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また会議

「いいわ、始めましょ。前話してたあれはシロだと思うでしょ?あなたも」

 店長は伏せたまま頷く。

「残りは二つか三つ?くらい?」

 ラムさんがそういって気を利かせお水を持ってきてくれる。

「ここからが骨が折れそうなのよねん」

「私の親愛なるパイスはここまでが限界。やっぱり実働員が必要なのよ」

「パイス?」僕と店長が同時にいう。

「スパイの事よ。アンタもふざけた言い方やめなさいって」

「どう考えても一番信用できる男の子と言えば栄太郎君しかいないのよ」

 オノヨココさんはそれを無視した。

 

 僕が議論に割って入る余地がない。僕に何をさせる気なのだ。

「そもそも必要性も見当たらないし、無駄だと思うわよ私」とラムさん。

「貴女、屈強過ぎるの。それとアタシの提案に無駄なんてないの。わかるでしょ?」

「うーん……」

 それ以上ラムさんは何も言わない。

「ここを潰すことに意味があるの。リスクしないけれど大事な仕事なの、男の子はいつか必ずやらなければならない事があるの。それが今!」

 

 僕に対して謎の緊張感が襲い掛かってくる。

 それは不安や恐怖で大半を占めているが何か一つだけ乗せられているものがある。

「栄太郎君、やってくれるよね?」

「はは、はい」

 この流れで断ったら殺されると思う。

「あなたのやることは二つ。まずはここに行くの」

 オノヨココさんは住所の書かれたメモをテーブルに置く。

「それとそこにいる住人には町田知樹を知ってますか?と尋ねる。あなたは住人の反応を伺うだけ」

「……」

 なるほど。僕の中で点と点が繋がった。

 と言っても知り合いが割れただけだ。

「うん?」

 店長が起き上がる。

「お前の友達じゃないの?同級生だろ?」

「一応は」

「一応って。しゃべった事ない系のヤツか?」

「まぁそんな感じですね」

 僕は濁した。


「お前んとこの学校進学校だったけ。真面目な連中ばっかりなのかねぇ」

 何か胸に刺さる。忘れかけていた進学出来なかった僕を呼び戻された気分だ。

「ちなみにお前はどうだったんよ、学校生活は?バイト以外の話全然しないもんなぁ?」

「僕のことはどうでもいいんすよ。町田知樹について聞けばいいんですね?」

「真面目な奴が大学滑んなよ。もっと頑張ったら行けただろう」

「僕のことはどうでもいいんすよ!」

 あからさまイラっした。

 この人はかなり無神経だし更に酔っ払いだ。こうでもしないと落ち着かない。

 一瞬、店長がむすっとした。


 この場の空気が悪くなった。

 酔っているせいか店長は拗ねている。

「あら、しゃべってもいい?」

「あ、ハイすみません」

「えーと、栄太郎君には反応を伺ってほしいの。言えばリアクションってやつね」

「それはどういう意味でやらなきゃいけないんですか?」

「言えば着火剤なの。あなたは火種、町田知樹は着火剤。住人は薪って感じかね?」

「うーん、どういうことか」

「まぁ行けばわかるわ」


「私も行きます」

 階段の二階奥から満月の声が聞こえる。

「内木さんのところですよね。私もあってちゃんとお話ししたいです」

「はぁ、貴女はどうしてそんなに真面目なの……」オノヨココさんは手で顔を覆う。

「満月、お前んところの養親だろ?本当に嫌なら無理してお前が行かなくても済むんだぞ」

 店長は釘を刺すようにそういう。

「はい、だからこそなんです」


「んー小学生にして私たちより先に大人になっちゃってるかもね」

 とオノヨココさん。

「小学校にはいってないですけどね!」

 満月は元気に軽く皮肉めいてそう放つ。

「んー笑えねぇ」


「ハイ、三千円くらいした」

 とラムさんはそう言って録音機をテーブルに置く。

「本番はインターホンを押す前からスタートね」

 ラムさんはそう言いつつ、三千円をラムさんに渡す。


「以上よ、エータ君。健闘を祈るわ」

「明日、行ってもいいですか!」

「ええ!」

 僕は驚く。満月、お前にはなぜそんなに力があるんだ。

「あ、明日か……」

「てんちょうさんここで泊まってもいいですか?」

「あいつらも帰る気なさそうだし、そっちのほうがいいかもな」

「私の毛布貸してあげるね!安心して、カビとか生えてないしきれいだから」

 とラムさん。

「ありがとうございます!」

「お前はずっと敬語なんだな、やめてもいいのに」

 と店長は呟く。


「エータ、お前ももう疲れたろ。巻き込んで悪かったな。だがお前ひとりで戦ってるわけじゃねぇし苦労かけるかもしれんがもう少し付き合ってくれ」



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