドゴーレムのページを開いてドロップ品という単語をタップしたとき、不思議なことが起こった。
グラウンドで蠢いていたゴーレムたちの動きが一斉に止まったのだ。
ゴーレム達はそのまま、ドロップ品の設定が終わるまで動かなかった。
「異世界のダンジョンマスター達は魔法使いだから、ダンジョンコアの魔力を使ってコアからモンスターを作るのだ。コアには最初からドロップ品の設定がされている。マスターは逆だったからマッドゴーレムが止まったみたいだな」
「へえー」
設定済みのコアでモンスターを作ったら消費DP量が少なくて済むのかな。
ドロップ品の設定にも10000DPが必要だった。
これは最初だけで、ドロップするたびに消費されるわけじゃないからいいけど。
残りDPは80000、今日の分の消費DPは6000の予定だ。
お読みいただきありがとうございました。
次回、タロ君と涙のお別れ?