クールビューティ
気がつけば時刻は十一時過ぎ。『とりごらごん』に到着する。
終電がなくなることだけ阻止したい。後、超絶眠たい。
ウイーン
お店に入るやすぐに店長が飛び込んでくる。
「おお、待ってたぜ~~~」
想定以上の仕上がり様。
気が付けばこの時刻で店にいるのは初めでだ。
お客さんは少なくいつもの活気は収束しマッタリしている。
味わったことのない雰囲気で匂いや空気感それとなく初めての感覚だ。
やかましい店長とは別に見覚えのある女性三人組のがこちらを覗かせている。
「あ~~!栄太郎君!」
と人一倍うるさいのが神原さんだ。
ビールを片手にその反対の手で思いっきり手を振る。
かなりベロベロだ。
そのお隣にはおそらく真波さんという人。
帰り際『太陽と子どもの家』怒号を響かせた人だと思う。
近くで見るととてもきれいな人。店長と同い年くらいか。
黒髪ショートでクールビューティ的な。
向かいには神原さんより年上の女性。
「えーところに来た!エータロウ!」
「はい」
「すぐ!」
「何がですか」
店長はニタニタしている。
周りにお客さんがいるというのにお構いなしの店長。鬱陶しい。
とはいえ神原さんたちとカウンター席に常連のおじさんしかいないけれど。
このおじさんは料理長との古い付き合いだそうだからもう慣れているのだろうか。
「まっだかな!まだ~かな~!」
神原さんはテンションが高い。
大人しければモテそうなのに非常にもったいない。
「涼子。あんた飲みすぎやで!」
「ええやん!ママも満月ちゃんに会えるんやで!久しぶりやしもーうれしーてうれしーて」
「ちっとはおちつきーな……」
向かいにいるのは神原さんのお母様みたい。
「あー言いよった」
「なるほど、満月が来るんですか!?」
店長の機嫌が少し悪くなった。
サプライズを企んでいた模様。気持ち悪いけど許してやろう。
「ということはあの人が?」
店長は黙って首をウンウンと縦に二回振る。
と空気を読んだかのようにタイミングはバッチリ。
あの人は空気感も支配している様だ。
大爆音でド派手なクラブミュージックな音楽が徐々に響かせる。
あえてもう一度伝えるが時刻は深夜12時に差し掛かろうとしている。




