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第26話 溟海の探索者 第3節 眠れる龍の神殿 エピローグ B面

 エピローグ B面


 揺木総合病院、正面玄関。ガラスの扉の内側から、辰真は明るい日射しの中へと一歩を踏み出した。少し遅れて月美も続く。荷物を抱えた2人は、今日でめでたく退院を果たした所だった。

「いやー、お互い無事に退院できて良かったですね!」

「まあな、一時はどうなることかと思ったが」


 2人が魔境付近で保護され、病院送りになってから1週間。2人とも当初はかなり衰弱していたが、治療の甲斐あって体力はみるみる回復し、特に後遺症も見られなかったため、退院の許可が出るまでさほど時間はかからなかった。そして月美は、憑き物が落ちたように溌剌さを取り戻していた。

「さあ、早くまた事件の調査に行きたいですね!遅れを取り戻さないと」

「待て待て、しばらく無理するなって先生が言ってただろ」


 警察・消防による捜索隊を率いて2人を発見した城崎教授は、彼らが無事に退院できたことを涙ながらに喜んでいた。教授によると、辰真達のような経験をして無事に帰還し、後遺症もなく社会復帰できたというのは奇跡的な幸運らしい。今は彼らの持っていた古書などのアイテムを回収し、解析を初めているようだが、本格的な調査・聞き取りは2人が完全に回復し、精神的にも支障がないと判断された後、つまりはもう少し後のことになりそうだった。実際今の2人は、例の探索の重要な部分の記憶が曖昧になっている。もっとも、もしそれを鮮明に思い出していたら、長期入院は避けられなかったらしいのだが。


 辰真が辛うじて覚えているのは、最後に神殿の最奥から、何らかの理由で逃げ出したという事だった。2人で神殿入り口まで逃げたが、階段の辺りで力尽き、おそらくは赤い羽根の力で異世界から帰還し、捜索隊に助けられた。メリアがくれたお守り、ココムの繭玉、ゾグラスの棘、そしてトバリの尾羽。2人が帰還できたのは、今までの経験で培った揺木の仲間の見えない助力のおかげとしか言いようがなかった。そして。辰真は朗らかに微笑む月美の横顔を眺める。こうして再び月美の笑顔を見ることができるのが、辰真には何より嬉しかった。


「さあ森島くん、夏休みはまだ残ってますよ!荷物を置いたら、新しい事件の情報がないか早速皆さんに聞きに行きましょう!」

「分かったから、ちょっと待てって」

 月美は軽やかな足取りで走り出し、辰真は後を追いかける。



 ……



 こうして2人は、溟海を巡る冒険からひとまずは無事に帰還することができた。だがこの出来事は、後に発生する揺木市全体を揺るがす事件の序章に過ぎなかったのである。


 27話に続く


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