5歳になりました
今回は少し長いです。
みなさんこんにちは。
私ことファーロ・ミリーは少し前に5歳になったようです。
そして今年は魔力測定の年です。
ちょっとわくわくします。
あれから私は、自分の家のことを知った。
やけに良い調度品あるなとか使用人さん結構いるなとか思ってたけど、それも当然。
私のお家は貴族の候爵家だったのです。
なんてど定番なんて笑ってもいられず、密かに始まっていたらしい淑女教育は表立って行われるようになった。
ただ、私はどうもこの家では嫌われているらしい。
薄々思うことはあった。
始まりは使用人たちの話を聞いたことからだ。
いつも通り書斎の本を読んでいた時のこと、
お嬢様ったら何を考えているのかしら?気味が悪いわ
悪魔の子だもの。仕方ないわよ。
早くお隠れになればよろしいのに。
そんなことをいって。まったく。
はじめは何のことかがわからなかった。
しかし、まったく。などと窘めながらも、皆が嫌な嗤い方をするものなので悪口であることはすぐに分かった。
その後で始まったマナーやダンス、学術では手痛い折檻をされて蔑まれる。
使用人たちも世話はしてくれるが給仕はしてくれないし、陰口はエスカレート。
もはや陰口ではない。陰でやれよ。
私を嫌っているのは使用人や講師だけではない。
躓いてうっかり母のスカートに掴まれば振り払われ、兄はそれを見て嗤い、父は私の存在を無視する。
悪魔の子って何だ!
本にも載っていないし、誰も教えてくれない。話もしてくれない。
もう嫌になるなぁ。
苦しい最後をむかえて、訳も分からず生まれてきて、そしてまた苦しむなんて。
生きるなんて地獄じゃないか。前世の家庭が夢だったのかも。
代わり映えのしない毎日が幸せって台詞が頭をよぎる。
そんな私にも癒しがある。
エマだ。
唯一彼女だけが私に優しくしてくれる。
お陰様でまだ綱渡りを続けているのだ。もちろん落ちることは生を手放すのと同類の綱渡りを。
ありがたいのかなんなのか。
あ、ついでに婚約者ができました。
お相手は公爵家の三男。名前はレミヘルト・トランジリア。
私の家は将来兄が継ぐ予定のため、通例ではどこかの長男と婚約する。
けれどミリー公爵家は最近力を伸ばしていて、権威においてこれから重要な家になる可能性が高いためトランジリア公爵家が三男に嫁がせたがった。
父はこれ幸いと婚約を承諾し、今に至る。
これから何事もなく婚姻を結ぶかは相手次第であるが、家に繋がりができることは両家にとって有益であるらしい。
ちなみに彼は家のためか私に興味があるのか、よく屋敷を訪れてくれます。
今日も…
「お嬢様、トランジリア公爵家レミヘルト様がいらしてます。」
「私、今日は体調が痛いわ」
「お嬢様、それは10日前からお使いの口実でございます。さすがにご無理があるかと」
「なら、用事ができたのでお相手をできないとでも伝えて頂戴。上手くね。」
「・・・仰せのままに」
エマは困り顔でそういい、部屋を出て行った。
私はこんな感じでかれこれ1ヶ月くらい彼を追い返しているだろうか。
はじめはしてもいない刺繍を理由に追い返していたがさすがにダメだったようで、父にお呼び出しを受けた。そのため適当な言い訳をして適当に追い返している。
本来なら彼の家より家格の低い私が追い返すなどあってはならないのだが、家などどうでもいいので断っている。
なんで会わないのか。それは彼に興味はないからだ。
私の周りにいるのはエマひとりでいい。
訳も分からず心をキズつける人間に触れあいたくないのだ。
憂鬱と不快。そして不安。
そんなわけで彼に会ったのは婚約したときの一度きり。
初めて出会った彼の目はキラキラと輝いていて、その瞳が私の心をつらぬくいつかが
なんでかとても恐ろしく感じた。
亀行進ですみません。