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第三十二話 戦争とは神々のゲームである

 街ではアンリが暴露した娯楽飛行船のイカサマの話題で、持ちきりだった。

 街のほとんどの人間がイカサマに憤っていた。

 そんな酒場の熱狂を楽しむ人物がいた。悪神アンリである。


 チャンスは悪神アンリを密談スペースに呼ぶ。

「おやっさん、(ひど)いでっせ。何で、こんな、先に戦争があるような悪事を企むんでっか?」


 悪神アンリは心外だとばかりに文句を垂れる。

「たまたま、だよ。たまたま。それに、文句を付けるなら、ギャモンに付けろ。やつらの娯楽飛行船が来る前から、私のカジノがあったんだ。奴らが後からやって来た」


 チャンスは心配事を打ち明けた。

「これ、賭博神ギャモンが何かクレームを付けてきませんやろうか?」


 悪神アンリは澄まし顔で教えてくれた。

「ギャモンの性格からして、ばれるようなイカサマはしたほうが悪いと考える。だが、人間の国家とは複雑怪奇だ。イカサマをしても、力尽くで誤魔化せばいいと思っている」

(やはり、これ、下手したら戦争をさせられるんとちゃうか?)


「やはり、スターニアとゲルバスタの問題になりますか」

 悪神アンリはにこにこ顔で認めた。

「なるだろうな。ならないと面白くない。理想は血ぃ沸き肉躍る戦争だ」

(あかん。これ、おやっさんは、スターニアの人間を焚き付ける気や)


「ちょっと、待ってください。何も、そこまで揉める必要もないやろう」

 悪神アンリは意地悪い笑みを浮かべる。

「ほう? ならば、どうする? 戦争より面白い解決方法が存在するのか?」


「なら、ギャモンにゲームを申し入れてください」

 悪神アンリはチャンスの提案に驚いた。

「何だと? チャンスは賭博の神に、博打で勝負を挑むのか」


「そんなたいそうな話やない。ゲルバスタとスターニアの問題をこう、双六(すごろく)のようなもので解決できないかと思いまして」


 悪神アンリが眉間に皺を寄せる。だが、すぐに晴れやかな顔をする。

「戦争の替わりに双六ねえ。いいぞ。内容によっては、俺がギャモンの奴に話を付けてやろう。どんな双六だ?」


「単純なターン制の二十一マスの双六や。サイコロを振って駒を進める。そんで、先にゴールしたほうが勝ちや」


 悪神アンリはだんだん乗り気になっていった。

「それだと、味気ない。進んだマス目に指示を書き実行してもらう」

「待った。おやっさんの提案だと、おかしな指示が来る。せやから、マス目で指定するモンスターと戦えとしてもらって、ええですか」


 悪神アンリが少々残念がる。

「まあ、少々面白みに欠けるが、いいだろう。だが、ターン製だと引き分けもあるな」

(おっと、さっそく、こっちの意図を指摘してきたね。やっぱり、おやっさんやなあ)


 賭博神を巻き込む以上は、勝つのは難しい。でも、引き分けなら持っていけるかも、との思いがチャンスにはあった。

 また、引き分けならゲルバスタの体面も立つと考えた。


「どうせ、勝負は賭けの対象になります。だったら、引き分けがあって、もええでっしゃろう。胴元が儲かる仕組みがないと、賭けにもなりづらい」


 悪神アンリは納得した。

「指摘されりゃ、そうだな。ギャモンのやつも、親の総取りみたいな仕組みは否定しない。あとは、詳しいルールはこっちで詰めてやろう」


(よし。アンリのおやっさんは、やる気になった。ゲームである以上、おやっさんはギャモンが必ず勝つゲームにはしない。またゲルバスタが負けた場合はスターニアの味方に立ってくれる)


 チャンスは密談部屋での話を誰にも言わなかった。

 だが、すぐにゲルバスタとスターニアが問題解決を戦争ではなく、双六で決めるとの噂が流れた。


 冒険者たちが興奮した顔で噂する。

「聞いたか? 国家が双六で勝負するなんて、前代未聞だぜ」

「聞いたよ。かなりの金額が動くって話だ。他の国のブック・メーカーも興味を示しているそうだ」

(世界が注目する二十一マス双六や)


 三日後、チャンスは悪神アンリに呼ばれた。

「ギャモンがチャンスの発案に乗ったぞ。さっそく、チャンスは相棒一人を決めてくれ」

「相棒って、わいの参加は決定ですか?」


 悪神アンリが怒った顔で注意する。

「当然だろう。これは、ギャモンとお前の戦いでもある。わたしは成り行き上の審判だ」

(よくもまあ、ぺらぺらと喋るわ、二つの国を戦争に導こうとしておいて)


 チャンスは言葉を飲み込む。

「わかりました。なら、相棒を探します」

できるだけ、強い冒険者を仲間に引き入れたかった。だが、一流どころは、話を持っていっても話に乗ってこなかった。


(当然か。負ければ、スターニアにおられなくなる。勝っても、ゲルバスタに恨まれる。引き分けなら両方から、石を投げられかねん)


 逆に二流どころになると名を売りたいと、売り込みに来る。

 サイコロを振って、出た目のマスのモンスターと戦うのがルール。ルールの通りなら、二流どころでは勝負にならない気がした。当事者のスターニアは騎士の斡旋(あっせん)を申し出た。


 面接すると、気位は高いが実力は一・五流冒険者クラスだったので、躊躇した。

「どないしよう? 誰を相棒にしたらええんや」


 正直に言えば、ゼルダに頼みたかった。

 だが、双六は国家の利益が懸かっている。ゼルダは冒険者ではない。


 ゼルダが動けばアウザーランドの介入になるので、頼めなかった。

 チャンスが相棒の選択に迷っていると、《幸運の尻尾亭》にゼルダが現れた。


 ゼルダが明るい顔でチャンスの横に座る。

「いい知らせを持って来たぞ」

「本当にいい知らせか?」


「アウザーランドはスターニアに肩入れすると正式に決めた。相棒には私がなってやる」

「ほんまか? それは心強い。なら、危険な仕事だけど、頼んで、ええか?」


「任せておけ。戦うのは得意だ」

 チャンスの相棒が決まると、《幸運の尻尾亭》も沸いた。

 ゲルバスタの選手も、決まった。相手はゲルバスタの元一流冒険者のマルコと、現役のエルザだった。


 ゲルバスタのマルコといえば、有名な剣士だった。元剣闘士から冒険者に転身。生涯無敗のままに去年、冒険者を引退した有名人だった。

 エルザはマルコの弟子にあたる冒険者で、こちらも、世界で広く活躍している。今回は出生地のゲルバスタたっての頼みで帰国したと報じられた。


 選手が決まると、扇情的なタイトルで勝負が宣伝される

『無敗の冒険者&豪腕美人冒険者 対 国をも焼く魔精霊&狂戦士賢姫 勝つのは、どっちだ!』


 扇情的なタイトルを見て、チャンスは気分が滅入る。

(戦いを煽りにいっておるなあ。負けたら怖いなあ)

 決戦の日は間近だった。


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