たまったもんじゃない!
「当時、この施設は腐敗していた。さっき言っていた嫌がらせをする職員とか業務放棄をする職員とか結構いたのね。一歩間違えればニュースになりそうなこともあったり、内部的な虐待も幾つか確認できた」
「大変だった。そしてその極めつけは当時の施設長。証拠隠滅を図り、結果的にその事実をもみ消した。あなたのおっしゃる通り私たちはなす術がなかった」
「……」
「あの少年については疑う余地もなく我々も部外者だと感じていたのだけれど」
「何かあったんですか」
「そもそも施設内の人にまともな人がいなかった。そういう言い方は悪いかもだけど」
「うん……」
「うーん。言い方の問題かな。そんな事はどうでもいいや。もっと大切なのは私たちには守らなきゃいけない子どもたちがいるという事」
「この子たちは皆味方であって大切な家族。裏切ったりなんてできない。私は一人じゃないしね、そりゃ最初はやる気なかった職員もいたり、ただ何も言わずに辞めていく人、とか色々あっけども何だかんだ上手くやれてるわ。優秀な職員たちのお陰ね」
神原さんはニッコリ笑う。
「それでそれで施設長を追い出すまでは時間はかからなかった。ヤツもずる賢くてどこかで身の危険を感づいたのか早々と雲隠れ。逆にあっぱれだわ」
「大変だったんですね……」
「まだまだよ。運営費とか大切なお金を持っていきやがったからね。でもヤツがいなくなったのは好都合ね。全くゼロからのスタートだけど残った職員で寝る間を惜しみながら新体制を模索したわ。私たちは何の為にここで働いてるのか。それらは私たちを再認識させてくれた」
「……」
「でも私は一つ妥協をしてしまった。いなくなった子を探すことより今いる子たちを守ることだけを考えてきた。あの時も必死に探していれば手がかりも掴めたかもしれないのに」
「それからの私たちの会議の中でようやく盲点だった存在に気付く。それがボランティアの存在ね」
「外部からの侵入を容易に許してしまい、彼らの情報工作なんて他愛もないでしょう。決めつける根拠も無いけど」
「むぅ……」
「何の為にそんな事をするのか分からないけど、ソイツらがやったことは許せるものでは無い……結局は何もかも謎なんだけど。全く変なヤツとか悪いヤツが多過ぎてたまったもんじゃないわ!」
神原さんはそう言った後腕を組み俯く。
「ンッフフフフ」
表情が分からないけどいかにも悪そうな、悪の大将みたいな雰囲気。
不敵な笑みを浮かべている……。
「やられたらやり返すんだぜ」




