40・モフモフわんこのキャリーバッグ
本日(11月16日)は三回更新します。
これは1/3回目です。
影のマントを脱いで確認する。
使用回数的なものは変化していないけど、一度『隠密』を使ったからか、追加改良はもうできないみたい。
タロ君に再度『MP譲渡』を使ってもらって、防御をSSにしてからのほうが良かったかな。まあしてしまったことは仕方がない。
続けてタロ君に影のマントを装備させてみる。
特徴に書かれていた通り、タロ君に着せるとタロ君に合った大きさに変わった。
お耳と尻尾が重複してるが、可愛いのでなんの問題もない。
「大丈夫? キツくない?」
「大丈夫なのだ。すごく着心地がいいのだ。マント着るの初めてだけど。……んふー。マスターの匂いがするのだ」
さっき着たからね。
影のマントを纏ったタロ君は、嬉しげに部屋を飛び回る。
黒いけれど暗く重い感じはない。飼い主の欲目かもしれないが、マントを纏ったタロ君はとてもスタイリッシュだ。
「暑くない? そのままお外に出られそう?」
「お散歩なのか?」
「お散歩もだけど、首輪を買ったときのペット用品店に行ってキャリーバッグを買おうと思って」
「キャリーバッグ?」
「うん。タロ君が入るバッグだよ。帰省のときにいるし、明日ハル君ふー君と車でお出かけするからね」
タロ君は黄金色の瞳を見開いた。
「吾、閉じ込められるのか?」
「乗り物にはほかのお客さんもいるからね。犬が苦手な人もいるんだよ。タロ君はモンスターだけど、それは秘密でしょ?」
「んー。吾お留守番してるから、目的地に着いたら召喚して欲しいのだ」
いや、タロ君はお留守番できるほど大人じゃないから、とは言わないでおく。
「お出かけは行く途中もお出かけなんだよ。ずっと出しておくことはできないけど、船で一緒に海を見たいし、明日の車ではハル君ふー君がタロ君と過ごしたがると思うよ?」
「海かあ……」
隣町の港から実家のある町までの海域には小さな島がたくさんある。
観光資源がないため過疎化した限界集落が多く、無人になったことでダンジョンができた島もあるという噂だ。
もしダンジョンが民間に開放されたら、そういうダンジョンを利用して町興し島興しがおこなわれるようになるのかもしれない。
タロ君が、ちらりとわたしを見る。
「キャリーバッグにマスターの服入れていい?」
……ヤダ。タロ君は可愛いけど、それはちょっとお断りしたい。
犬だから仕方がないのはわかる。
サクラもお母さんの服の上で寝てたし。あの子は普通の犬だったから、いつも洗濯機のゴミ取りネットが服についたサクラの抜け毛でいっぱいになってたっけ。
「お出かけ前にそのマントを着ます。それで匂いがつくでしょ?」
「んー……」
「あ、そうだ。明日は苺作ってタッパーに入れて行こうか。まだ一回分残ってるし」
「苺!」
さっきまでしょんぼりしていたタロ君が、ぴょこんとジャンプする。
「苺、いいな! ダンジョンで作った大きいのを持って行ったら、春人や冬人も大喜びするぞ!」
「大喜びするだろうけど……車に入りきらないと思うから、普通にストロベリーポットで作るね」
「えー。しょうがないか。春人と冬人は小さいから、あんな大きな苺を食べたらお腹を壊してしまうものな!」
「そうそう。ハル君ふー君はタロ君みたいにオルトロスモードになれないからね」
「オルトロス……んふー」
「オルトロス星人とお揃いのマントだね。もうちょっと青っぽいほうが良かった?」
「んーん。吾は闇属性と大地属性のモンスターだから、これでいいのだ。……どうだ?」
そういえば言ってなかった。
「すごく似合ってるよ。タロ君カッコイイ!」
「んふー♪」
喜んでくれてなによりです。
──しばらくスマホによる撮影会を繰り広げた後で、わたし達はキャリーバッグを買いに出かけた。
全世界にいるタロ君ファンにもこの映像を発信してあげるべきだろうか。
ジャーキーを食べる野性的なタロ君の動画へのコメントで、多くの視聴者が新作を求めてたんだよね。……うちの犬は世界一可愛いからなー、でへへ。
お読みいただきありがとうございました。
次回はタロ君日記です。