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一変


 遅めの昼食を終えた僕たちは今、本来の目的地へ向かう。

 グーグル先生に案内してもらう。さほど遠くない。電車を二本乗り継いだ。

 満月は移動中ほとんど寝ていた。

 駅に降り立ちしばらく道に迷うが目的地へと到着する。

 少し田舎の下町の一角のマンモスアパート。

 来る途中に大きめのスーパーとコンビニが二件ほど。

 どちらかと言えば交通量も少なくのどかである。


 間違っていない住所と表札を確認して、気分が優れぬ足取りで階段を上っていく。

 メモ丁寧に307号室とまで記されているのでポストも確認せずエレベーターも使わず上る。

 鼓動が高ぶる。気持ち悪い。

 早く帰りたい。

 307号室までの道のりが遠く感じる。

 満月は到着した時点で発言しなくなっていた。

 僕は階段を上がっている段階でボイスレコーダーの電源を入れている。

 僕にこんなことさせる店長やオノヨココさんに対する不満が募る。

 しかし到着してしまう。


 ゆっくり内木さんのインターホンを押す。

 

 ピンポーン


「……」


 ピーンポーン


「でない」


 この何起りはしない空間が邪悪である。


「いないのかな?」

 仕方ないな。今日は無駄足だったかもしれないし。

 できればもう二度と……


 ガチャ


「?」

 一瞬、何も音がしない空間で出来上がる。

「あ、あの」

「あ~。お兄さん」

「あの……」

 臆していた。体中恐怖が支配している。言葉もうまく選択できない。

「お?お兄さん誰?お嬢ちゃん?」


 家にいるのにダウンコートを着ていている。

 かなり細いシルエットで部屋にるのにサングラスをかけている。

 高身長で僕は見下げている。


「い、いえ、あの」

 アルバイト風情の僕は度胸も覚悟も勇気もなかった。出来るなら穏便に。

「あれ、でも嬢ちゃん満月だよね?おお!お帰り!探したんだよお」

 違う。

 そうじゃない。


 満月も恐怖に支配された表情で一歩下がる。

「ち、違います。あの」

 と僕が満月を庇うため否定をする。

「違うの!なんで?」

「いや、目的が」

「目的?いや君あれでしょ。道に迷ってるところを見つけてくれたんだよね?ウチの子」

「え」

「ウチの子」

「ちち違います!違います!」

「……っさっきから違いますって何なんだよ。何が違うんだよ」

 怒鳴る寸前の声でそう荒げる。

 僕の予想はあからさまに的中。教科書通り。

 想像していた通りの現実、展開。

 

「すすみません、僕は人探しを……」

「なんだよ。さっさと言えよ!」

 内木さんはわかりやすく苛立って見せた。

 僕は言う。

「……町田知樹って人を知っていますか?」

「んん?あい?なんだ、お前は!」

 内木さんは僕に対して堂々と近づく。

 完全に見下げる姿勢になって僕の頭に頭を押し付ける。


「何?ほんとに何?話終わってるだろ?ほんとムカつく。まだ俺たちから貪り続けるの?お前らなんなんだよ。あークソガキムカつくなぁ。なぁ。マジで。気持ち悪い」


 頭のネジが急に外れた様に取り乱して頭を抱えたり錯乱状態に陥る。

 内木さんが取り乱している間、満月は必死に僕の左足にしがみ付いている。

 落ち着け。耐えろ。落ち着け。

 一息あった。

 しかし、内木さんが一瞬一息ついたこのタイミングが悪かった。



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