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皆、目が死んでいるから、強くなりたい


「その子のことを詳しく教えてくれないかしら」

 オノヨココさんはにっこり微笑みながら満月をなでなでする。

 またこの人もとてつもなく謎めいている。

 魅惑的なオーラを醸し出し、見た目もそうだがとても女性らしい。

 ヘタをすると普通の女性の方々より女性らしいかもしれない。

 オカマという世界はとても未知数に感じた。


「その、強くなりたくて」

 圧迫面接と言えそうなくらいプレッシャーが存在している。

 

「聞いたわ。力になれるかもしれない」

「なんでそう思うの?なんで強くなりたいの?」

 すごい角度で話を切り込んでいく。

「……一人で生きてくためです!」

「そう。一人で生きて行くためね。でも一人じゃ生きていけない。それはわかるかしら」

「はい、でも一人で生きて行くと決めたんです」

「そう、強いのね。オカマはもっと強いけどね!」

「そうそう、オカマは強しよ」とラムさんがいう。

「強いんですか?私」

「十分強いわ。私ね、もっとあなたのことが知りたいの。だからまずはお友達にならない?」

「は、はい……」

 「あなたが困っていることつらいことを私に教えてくれないかしら。必ず力になって見せるわ」

 この人本当にすごい人かもしれない。何者なのだ。


「……元々私は捨て子だったんです」満月は躊躇いながらそういう。

 だから両親がいないのか。

「うんうん」

「生まれた時からずっと一人だった。皆で生活していた時も結局は一人でした。皆一人」

「うん」

「皆、目が死んでいるんです。私たちも大人たちも。だから私だけでも強くならなくちゃ」

「そう、つらい思いをしてきたのね……」

「新しいお兄さんとお姉さんの所に」

「ううん。もういいわ」

 再び、オノヨココさんは首を振る。

 そして、全身で包み込むように満月を抱きしめる。

「とても辛かったんでしょう。よく頑張ったわね」

 

 圧倒された。僕も、満月も。

 その表情は呆気にとられている。

「まず、知り合いにねすごい人がいるの。空手をやっていて今師範をしているわ。オカマなんだけど」

 また、オカマですか。


 オノヨココさんは満月の両肩を掴んで正面で向き合う。

「拳法やりたいんでしょ?十分力になれるわ」

「ホントですか!」満月は眩い笑顔を見せる。

「おお!」

「コさんはまだまだすごいのよ」とラムさん。

「コさん?」

「あ、私の名前はね一応オノヨコ・コて言うのよ。コさんと呼ぶのはラムちゃんくらいだけど」

「そうなんすね……」

「ではジャスティスエータ。あなた達側のお話をお願いしてもいい?」

 ジャスティスエータとは……。

 一瞬疑問に思うが、僕は先ほど料理長たちと話した会話などわかりやすく伝えた。



「なるほど、養子縁組ね。少しややこしくなりそう」

「コさんでもてこずりそうなの?」

「そうね。必ず何とかしてあげるから。ていうかラムちゃんの店長さんは中々素敵ね」

「とても変な人だけどね」

「わかったわ。アナタたちも仕事戻ったほうがいいんじゃない?」

 そういってコさんは立ち上がる。

「忙しいところにありがとう。満月ちゃんを頼むわ」

 ラムさんはコさんと握手する。

「どういう事ですか?」

「コさんのお店に預けて貰うわ。安心してエータ。ここより何倍も安全だし、私たちは何十年の仲だから!」

「と言う訳でよろしくね。満月ちゃん」

「はい!」


 満月はとてもうれしそうだ。

 満月の笑顔を見て安堵できた。

 たぶんこのオノヨココさんは大丈夫だと思う。

 何とかなりそうな気持ちになって何となくワクワクしてきた。

 しかし、束の間の安堵も長くはもたないのである。





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