オノヨココさん爆誕
『とりどらごん』は繁華街のど真ん中に位置している。
昼過ぎから夜にかけては幅広い年代と性別のお客さんが多い。
夜から明け方にかけては学生さんとかに人気がある。
お陰様で繁盛している。しかし今日ははずれの日。
入店した時からすでにお酒臭いおっさんのたまり場と化している。
愛想笑いを駆使し平和な接客を心がけている。
今日も通常営業の中、突如お店の外で音が流れてきた。
EDM調で世間のいうクラブミュージックというのが爆音で聞こえてきた。
「はろ~!」
そう言って入ってきたのは金髪ロングヘア超ド派手ファッションで、メイクがバッチバチの女性?が入ってきた。
「ラムちゃんは~~?」
「い、いらっしゃいませ~!」
「坊ちゃん、ごめんね~お客様じゃないの~」
坊ちゃん……。
「うるさい!消しなさい!殺すわよ!」
そう言ってラムさんが二階から駆け足で降りてきた。
「いいじゃない~」
「アンタんとこと違うの!」
ラムさんはその女性?の人のスマホを奪い取り握り潰そうとする。
でも潰れなかったので牛のように鼻息を漏らしながら音楽を止めた。
「非常識!バカ!」
ラムさんにそう言われ女性?はブリッこして不貞腐れる。
「説明するわ。満月ちゃんのいる二階に来て」
ラムさんは僕とその女性?にそう促す。
「おお~!オノヨココちゃん~~!」
「また遊びにくよ~!」
「愛してる~~!」
と常連客のおっさんグループが手を振ったり、投げキッスをしたりして騒いでいる。
知り合いなのか、と思いこの世は意外にクローバル。
「優羽!ちょっと頼むわ~!」とラムさん。
「うっそん!私一人?しょぼん」
洗い物をしていた優羽が首を伸ばしてそういう。
「優羽堪忍や。俺も前出るからちょっと辛抱してくれ!」
料理長は焼き鳥達をジュージューさせながらそういう。
「料理長ごめんなさい。すぐに終わらせるから!」とラムさん。
「料理長はお料理作っててください。あと私賄いがまだです」優羽は悲しい声でそういう。
「我慢」
「しょぼーん」
「優羽ちゃんファイト~」
常連客のおっさんがゲラゲラ笑いながら茶々を入れる。
僕たちは二階に上り満月のいる個室に行く。
満月は今回もお行儀がよく座敷に正座に待っていた。
テーブルの上にはボロボロのノートがいくつか広がっていた。
大人が数人入ってきたので満月は少し驚いている様子だった。
「は、はじめまして」と満月は立ち上がり一礼する。
「ドラァグクインをやっているオノヨココと申します。よろしくね」とオノヨココさんも丁寧にお返しする。
「朝日栄太郎と言います」
「OH!あなたがエータね!ヨロシク」
握手を求められ握手をする。
僕の手をガッチリと握り数秒は離さなかった。
手の感覚は男である。
「ドラァグクインと言ってもオカマと変わらないわ」とラムさん。
「まぁそうね」
オカマというけれど二人ともかなりデカい。
僕の身長からしても少し見上げるような形になる。
なんか強そう。
「さて手短に本題に入ろうかしら。優羽も可哀想だし」
ラムさんは満月の対面に胡坐で座る。
満月の横にオノヨココさんが座る。
流れで僕はラムさんの隣に正座で座る。




