俺の太陽は……
「しおりちゃん!」
俺でも孝太でもなく、しおりの名を叫ぶ声が聞こえた。
倉庫へ駆け込んで来るラフなジーパン姿の女がいた。
入り口辺りで、中の様子を見て絶句する。
幸美だった。
茫然と立ち尽くしている幸美に、俺は代わりに言ってやった。
「どうしたもこうしたも全部しおりが……」
親切に説明しようとしたのを、幸美は遮った。
「何やってんの翔平?」
ひっくり返ったままの孝太は無視されたらしい。
俺はまだ目が回るのを覚えながら、ふらつく頭を押さえて立ち上がった。
「脱法ドラッグのパーティだったんだよ」
幸美の目がつりあがる。
「あんたまさか、そんなことまで!」
なぜか俺は、しおりの方を見た。
別に助けを求めるつもりはなかったのだが、笑顔だけを返され、気分は一気に沈んだ。
怒りを込めて歩み寄る幸美の足は、途中で止まった。
ジーパンの尻ポケットから携帯電話を取り出す。
警察に通報しなければならないことに気付いたらしい。
だが、その携帯電話を持つ手は、その場で高々とねじ上げられた。
床に倒れていた黒服が急に立ち上がったのだ。
しおりが、足元の男どもを踏みつけて身構える。
だが、黒服はもう一方の手でバタフライナイフをくるりと回した。
現れた刃を幸美の喉につきつける。
倉庫の外から声が聞こえた。
「よし、そこから動くな!」
しおりが振り向く。
その先には黒服がまた何人か立っていた。
数名はしおりに、また数名は幸美に向かって歩いてくる。
ひとりは俺に駆け寄るなり、側頭部に回し蹴りをくらわした。
横倒しになった俺の目の前で、幸美は両脇から羽交い絞めにされた。
携帯電話が床に落ちる。
幸美の手を掴んだ黒服が、くつくつと笑った。
ナイフの刃が、キャミソールの肩紐をさっと切る。
左肩が露になり、左胸を覆う白い下着が見えた。
身構えたまま固まったしおりを取り囲んだ黒服のひとりが、ひゅう、と口笛を吹く。
俺は床に蹴転がらされ、腹を踏みつけられた。
下着のストラップにナイフがかかる。
幸美の声が、微かに聞こえた。
「いや……」
沈んでいく夕陽の光の中で、幸美の目に涙が光るのが見えた。
ナイフの刃が、ゆっくりとストラップを持ち上げていく。
幸美がすすり泣きはじめた。
畜生共……。
だが、俺には何もできない。
なんでだか知らないが、超人的に強いしおりでさえ、どうすることも出来ないのだ。
下手に動けば、幸美の命がない。
黒服どもの下卑た笑いの中で、俺は踏みつけられた腹の痛みよりも、自分の情けなさに耐えていた。
「イヤああああ!」
幸美の悲鳴と共に、ナイフの刃が高々と突き上げられた。
白い下着がはらりと落ちる。
今まで見たことのなかった幼馴染の豊かな胸が……ケダモノどもの前に晒される。
一斉に上がる、淫らな歓喜の声。
そのとき、俺の中で何かが切れた。




