表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/127

30・モフモフわんことダンジョン苺

本日(11月12日)は三回更新します。

これは2/3回目です。


 ダンジョンの壁や地面は破壊できないので、苺の種を置いて腕輪に付与した植物魔法を発動した。

 期待に満ちた目で見てくるタロ君に、やる前から無理とは言えなかったのだ。


 あーあ、30MPの無駄遣いだ。

 今日は苺の後でタロ君に(シャドウ)のモンスターコアをもらって、新しいアイテムコアも作成しようと思ってたのに。

 まあいいか。四百人の訪問者(ビジター)が来てもDPに百日分の余裕もできないことに愕然としたから、変わったことして気分転換したくなっただけだしね。


 わたしから腕輪へと魔力らしきものが移動し、腕輪から種へと放出される。


「……あ、あれっ?」


 小さな苺の種から芽が出て茎が伸びて葉が生えて──


「な、なんで?」

「おおー」


 タロ君が感嘆の声を上げる。

 地面に埋められさえしていない苺の種は、黒い豆柴モードのタロ君と変わらないくらい巨大な実を生み出した。

 一個だけじゃない。ストロベリーポットのときと同じで鈴生りだ。ボス部屋のステージが苺畑になっている。


「なんでこんなに大きく?」

「んー……」


 いつものようにタロ君が目を瞑って確認してくれる。


「ダンジョンの施設がマスターの魔力を増幅したみたいなのだ」

「そ、そっか。ここはわたしのダンジョンだものね」


 期待に満ちた黄金の瞳がわたしを映す。


「……食べていいよ」

「マスターは?」

「わたしはこんなに大きなの食べられないよ。タロ君もオルトロスモードで食べたら?」

「わかったのだ!」


 双頭の黒い巨犬が出現し、嬉しげに苺を食べていく。

 うちのボスモンスターは良い子だから、α症候群にはならないと思う。

 うん、ならないといいなあ。


 わたしは苺畑と化したステージを見回す。

 苺が急激に成長していく姿も鈴生りになった巨大な実も話題になりそうだけど、うん、まあ最初からわかってた通り、一般公開できるようなものではないよね。……DPってどうやって稼げばいいんだろ。

 なんて思っていたら、目の前にスライムが落ちてきた。


「……落ちたりするんだ」


 落ちてきたスライムは白色で淡く発光している。

 大きさはクッションほど。

 タロ君が教えてくれたように花が咲いていた。スライムの半透明の体内で花びらが揺れている。


「モンスターや人間が攻撃しない限り、スライムが落ちてきたりはしないのだ」


 片方の頭で巨大な苺を頬張りながら、タロ君が教えてくれる。


 無数に密集しているスライムは怖いが、一体だけなら怖くはなかった。むしろ可愛い。

 ぷるぷるしているスライムに向かって一歩踏み出したら、するっと後退りされる。

 いや、そもそもどっちが前なんだろう?


「じゃあなんで落ちて来たんだろうね」

「マスターに用事があるんじゃないのか?」

「でも近づくと逃げるよ?」

「ゴーストと一緒で、ダンジョンの(ぬし)たるマスターに怯えているのだ」

「名前をつけたら落ち着くってこと? でもスライムは普通のモンスターとは違うんだよね?」

「モンスターもスライムも魔力の結晶であることは変わりないのだ」

「そうなの?……じゃあスラ……ぷる……」


 なにかと被りそうな名前ばかり頭に浮かぶ。……うーん。

 しばらく考えて、わたしは決めた。

 スライムの前? にしゃがんで呼びかける。


「あなたの名前はアジサイよ。アジサイ、わたしになにか用?」


 お花シリーズ続行です。

 スライムは属性ごとに色が違うらしいのでアジサイにしてみました。

 アジサイは、恐る恐るといった様子でわたしに近づいて来る。


(マスター)


 頭の中に念話が響いた。……あら、すごい。

 ゴーストのときは気持ちが伝わって来るだけで、念話で話しかけられたりはしなかった。

 スライムって結構頭が良かったりするのかな。


(私どもの願いを聞いていただけないでしょうか?)

「願いにもよるけどなぁに?」

(私どももこの植物を食してもよろしいでしょうか?)

「……え? 苺が食べたくて、わざわざ落ちてきたの?」

(その通りでございます、マスター)


 わたしはタロ君を見た。


「タロ君、スライム……アジサイ達にも苺あげてもいい?」

「吾はもういっぱい食べたからかまわないのだ」

「じゃあ食べていいけど……」


 頭上の様子を想像して、背筋が冷えるのを感じながらアジサイに告げる。


「全員分には足りないと思うよ?」

(私どもは感覚を共有しています。何体かの親株が食べれば、それぞれに属する子株にも美味しさが伝わります)

「だったらいいよ。ケンカせずに食べてね」

(((マスターの仰せのままに)))


 光る白スライムと風を発する緑スライムが何体かずつ落ちてきて、苺を食べ始める。

 わたしとタロ君は苺畑と化しているステージから降りた。

 口の周りについた苺の汁を舐め取って、タロ君がアクビを漏らす。


「ちょっとお昼寝する?」

「ん。お昼寝するのだ」

「アジサイー、もし可能なら苺の茎や葉も食べちゃっていいからね」

(((マスターの仰せのままに)))


 わたしはオルトロスソファにもたれて眠りに就いた。

 起きたら1000000(百万)DPくらい稼げてるといいのになあ。

 ……1000000÷7000……ギリギリ百五十日にならない。


お読みいただきありがとうございました。

次回……なんかいっぱいできた?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ