現実直視
まだ全然魔法要素ないです。
私は再び目が覚めた。
今度はぼやけてはいるが目が見えるようになっていた。
そういえば明けない夜は無い。かのシェイクスピアはそんな感じのことを言っててらしい。
ふと思い出しだけれど、私はその言葉を疑っている。
現状には似合っていないように思ったから。
目覚めて最初に視界に入れたのは中世ヨーロッパ風の調度品。それに女性の背中。
記憶を掘り起こしていると女性が振り返った。
「お嬢様?お目覚めですか?」
聞いた事のある声だ。
安心する声。暖かい声。
姿をぼんやりと見ると、声に合った優しそうな雰囲気の女性だ。
なぜ自分がここにいるのかはまだわからないけれど、とりあえずこの状況に流されてみようか。
「おあようごじゃいます」
・・・噛んだ!!
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。穴があったら入りたい。
羞恥にフリーズしていると女性が言葉を続ける。
「お嬢様!初めて挨拶を返されましたね!」
「・・・え?」
「エマは嬉しゅうございます!」
どうやら挨拶をしたのが初めてらしい。どうなんだそれ。
でもこのエマさんとやらは喜んでいる。
不思議だ。
「お嬢様も明日で2歳。私はお嬢様の成長を喜ばしく思います」
2歳?
この人私に向かって声をかけてるよね?2歳?
私の記憶が正しければ2歳ってことはないはずだ。
え?なにこれ?夢?
でも夢にしてはすごいはっきりしてる。
まさかのまさかでこれ、ほんとに現実?夢じゃない?
若返り?生き返り?
いやいやいや、そんなことって無い。絶対無い。
とりあえずは夢かどうか確かめる方法があったはず。
何だっけ?
痛みを感じる?そうだ、そんなかんじ。
それで痛くなかったら夢だ。
そう思って私は振り上げた。
バッチン!
「お、お嬢様?!」
振り上げた手は私の頬に勢いよくぶつかった。
おそらく手形が残るであろうくらいには。
いったい!!すさまじく痛い!
推定2歳児の力恐るべし。
っていうか最近の夢って痛いの?
いやいやこんなに痛いのに夢だとか言わないよね?!
え、じゃあ現実…?
あまりのショックに纏まらない思考のままで、
シェイクスピア。よかったな、夜はちゃんと明けたらしいぞ。
そんなことだけはしっかりと思いながら私はここが現実であると少しだけ認めたのだ。