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寝汗


 長い長い一日は日付を超えて翌日の一時前の時刻である。

 もちろん終電を超えていた。時計を見てみる。

「あー最悪……」

 タクシーで帰ろうか、それともここで泊まるべきか。

 人生とは選択の連続である……。

 因みに初めて終電を無くすを経験した。


「電車ないだろ?」

「うーん」

「ウチくる?みんな大歓迎だけど!」

 オノヨココさんの瞳はキラキラしている。


「ほらよ」

 一言だけ店長はそう言って諭吉さんを僕に渡たす。

「タクちゃんで帰れ。足りるだろ?お釣りもいいいから」

「ざっす」

 お金には微塵も困ってはいないけど少しうれしかった。


「頑張ってね!何かあったら必ず連絡してきて」

 とラムさん。

「頼むぜバイトリーダー」

「はい」

「満月、お前もちゃんと寝ろよ。アイツらが待ってるぞ」

 満月は頷き二階へ走っていく。


 こうして僕はタクシーを使い一人で自宅に帰る。

 明日お昼に満月を迎えに行く。それから……。

 本当に疲れた。


 本当に眠たい。本当に眠たいけれど、家に着くまでのタクシーで寝てやろうと思っていたけど

 やっと眠れると思っていたけど、寝れなかった。

 変な緊張というか体がおかしい。

 なんとなく吐き気のない吐き気もするし嘔吐きそうになる。


 その感覚が途絶えないまま自宅についた。

 一言でいうとやはり気持ち悪い。

 帰宅するやすぐお風呂に入り寝る準備をする。

 しかし、眠れない。気持ち悪い感覚が頭の中とお腹の中でグルグル回る。

 考え事が尽きない。養子縁組とは何なのか。

 明日、なぜ行かねばならんのか。それは必要なのか。

 本当の本気で行きたくない。嫌なことに決まってる。

 もういいじゃないか。皆再開できたんだから穏やかに行きましょうよ。

 

 色々考えていたら何故か涙が溢れてきた。

「もう、何もやりたくない……」

 布団を身に包みながら体を縮こませる。

 結局このまま頑張ってもつらい現実しかなくて。

 何かをやっても何もいいことなんてない。

 すべて諦めてしまえば楽になるのに……。



「あっつ」

 気が付くと外は明るくなっている。

 寝汗で体がベトベトになっていている。

「今何時なん……」

 とスマホを確認してみると時刻は十一時過ぎ。

「うそでしょ!」

 しまった。寝すぎた。疲れていたせいでアラームをセットし忘れた。

 気持ち悪い汗をシャワーで洗い流したいがそれは断念。


「もーふざけんなって……」

 寝すぎた自分にも腹が立つし。

 通勤……ではないが『とりどらごん』へ満月を迎えに行くのがめんどくさい。

「ワープしてウチまでこいよな」

 愚痴っても仕方ないので極力走って現場へお迎えしに行く。朝ごはんどうしよう。


 

「あれ?」

 結局食事が出来ないまま、『とりどらごん』に到着したが明かりがついていない。

 基本年中無休で営業するお店なのに。


 ガラガラと自動ドアを手動で開ける。鍵は掛けられていなかった。

「てんちょー?」

 応答がない。二階か?

 こっそり個室の襖を開けてみる。

 中には女性二人と少女がまだ眠っている。

 お母様の姿はなく恐らく帰られたのだろう。

 もしかして遅刻したのかと焦ったが満月の姿を確認して安堵する。


 しかし肝心の店長やオノヨココさん、ラムさんの姿がない。

 ある意味想像通りに寝相が悪かった神原さんを起こすしかないか。

「あさですよー」

 女性の体を触るのは気が引けるのでそっと起こすが全然反応がない。

 とまた、ちょうどいいタイミングで着信が入る。


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