※ダンジョンわんこ日記 四十九日目
ぷんぷん、なのだ!
マスターは、吾とニコがお昼寝している間にメイド喫茶へ行ってしまっていたのだ。
吾もニコも行ってらっしゃいしたかったのに、ひどいのだ。
乙女にも会ってみたかったのになー。乙女がバイトしているのが、メイド喫茶じゃなくてドッグカフェなら良かったのに。
「タロ兄様?」
おっと、いけないのだ。
吾の心が揺らいでいたら、ニコも不安になってしまう。
妹を不安にさせるのは、良い兄とは言えぬのだ。
「よし。勝負だぞ、ニコ!」
「勝負なのですわ、タロ兄様!」
吾は影を呼び出した。
今日は特にMPを使う用事はないし、最終的に1000MP残しておけば大丈夫だろう。
「がるるるるーっ!」
フェンリルモードになったニコが、オルトロスモードの吾の影と勝負を始める。
ボスモンスターのレベルが1上がるのは人間のレベルが10上がるのと同じくらいだ。つまり能力が十倍になる。
レベル2のニコとレベル4の吾の間には、優に百倍近い力の差がある。吾の百分の一の力しか持たない影でニコと同等になるのだ。ん。良い勝負だぞ。
「凍えよ、『吹雪』!」
「コラ!」
ニコがいきなり範囲氷属性魔法攻撃の『吹雪』を使ったので、吾は慌てて注意した。
凍りついたアジサイ達スライムに『大地の祝福』をかける。
「『吹雪』は部屋全体に影響があるから、簡単に使ってはダメなのだぞ。マスターがいたら凍えてしまうではないか」
「タロ兄様、ごめんなさい……」
泣きそうな顔のニコにフワフワモードへ戻るよう言う。
吾は黒い豆柴モードで、そっとニコに寄り添ってやった。
「間違いに気づけば良い。今後は気を付けるのだぞ」
「はい」
必要な教えだったとはいえ、ニコが落ち込んでしまったので、吾はBBQの話をして盛り上げてやった。
吾らが眠る前、鷹秋から電話があったのだ。
花火大会の日の昼にBBQもやるらしい。鷹秋、A5のお肉持ってくるかな?
「楽しみですの!」
んむ。すっかりニコの機嫌も治ったな。
(私もBBQに行きたいです!)
アジサイはスライムだから参加できないぞ。