愛しきプロポーズ
「あたしと結婚して下さい」
やけにきっぱりと、満面の笑みを湛えながら少女は言った。太陽が温かい昼下がりの出来事である。蝶が舞い、小鳥が啼き、花が咲き、小川が流れた。
春である。
「……冗談はよしてください」
「なんで?」
少女の言はあっさりと切り捨てられた。
「自分の年がわかっているのですか?」
「ええ、だれよりも分かってるわ! この間めでたく十三になりました。おいわいしてちょうだい?」
「……おめでとうございます」
「ありがとう」
気のない祝いの言葉に害した様子もなく、むしろ喜んでいるくらいであった。対する者の顔は無表情のまま、気持ちこわばっているかもしれない。
「そういうことではなくて」
と、メガネの位置を直しながら、気も取り直して向かいあう。敵はまだ十三歳だ。自分が何を言ってるのかわからないのであろう。
「そうよ! そういうことじゃないの。おいわいのコトバもうれしいけど、ほしいのはそれじゃない。あたしはあなたがほしいのよ?」
「キミはこちらの年がわかっているのですか?」
「もうっ! スキな人の年くらいわかっているってるに決まってるでしょう! ナニがいいたいの?」
「年がはなれていると思うのですが」
「愛に年なんて関係ないのよ! だいたいこれくらいの歳の差で何をしりごみするの?」
「十三というのはまだ結婚できるような年じゃないし」
「予約よ予約。他のオンナにぜったい取られたくないの。結婚できるまで三年もまってられないのよ!!!」
それを聞くと小さくため息を付いて、それで少女に向かって「いいですか」と話しかけた。
「男性の結婚可能年齢の都合上、正しくはあと八年必要です」
少年は少女にのたもうたのだった。
2013/01/19 お題:でかい微笑み