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第15話 飛ばし穴のツチノコ 3/4

~次元遁蛇ハリノコ登場~


「またか……」

 ツチノコ捕獲作戦を再開してまもなく、辰真はまたしても落とし穴、もとい飛ばし穴に嵌まっていた。新説のおかげで怪奇現象の理解自体はできたものの、捕獲が楽になったわけではないし穴の位置も分からないままだ。月美と米澤はツチノコに誘導されて相次いで落ちていき、辰真は片腕を畳の縁に引っかけてぶら下がっている状態だ。この体勢では這い上がれないのでどの道落ちるしかない。力を抜こうかと思っていた矢先、突然誰かに腕を掴まれたかと思うと引っ張り上げられた。助けてくれたのは里中主将だった。

「大丈夫ですか?」

「ああ、助かった」

 辰真が立ち上がろうとすると、すかさず主将から声がかかる。

「そこ、真後ろに穴がありますから注意してください」

「え?」

 試しに右手を畳に伸ばすと、確かにそこに穴が開く。

「本当だ、助かった……って、何で分かるんだ?」

 里中主将は真面目な表情で答える。

「気を、感じますから」

「気?」

「ええ。合気道とは周囲の「気」を察知し、自らの気と和合させる技術。これだけ気が満ちていれば感知するのも容易です」

「はあ、なるほど。って、じゃあ何で自分で道場を調べないんだ?」

「私、ヘビが苦手なので」

「そうか……」

「ちょっと待ったっ!」

 辰真と主将が話していると突然ガラッと襖が開き、米澤が道場に入って来た。後ろには月美もいる。

「今の話、実に興味深い。もう一度詳しく聞かせてもらえないかね?」


「気、すなわちオーラ……そうか、またしてもひらめいたぞっ!」

 里中から話を聞くなり、米澤は再び叫ぶと背負っていた巨大なリュックを下ろし、中を漁り始めた。

「今度は一体?」

「これだよ!これを忘れてたなんて僕としたことが迂闊だった!」

 そう言いながら米澤が取り出したのは、二本の金属製の棒だった。どちらもまったく同じ形で、握れるほどの太さの棒の先端に針金のような細長い棒が接続されている。細長い棒は根本付近でコイルのように螺旋を描いた後まっすぐ伸び、その先端は少し太くなっていた。

「何ですかそれ?」

 辰真には見当もつかない物体だったが、月美には思い当たる節があったらしい。

「そ、それはひょっとして、ダウジングロッドですか?」

「そう。これぞ米澤七つ道具が一つ、オーラメーターだ!」

「おおー!」

「そのオーラメーターとは、いかなる機能があるのですか?」

 里中もそれに興味を持ったらしく口を挟んでくる。

「うむ。諸君もダウジングという言葉は知っているだろう。棒や振り子を使って地下の水脈や財宝を探知するという手法で、何千年もの歴史を持っている。このオーラメーターは、20世紀最高のダウザーと呼ばれるヴァーン・L・キャメロンが発明したダウジングロッドなのだよ」

「あ、あのキャメロンが作ったんですか!?」

「森島さん、その人って有名なんですか?」

「さあ」

「キャメロンはその生涯の間に100を超えるダウジング機器を発明したが、その最高傑作と言われているのがこのオーラメーターだ。ダウジングロッドは地中に眠る物体から放射されるオーラを感知する機能を持つ。オーラとはすなわち、東洋思想で言うところの「気」に他ならない。とすれば、里中君が話していた「気」をこいつで探知することができるはずだ」

「なるほど、さっすが米さんですね!」

「いや、本当にその棒にそんな機能があるんですか?」

「安心したまえ、これは本場アメリカの純正品だ。ほら、君たちにもスペアを貸してあげよう。一緒にツチノコどもの巣穴を暴き立てようではないか」


 オーラメーターを手にした3人は探索を再開する。オーラメーターの使い方は非常に単純だった。近くに気、またはオーラを放つ箇所があると、棒の細長い部分がそちらに向かって大きく振れ、近付くにつれ反応が大きくなっていく。そして、その効果も米澤が保証したとおりだった。

「稲川ストップ、そこに穴がある」

「はいっ!」

 辰真が指さした先に月美が虫取り網を差し込むと、その部分に穴が開く。網で穴の中を探ってみるが、ツチノコの姿は見当たらなかった。

「ここにもツチノコはいませんね。でも、だいぶ埋まってきましたよ」

 月美は手帳を取り出し、忙しそうに何やら書き込んでいく。手帳には一面に武道場の地図が作成されており、あちこちに飛ばし穴を示す〇マークが記されている。既に道場の半分以上は2人が調査済みで、今までとは比べ物にならないほど順調だったが、どの穴にもツチノコは確認できなかった。一方オーラメーターを供給した立役者の米澤はというと_

「ふう、帰ったぞ。今回も失敗だった。では次はこの穴、行くぞお!」

 ……こんな調子で飛ばし穴に一つずつ飛び込んでは落下し、裏山から戻ってくるという謎のプロセスを繰り返している。まあ放っておこう。


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