バッドタイミング
最寄りのホームから改札に入り電車を待っているところだ。
「もしもし」
「おーお疲れさん。よう頑張った。いい子いい子してあげようー」
「結構です」
店長気持ち悪い。不気味である。
「ま、色々振り回してごめんな。おかげでこっちも諸々収穫あったし、店はお前がいなくても何とか回ったよ」
皮肉にように聞こえるが触れないでおく。
「ご苦労であった!素晴らしい!」
この人、気持ち悪すぎる。
「な、な、疲れたろー?疲れたろー?」
「何が言いたいんすか」
「ん~飯奢ってやるからよ~お店おいでよ~」
裏に何かあるな、これは。
「気持ち悪いんす。あとそんなにお腹すいてないです」
無意識でお菓子を啄んでいたのでお腹いっぱいだ。
「親切を気持ち悪いとか言ったな!怒るぞぉ」
恐らくこの人は出来上がっているので多少おディスしても無傷であろう。
「いいから来いって!サービスしてやるからよ!」
店長はよくビールを勝手に飲んでるし、たまにお客さんに払わわせて飲んでるし。
少々やり過ぎなところが御座いますぞ、店長。
「早く来いよ~早く早くぅ」
酔っ払いとわかれば俄然行きたくない。
「あ~も~あかん!はよ来い!十、九、八……」
果てには親が子どもに言いそうなことを言い出した。
店長のわがままであろうが収拾が収まらそうなので行くことにした。
「あー、わかりましたよ。三十分とか一時間とかは時間かかりますからね」
「さっすがエータ!大人になったね~もうお前ハタチでいいんじゃね?」
「十八です。では」
無慈悲に電源を切って差し上げる。
これから家に帰って養子縁組について少し勉強しようと思っていたがそう上手くいかなかった。
この時世、世の中上手くいかないことが多すぎて。何もかも逃げ出したい時が多々ある。
「はぁ~~」
人に聞こえそうなくらい大きなため息をつく。
このまま電車を待ち『とりどらごん』へ向かう。




