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28・モフモフわんこと葉山兄弟(小さいほう)

本日(11月11日)は三回更新します。

これは2/3回目です。


「イチゴだー」

「ハルちゃんが育てたの?」

「そうだよ」


 植物魔法でね、という言葉は飲み込む。

 ストロベリーポットをそのまま渡すつもりだったのだけど、ハル君とふー君に手を引かれて葉山家に招き入れられてしまった。

 お母さんの節子さんが忙しくないみたいだからいいかな。


 ついさっきダンジョンに訪問者(ビジター)が来たみたいなんだけど、なにかあればお手洗いの振りして転移すればいいしね。……タロ君はどうしよう?

 というか、今日はやたらと訪問者(ビジター)が来てるって通知があるんだよね。

 昨日いきなりゴースト作ったせいかな?


 こっそり派遣したヒマワリが放つ闇の魔気のおかげか、七月の暑い盛りにも関わらず葉山家は涼しくて心地いい。

 もちろんヒマワリは『隠密』で姿を消してるよ。

 苺を手に取った節子さんが、お褒めの言葉を口にしてくれた。


「綺麗な苺ね、卯月さん」

「ありがとうございます。一応洗ってから食べてくださいね」

「わふわふ」

「「はーい」」


 わたしとタロ君に見つめられて、ハル君とふー君は声を揃えて頷いた。

 我が家のちゃぶ台より大きなローテーブルの上には、ストロベリーポットと節子さんが用意してくれた水を張ったボウルがある。

 摘んだ苺は、一応ボウルで洗ってから食べることになったのだ。


「じゃあどうぞ」

「「いただきまーす」」

「葉山さんも食べてくださいね」

「ありがとう。それじゃあ私もいただきます。……美味しい」


 節子さんの顔がほころんだ。

 ハル君とふー君も笑顔になる。


「おいしー」

「美味しいな」

「すごいわね、卯月さん。こんなに美味しい苺食べたことないわ」

「ないー」

「俺もない」

「わふ♪」


 タロ君はドヤ顔である。

 わたしは先ほど大家さんに言ったように、タロ君が来て忙しかったので忘れていたら勝手に実っていたという話をした。


「自然ってすごいですよね」

「すごいー」

「すごいなー」

「遠慮せずに全部食べてくださいね」

「ハルちゃん、たべないのー?」

「うん。もうお家で食べたから、ふー君達で食べて」

「タロ君も?」

「わふわふ!」


 植物魔法は後二回使える。

 冷蔵庫のコンビニスイーツを飾っている苺もまだ二個ある。というか、三等分された一個が飾られていたのだ。

 スイーツを食べる前に種だけ保存して、今度帰省するときに使ってお土産にしよう。


 ……ほかの魔法属性にMP注入したらどうなるんだろう。

 タロ君が(シャドウ)を倒すのって、犬猫(わんにゃん)が自分の抜け毛で作ったぬいぐるみで遊ぶようなものって言ってたっけ。割り切って、もう一個くらいモンスターコアを用意してもらおうかな。

 防御以外にMPを注入した場合の変化も気になるんだよね。


「卯月さん、何個かお皿に取らせてもらってもいいかしら。夏樹さんが帰ったらあげたいの」

「もちろんいいですよ。この間はA5のお肉ありがとうございました」

「あれは鷹秋君が持って来てくれたのよ」

「ほかにもいろいろお世話になってますから」


 将来パン屋さんを開く予定の葉山家のお父さんは、ときどき試作品のパンをくれる。

 大家さんの家庭菜園の野菜もだが、そのまま売り物にできそうな美味しさだ。

 現在仕送り以外収入のないJDはとっても助かってます。


「そういえば卯月さん、今週末ってなにか予定がある?」

「特にないですよ」


 ダンジョンでなにかあったときは、葉山家を護衛させているヒマワリを目印に転移すればいい。メイン護衛対象はハル君とふー君です。

 なんの用事だろう? そういえば去年も……

 節子さんが予定を聞いてきた理由に思い当たって、わたしはハル君達に微笑んだ。


「ヒーローショー?」


 去年、急にふー君が熱を出したので、節子さんに代わってハル君をヒーローショーに連れて行ったことがあるのだ。

 隣町の港に面した大きな公園で開催されたヒーローショーは日にちが決まっていたため、べつの日に、というわけにはいかなかった。

 あのころのふー君は一歳で、今と比べると赤ちゃんだったなあ。ハル君は四歳でもしっかりしてて、電車でも会場でも全然手がかからなかったっけ。


「うん、そう。今年は今度の土曜日なんだぞ。港の公園はペット可だから、タロ君も一緒に行こうな」

「わふ」

「ふーもいく」


 ふー君はむふー、と鼻息を荒くしている。

 去年行けなかったから、もしかして生まれて初めてのヒーローショーになるのかな。


「急で悪いのだけど、良かったら同行してもらえない? 今年は鷹秋君が車を出してくれるから行き帰りも楽だと思うわ」

「去年はアキちゃん転職したてで忙しかったんだ」

「一緒に行ってもらえるのなら、お昼と夕飯はうちで持つわ。春人も言ってたようにタロ君も行ける場所だし、どうかしら?」

「タロくん、ふーとあそびいく?」

「わふ!」


 この前会ったばかりの人が一緒なのはちょっと不安だけど、タロ君を褒めてくれたから悪い人じゃないと思う。ハル君とふー君の叔父さんだしね。

 タロ君にも不満はなさそうなので、わたしは節子さんの申し出に頷いた。

 ……鷹秋さんって、土日祝休みのホワイト企業勤務なのかな。今度は土曜日だし、BBQは祝日だったしね。

お読みいただきありがとうございました。

次回はタロ君日記です。

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