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20・モフモフわんこ世界デビュー!

本日(11月8日)は三回更新します。

これは1/3回目です。


 BBQの間バイトとダンジョンのことばかり考えていたわけではなく、葉山家のみなさんや大家さんとも交流を深めた。

 昨日が日曜日だったからハル君に「今日から夏休み?」と尋ねてみたら、呆れを通り越した優しい表情で「今日は祝日」と答えられてしまったっけ。

 ……アホな大学生でごめん。


 大きな肉を噛み千切る姿が好評だったので、ジャーキーを食べるタロ君の動画も見せてみた。こちらも大好評。

 葉山さんご夫婦と鷹秋さん、大家さんには動画を送らせていただきました。

 ハル君とふー君はお母さんに見せてもらってください。


 タロ君の動画目当てだとわかっていても、鷹秋さんと連絡先を交換したときはドキドキしたな。

 なにしろ去年大学に入学したばかりのころランチ合コンに行って、短毛か長毛かで争い始めた猫派のふたりを宥めて世話係に任命されてから、恋愛関係の話はまるでない。

 まあ友達ができて良かったけどね。短毛最高! と主張していた猫派が今の親友乙女ちゃんだ。


 アパートに戻ってきたわたしは、ノートパソコンを覗き込みながらスマホでつながった乙女ちゃんに報告した。


「乙女ちゃーん、全部入力したよー」

『それじゃ送信っしょ。すぐメール返信してくるから確認して』

「わふ」


 タロ君はわたしの横でノートパソコンを見ている。


『今のタロ君? 声カワイー! 早く生で見たいし』

「そのうち遊びに来なよ」

「わふわふ!」

『行くしかないっしょ!』


 あ、乙女ちゃんが遊びに来たときにダンジョンでなにかあったらどうしよう。

 わたしのダンジョンができた場所が国有公園だから、親友といえど打ち明けられないんだよね。

 共犯とかにされたら申し訳ない。


「メール来た。正式なパスワードを設定したよ」

『ならすぐアップっしょ!』

「わふ!」


(吾の動画が世界にっ!)


 わたしは乙女ちゃんの指示に従って動画配信者として登録、チャンネルを作成した。

 タロ君の動画を送ったら、これは世界に発信するべきものだと言われたのだ。

 いや、まあ……うん、うちのタロ君だから当然だよねー。


 取らぬ狸ではあるけれど、動画配信で広告収入がもらえたらダンジョン運営に集中できるし!……ゲームならともかく、リアルでダンジョン運営したいなんて、一度も思ったことないんだけどな。

 しかもチートなし、命の危険あり。

 自分だけならまだしもタロ君までだし、さ。


「わふ?」

『晴、急に黙ってどした?』

「ううん、アップできたよ」

『よっしゃ! なにかわからないことあったらウチに聞いて』

「ありがとう」


 乙女ちゃんが動画配信の方法に詳しいのは、高校時代密かに動画配信者をやっていたからだ。

 もちろんメイクで素性がわからないようにしていたので、だれにも知られていない。

 ギャルな口調で面倒見のいい乙女ちゃんは心配そうに繰り返す。


『マジわからないことあったらなんでも聞いてよ? すぐには答えられないかもしんないけど、ちゃんとわかる人に確認するし』

「わかる人って例の人?」

『……当たり前じゃん』

「わふー」


 カラオケではいつもノリノリの乙女ちゃんだが、歌や踊りが好きだからというだけで動画配信を始めたわけではない。

 むしろ本命は、それを口実にして気になる人に動画配信の方法を教えてもらうことだった。


「お父さんの部下なんだっけ?」

『そう。せっかく公務員だったのに妙な仕事に転職したパパの部下。……彼もパパの会社に来てくれてるんだけど』


 乙女ちゃんの大学入学と気になる人の転職が重なって、しばらく疎遠になっていたのだという。


「上手く行くといいね。陰ながら応援してるよ」

『へへっ、ありがと。あ、それと晴。ウチも遊びに行くけど晴も遊びに来てよね。ってかユキとツキとハナの動画も撮ってよ』

「乙女ちゃん自撮り上手でしょ」

『自撮りは、自分の自分による自分のための写真だから誤魔化しが効くの! ユキ達は写真も動画も撮られたくないから逃げるし!』


 無理に撮っちゃ可哀相じゃない、とも思ったが、猫大好きな乙女ちゃんに猫写真を見せてもらったことが一度もなかったことに気づき、言葉を飲み込んだ。

 やっぱり一枚くらいは写真欲しいよね。

 乙女ちゃん家の三匹の猫は、猫派で構い過ぎる彼女よりも犬派で関心の薄いわたしのほうに寄ってくる。自然な感じで撮ればイケるかもしれない。


「頑張ってみるよ」

『お願い!』

「じゃあまたねー」

『またー』

「わふふー」


 電話を切ってタロ君を抱き上げる。


「タロ君の姿が世界に!」

「世界に!」


 なんとなくハイになって畳を転がった後、実家と故郷の親友にも動画を送って眠りに就いた。

 ……お風呂に入ったのにお肉の匂いが、自分からもタロ君からもお肉の匂いがするー。

 寝ぼけたタロ君がわたしのパジャマはむはむしてたの可愛かったから、べつにいいんだけどね。

お読みいただきありがとうございました。

次回はタロ君日記三日目です。

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