俺の軽さも太陽のせい
オフクロがオヤジの畑仕事を手伝いに戻って、家には俺と孝太の二人きりになった。
「お茶なんか出さんからな、勝手に上がりこみやがって」
「いらんから、話を聞け」
孝太がわざわざ俺の実家まで来たからには、何か訳があるのだろう。
俺は、とりあえず話だけは聞くことにした。
孝太はまず、しおりのことから切り出した。
「しばらく幸美に面倒見させろ」
しおりの保護について、誰からも、何の動きもない。
俺達にもどうにもならないのだから仕方がない。
だが、しばらくといっても限度がある。
幸美に迷惑はかけられない。
「俺に何しろっていうんだ」
「仕事を手伝え」
孝太は真顔で言ったが、どうも訳がわからない。
もう手伝ってるだろ、と言うと、孝太は身を乗り出した。
「もう一つ、稼げるバイトがあるんだよ」
「わざわざそんなこと言いに、こんなとこまで来たのか」
孝太の腕が俺の頭をロックした。
「お前、下手すりゃ死ぬところだったんだよな」
あの日の恐怖が一瞬で甦り、俺はこっくりと頷いた。
耳元で、孝太は噛み付くように言った。
「お前には、味方がいなくちゃいけないんだよ、守ってくれる味方が」
珍しいことに、孝太は真顔だった。
一音ずつ。アクセントを置いて続ける。
「そ・れ・も・大・勢」
それは、いてくれた方がありがたい。
孝太が、俺の肩に腕を回した。
「お前のガードしてくれるって奴らがいるんだよ、条件付きだけど」
条件? たしかに、身を守ってくれるというならタダでは済まないだろう。
だが、俺は何一つ持っていない、しがない無職のフリーターだ。
半信半疑で聞いてみた。
「誰だよ」
「俺のツレさ」
がっくりと力が抜けた。
ホストくずれがどれだけ集まっても知れている。
「悪いが孝太……」
「まあ、来い」
俺は孝太の軽自動車に乗せられて、家の鍵をかけなくても空巣も入らないような田舎から、そのまま街へ戻った。
我が人生の果てしない軽さ。
これも太陽のせい。