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27・モフモフわんこのお裾分け

本日(11月11日)は三回更新します。

これは1/3回目です。


 ふと気になって、陶器の腕輪のステータスボードを開いてみた。


【陶器の腕輪】


【攻撃:*】

【防御:E】

【魔法攻撃:*】

【魔法防御:*】

【集中:*】

【敏捷:*】

【魅力:*】

【精神:*】


【光属性:*】

【闇属性:C】

【炎属性:*】

【大地属性:C】

【風属性:*】

【水属性:*】


【特徴:使用者に合わせて大きさが変わる】

【   使用者の防御の値が基本の五パーセント増幅する】

【   二度攻撃を受けると壊れる。もしくは二度付与効果を使うと壊れる】

【付与効果:初級植物魔法(MPを消費することで植物の成長を促進する)】


 一度使用した陶器の腕輪は、もうMPを注いでも追加改良することはできなくなっている。

 ドロップ品リストに登録することも不可能だ。

 壊れるまでの回数もちゃんと減っていた。


 三回の制限があるとはいえ、植物の成長を促進する魔法スキルが付与されたアイテムコアなんて、どこの国も喉から手が出るほど欲しがるんじゃないだろうか。

 でもMP30で二パックの苺しか育てられないんだよねえ。

 日本人以外でMPが二桁を越える人間はほぼ確認されていない。海外のオタク勢にもいないらしいので、MPが妄想(MOUSOU)ポイントだというのはまったくのデタラメだろう。


「マスターなにしてるのだ? お出かけやめるのか?」

「ううん、待たせてごめんね」


 わたしは陶器の腕輪のステータスボードを消し、ちゃぶ台の上からラップをかけたお皿とナイロン袋に入れたストロベリーポットを持ち上げた。

 苺を全部摘まずにストロベリーポットを持って行くのは、見せて驚かせたいからです。

 タロ君の首輪には、すでにリードがつないである。


 陶器の腕輪については個人的に楽しむだけにしよう。

 ダンジョンでドロップさせちゃうと世界に与える影響が大き過ぎる気がする。

 ポーションも早まっちゃったかなあ。とはいえ困ってる人が助かるのなら……


 いやいや! わたしは頭を振って、妙な方向へ向かいかけていた思考をリセットした。

 わたしは聖人君子じゃない。

 国有公園をダンジョンにしちゃったことには罪悪感を覚えてるけど、それだって本来はダンジョンコアとダンジョンマザーツリーのせいだ。


 わたしはただのダンジョンマスター。

 タロ君と一緒に生き延びる! それが一番大切なことだ。

 世界のためじゃなく、訪問者(ビジター)を呼び寄せてDPを稼ぐためにダンジョンを運営していることを忘れないようにしないと。将来的には訪問者(ビジター)が来なくてもDPが生産されるようになれば一番いい。


「大家さんとハル君達にお裾分けしに行こう」

「わふー!」

「「「……オォオオ……」」」


 ヘタまで食べるほど苺を気に入ったタロ君だが、お代わりは求めなかった。

 せっかくだから大家さんやハル君達にお裾分けしてほしいと言うのだ。

 なにそれ! うちの(わんこ)マジ天使!


 ゴーストのウメ子達も一個で満足だと言う……言う? なんとなくそんな感じの意思を伝えて来たので、残りの苺はご近所にお裾分けすることにした。

 家の中でこっそり育てていたことにするのだ。

 食べたわたしのステータスボードには変わりがなかったし、植物の生長を促進する魔法を使っただけだから配っても問題はないだろう。ダンジョンマザーツリーに確認(アクセス)しても、この世界の人間に悪影響はないと返事があった。


 ウメ子達は『隠密』を発動させてお留守番してくれる。

 護衛対象のところへ戻ったヒマワリとスズランも苺を喜んでくれた。……よね、たぶん。

 手首にストロベリーポットを入れたナイロン袋とタロ君のリードの持ち手を通し、ラップをかけた苺のお皿を持ったわたしは、逆の手で玄関の扉を開ける。


「あら、(はる)ちゃん。タロ君のお散歩?」


 家庭菜園の世話をしていた大家さんが気付いて振り向く。

 わたしは彼女に近づいた。


「お忙しいところすいません。部屋で作ってた苺が実ったのでお裾分けに回ろうと思って」

「……苺? お部屋で作ってたの?」

「はい。これ、少ないんですが」

「わふわふ!」


 お皿に載せた苺を差し出す。

 数は五つ。ひとつひとつが結構大きいので多過ぎる気もするけれど、いつもお世話になっているのでこれくらいは差し上げたい。

 大家さんは目を丸くした。


「ええ? (はる)ちゃんがこれを作ったの?」

「そうなんですよー」


 えへへ、と笑ってナイロン袋からストロベリーポットを取り出す。

 かなり採ったけど、まだまだ鈴生り状態だ。


「あらあら、すごい。(はる)ちゃんは緑の指の持ち主なのねえ」

「あ、いえ……偶然です。タロ君が来てバタバタして忘れてたら、ひとりで勝手に育ってて」


 植物魔法で成長を促進させたなんて言えないので、先に考えていた言い訳を口にする。

 これなら栽培法を説明しなくて済むだろう。


「そうなの? でもそうねえ。トマトとか水を与えないほうが甘くなるっていうものねえ」

「大家さんはまだ家庭菜園のお世話をされますか? だったら後でお部屋のほうへ持って行きますよ」


 さっき渡した苺のお皿を手にして、大家さんは笑顔で首を横に振る。


「気にしないで。ちょうどひと休みしようと思ってたところだったの。この苺をいただいたら、後でお皿を返しに行くわね」

「いつでもいいですよ。いつもお野菜ありがとうございます。全然お返しにもならないんですが」

「そんなことないわよ。すごく美味しそう」

「わふ!」

「うふふ、タロ君にもお勧めされちゃったわねえ」


 などと話していたら、背後で扉の開く音がする。

 ふー君だ。ハル君ももう幼稚園から戻っていたらしい。

 お昼ごろ起きてアイテムコアを改良して、買い物に行って帰って来たんだからそれくらいの時間か。


「あの子達にも?」

「はい。直接摘んだほうが喜ぶかと思って……良かったら大家さんもお好きなのをどうぞ」

「あらあら、いいわよ。こんなにたくさんもらったんだもの」


 大家さんはお皿に載せた五つだけでいいと言うので、わたしは振り返った。

 ストロベリーポットを持ち上げて尋ねる。


「ハル君ふー君、苺食べるー?」

「食べるー」

「イチゴー」


 元気な声が返ってきたので、わたしは葉山家に向かって歩き出した。


お読みいただきありがとうございました。

次回、葉山家からある誘いが?

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