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先輩いじめ

「着いたぜ!」

「着つつつついたの」

 寒さのあまり顎がずっとガタガタしている。

「HAHAHA!その上着じゃ寒すぎるね。ごめんね!」

「やばすぎるでしょ!」

 僕は声を荒げる。

「いやぁエータさんがおもしろすぎるのもんで三十分延長しちゃった」

「ふふふふふざけ」

「ジュース奢るから勘弁してちょ!あ、あったかいほうがいいかな?」

 優羽のニタニタが止まらない。

「三本だ!!コーンポタージュ三本だからな!」

「え~?」

 僕の知るかわいい後輩っぷりがどこかに消えてしまったようだ。

 もはや僕を弄ぶ小悪魔っぷりだ。

 

 で、ここはどこなのだ。

 周りは住宅街。

 とりあえず優羽は自販機まで案内してくれた。

 そして冗談で言ったはずなのに本当に三本奢ってくれた。

 いや、むしろいらない。

 凍え切った体にポタージュを流し込もうと思っていたのに三本となると両手が塞がる。

 結局到着までは飲めなかった。

 優羽はわざと僕が両手を塞がるように仕掛けていた。

 そして笑いを必死に堪えようとして変な声が漏れているがついにキャパオーバーしてしまったようだ。

「ンフフ……んっハッハハ!!」

 大爆笑の域である。

「でここはどこなんすか。優羽さん」

 顎のガクガクはまだ収まっていない。

「な……なんで敬語なんですか!おもしろすぎっ!ハッハハ!」

 腹を抱えて笑うってこういうことか。

 めちゃくちゃ馬鹿にされている気がするけれど。

 それと何故かヘルメットを脱がない優羽。

 よほど髪の毛を気にしているのだろうか。

 

「んでここどこよ?」

「はーおもろ。今日イチ笑ったな。家だよ!私の家っすー」

 優羽はとても楽しそうにいまだに笑っている。

 僕が年上で先輩であることを忘れているようだ。

 僕は気にしない人間だからいいけど!


 自販機から一分ほど歩き、着いたのは少し他と比ると少々上等なお宅。

 たまーにパーティーとかやっていそうな立派なお家だ。

「へー。お嬢様なの?」

「そんなことないっすよー。パパがちょっと稼いでるくらいかな」

「ふーん」

 ちょっと。という表現がふさわしくないだろうが一般人ならば羨むほどのお家だ。

 ついでに女の子のお家に上がるのも初めてだし、これから何をするのかも聞かされていない。

 様々な緊張と不安は常に隣り合わせである。


「あー楽しかったー」

「本当に楽しそうだったな!」

 皮肉めいていう。せめて上着くらいは用意してほしかった。

「フフフ。みんな来てるかな?」

 漸く女の子らしい笑い方に戻っている。やはり人格が変わっていたようだ。

 あ、思い出した。皆で作戦会議しようって言っていたような。

 玄関を通してもらい二階に案内してもらう。


「入ってて~私の部屋」

 と言って優羽は一回に戻ろうとする。

 やけにドキドキする。この胸の鼓動な何なのだろうか……。

 いや、その前に……。


「入れん」

 ポタージュで塞がった両手を示す。

「フフッ。仕方ないな~」

 また笑いを堪えきれず、漏れてしまっている。


 優羽が僕の目の前に入り、襖を開ける。

 この謎の緊張感。鼓動は高鳴る。

 目の前が真っ白に輝く。

 キラキラと光る眼前には女の子の部屋が待ち構えている。

 男子たるもの多少の夢を持っている。

 女の子の部屋とはフロンティア。すなわち理想郷。

 未知の樹海。それは男のロマン。

 わくわくの冒険……僕の旅が始まる……。


 その眩しさに目がだんだん慣れてくる。

 真っ暗な廊下を歩かされたので仕方ない。

 しかしここで疑問点に気づいておくべきだった。

 何故部屋が明るかったのか?

 答えはすぐわかる。

 

 目が慣れた僕は刮目する。

 そこには爆睡している女の子が一人。

 スマホを眺めてダラダラおしゃべりしている女の子が二人。

 ちゃぶ台みたいなテーブルにはバヤリー〇オレンジ。散乱しているお菓子たち。

 ベットの上には帽子を被ったままマンガを読んでいる男が一人。

 パッと見四人くらいは確認できた。


 僕は心の中で思う。

「なんだこれ」


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