10・モフモフわんこはフォトジェニック!
本日(11月4日)は三回更新します。
これは1/3回目です。
タロ君の写真を撮る前にネットでダンジョン情報を漁ってみたのだけれど、大家さんに教えてもらった以上のことはわからなかった。
そりゃ地元で現場のお巡りさんに聞いた情報が一番早いよね。
明日調査会社が来れば、また新しい情報が公開されるだろう。
これまでダンジョンに興味を持っていなかったから、情報がどこまで開示されて、どこから秘密にされるのかわからない。
とりあえず、あのダンジョンに二十五パーセントの確率でポーションをドロップするマッドゴーレムが生息することは知っている。
わたしが設定したからね!
ダンジョンのモンスターって生き物っていうよりダンジョンシステムの一部って感じがする。
タロ君は可愛いし意思もはっきりしてるから、ちゃんと生きてるって感じだけど。
「それではタロ君の写真を撮ります」
「ん!」
スマホを構えるわたしの前で、タロ君はカチコチに固まっている。
これはこれで可愛いので、一枚カシャリして確認。
うふふ、ぬいぐるみみたい。
「タロ君、今度は動いてみて」
「こ、こうか?」
部屋中走り回ってふんふんしていたのが幻だったかのように、タロ君はぎこちなく四肢を動かす。
これはこれで電池で動くオモチャみたいで可愛いので、何枚かカシャリ。
うちのボスモンスターはなにをしても可愛いなあ。
「マスター撮れた?」
「見てみる?」
「ん!」
ああっ! 今の跳びついて来たタロ君最高に可愛かった!
だけどカメラマンとしてのわたしの腕が足りなかった!
ぼやけた画像(ゴーストのせい? いないけど)を心の中で嘆きながら、タロ君にスマホを見せる。
「……小さいな」
「え?」
「サクラの写真はもっと大きかったのだ」
タロ君が鼻でパソコンを示す。
パソコンとスマホはディスプレイの大きさ自体違いますから。
わたしは苦笑して言った。
「この写真もパソコンに送って再生したら拡大できるよ。ちょっと待っててね」
黄金の瞳が期待でキラキラと輝いている。
わたしはスマホからメールでデータを送った。
パソコンを立ち上げてネットにつなぎ、メールを開く。
「じゃーん!」
「ん! サクラと同じ大きさなのだ!」
か、可愛い!
畳に直置きしたパソコン画面を満足そうに覗き込むタロ君を激写していたら、また少し顔色が曇る。
「マスター。サクラは首輪をしてるのだ」
「うん、そうだよ。つけるのが嫌じゃなかったら、明日タロ君の首輪買う? 首輪が嫌だったら体につけるタイプのリードでもいいよ。ごめんね、ダンジョンの外ではつないでおかないとダメなの」
「嫌じゃないのだ! 首輪! 飼い犬の証!」
そこまで喜ばれると、ちょっと驚く。
ダンジョンのボスモンスターが首輪をつけた飼い犬でいいのかな。
まあ嫌がられるより良かったよね。
首輪が体質に合わなかったときのために、リードは首輪タイプと体タイプの両方買おう。
ぬいぐるみも買ってあげたいなー。
でもタロ君の可愛さに勝てるぬいぐるみなんてないよねー。
「よその人の前では人間の食べ物をあげられないから、散歩のときのオヤツ用にジャーキーも買おうか」
「ジャーキー! 保存用に日干しした肉!」
タロ君は嬉しそうに飛び跳ねた。
……ダンジョンマザーツリー、かなりこの世界の知識あるみたいだから、もう集めなくてもいいんじゃない?
まあ次元の狭間で知識を求める樹木と戦うのもわかり合うのも無理ゲーだろうし、しばらくはダンジョン運営を頑張るしかないか。
明日来るという調査会社のみなさんがポーションをゲットして、このダンジョンは良いダンジョンだから通おう! とか思ってくれるといいんだけど。
いや、調査会社に思われるだけじゃダメか。
日本政府が、もっと調査しなくては! と思ってくれますように。
これからの生活に不安を感じつつも、わたしはそれから滅茶苦茶写真を撮った。
うちの犬はフォトジェニックですよ! チョー映えるー!
お読みいただきありがとうございました。
次回は首輪を買いに……行く前にタロ君視点です。