次は、関空が行き参ります。
すぐさま店長から連絡があった。
もうすぐ到着するとのことなので急いで退院の支度を済まして満月を連れ病院のエントランスに行く。
頼んでもいないのに入院費を二人分負担してくれるようだ。
出口近くにデカい黒いイカツいワンボックスカーで迎えに来る。
運転席が不在で助手席からオノヨココさんが手を振っている。
僕たちは後部座席に座る。
「昨日はよく眠れたかしら~?」と振り向かないままオノヨココさんが気を使ってくれる。
「そこそこ眠れました」
「一晩中付きっ切りってたいへんよね。満月ちゃんは?」
「はい。眠れました」
看病している時もそうであったが満月はあからさまに元気をなくしている。
人並みに受け答えはしてくれるが自分から話をする事は無かった。
流石にこの一件で随分と疲弊している様だ。
「よく頑張ったね。また今度落ち着いたらお家で遊びましょ」
「はい」
少しだけ会話のない時間が過ぎた後、店長がどこからか車に戻ってきた。
「よーし。おまた」
早速車のエンジンを掛け、すぐさま走り出す。
車内にいたらすごくエンジンの重低音が骨まで伝わる。良く街で走っているうるさいヤツ。
「あれ」
店長はそう言ってカーナビ付近に手を伸ばす。
それを見たオノヨココさんはその手を手の甲で弾き飛ばす。
「あ、それでエータ。卒業旅行はどこ行くんだ?」
「え?」
正直にハッキリ聞こえなかったので一度聞き返した。車のせい。
「卒業旅行はどこ行くのー?」と露骨に大きな声で聞き返す。
「えーっと北海道に行こうかなって思っているんですけど」
「すてき素敵!なんでなんで?でもまだ今は寒くない?」
「あの、久しぶりに母さんに会いに行こうかなーって」
「お。まじか!」と店長が大声でいう。
「すごーい!楽しんできてね。じゃあ満月ちゃんも一緒に行くの?」
「え?」と満月は驚いた表情を見せる。そりゃそうだ。
「お前まだ満月に言ってなかったの?」
「そうっすよ。まだ頭の中で考えてただけなので」
「でも言っちゃったし行くしかないでしょ!うらやましー」
「って言いうことはどっちが近いかなー」
店長はそう言ってカーナビに手を伸ばす。
「私がやります。貴方の音楽はうるさいのでやめましょう」
あなたがいいますかと心の中でツッコむ。
「じゃあ関空に向かいますか」とオノヨココさんが言う。
「はーい」と店長が返事する。
「え、待ってください。今から行くんすか?まだ全然考えてないですけど!」
「大丈夫大丈夫。エータならだーいじょうぶ!」
「ジャスティスエータごめんね~。私たちも時間がないのよ。あなた達を送ったらまた仕事に戻らないといけないんよ。だから折角のバカンス楽しんできてね、満月ちゃんも」
「マジっすか。本当に何も考えてないんすよ」
「出発まで時間はあるっしょ。それまでに色々考えれるっしょ」
「私も行かなきゃいけないですか?」
満身創痍という言葉ぴったりであろう。今までの元気や覇気がなくなっている。
オノヨココさんが助手席から体ごとグイっとこちらに向ける。
そしてまさしく子どもに言い聞かすようにゆっくりとこういう。
「今はしんどくてつらいだろうけどでもそれでも栄太郎クンを信じてあげて、私も信じてるから。出来るなら私と満月ちゃんとで変わってあげたいけどそれが出来ないから今は彼を頼るしかないの。私も満月ちゃんを大切に思っているから。だからせめて今を楽しんできて。ね?」
最後にニコッと微笑む。
「はい」と満月もほんの少し笑顔で返事する。
オノヨココさんの言葉が響いたのだろうか。満月がほんの少しだけ元気を取り戻したように見える。
あとなんか凄く頼られているけどそれは過大評価しすぎではないだろうか。




