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第37話 アベレスティアルの逆襲 2/4

 ステージを通り過ぎて広場の反対側へと向かうと、揺木の色々な市民団体が出店しているエリアが見えてきた。その中でも一際目立つのが、エリアの中央に静かに停車するオレンジ色の消防車両、クリッターの姿だ。

「ようお前ら、元気か?」

「高見さん、袋田さん!お疲れ様です。特災消防隊も参加してたんですね」

「この前の防災訓練じゃ、ペトロス騒ぎのせいで見学会が中止になっちゃったからね。今回が初の一般公開さ」

「他の隊員は来てるんですか?」

「司令も含めて全員いるから、いつでも出動可能だぜ。みんな揺大祭を見に行ってるけどな。俺も久しぶりに来たけど、昔と比べて進化したよなー」

「そういえば高見君は揺大OBなんだっけ」

「ああ。俺の学生時代にミスター揺大コンテストがあれば、無双間違いなしだったのに。惜しいぜ」

「高見さんは何のサークルだったんですか?テニスとか?」

「いや、陸上」

「「あー」」

「何だよお前ら、その微妙な反応は」


 隊員達に別れを告げ、クリッターの後方へと進むと、今度は絵馬や御守りが並んだブースが見えてきた。どうやら角見神社も揺大祭に出店しているらしい。その証拠に、店番をしていたのは辰真達には見覚えのある巫女服の少女だった。

「蘇良ちゃん、お久しぶりです!」

「あら?お二人も参加されてたんですね。その後お体の方はいかがです?もう一回お祓いしときますか?」

「いや、お祓いはもういいよ。何を売ってるんだ!」

「はい!お正月に数量限定で販売した御守りを、揺大祭限定で再販してますよ!3個セットなら更に割引になります」

「え、本当に?」

「稲川、乗せられるな」

 まだ高校生なのに、相変わらず商売っ気の強い娘である。

「そういえば、蘇良ちゃんも今年受験じゃなかったでしたっけ?」

「そうです。第一志望はここですよ。揺木大学に入れたら、是非ともYRKに入りたいと思ってます」

「それはいいですね!私たちも応援してますよ」

 相変わらず変人ばかりを引き寄せるYRKだが、存続の危機はひとまず回避されたかもしれない。

「それなら、後でYRKの部屋に伺いますね。白麦先輩にご挨拶しないと」

「いや、今日は用事があるとかで揺大祭にも来てないんだよ」

「そうなんですか?昨日は当社に来てましたけど」

「角見神社に?」

「はい。急に倉庫を見せて欲しいと言われまして。お得意様なので無償でお通ししましたが、熱心に何かを探していたようです」

「ふーん」

 米さんに連絡した後、角見神社を訪れていた?玲は一体、何を考えているんだろうか。


 市民出店ブースの更に奥、第一校舎の外れあたりに差し掛かると、またしても見覚えのある光景が見えてきた。三角形のテントの周囲を群衆が取り巻いている。ミスコンにも負けていない人気っぷりだが、どうやらここでシェセンが占いをやっているようだ。

「相変わらず凄い人気だな」

「そりゃそうですよ。いつもはどこでやってるか分からないシェセンさんの占いが、今だけ常設ですもん。揺大祭で一番人気かもしれませんよ」

「こないだ世話になったお礼をしようと思ったが、こりゃ難しいかもな」

 辰真達がそう言って立ち去ろうとした時、テントの方から1人の人影が歩み寄って来る。


「やあ君達、久しぶりだね」

「え、ドクター?」

 愛想よく挨拶してきたのは、ドクター・ソルニアスだった。穏やかな老紳士といった外観だが、その正体はARAの大物研究者であり、辰真達も城崎教授もやや胡散臭さを感じる所がある。

「お久しぶりです。講演会に参加していただけるって米さんに聞きましたよ。最近は日本にいらっしゃるんですか?」

「ああ、少し気になる事があってユラギにステイしているよ。市内を散策していたら、貴方のファンだと言われてホウジロウに勧誘されてね。彼はなかなかユニークな男だ」

「それは、俺達もそう思います……今日は揺大祭の観光ですか?」

「イクザクトリー。明日は忙しくなるから、今日のうちに見ておこうと思ってね。ミス・シェセンにも挨拶してきた所さ」

「シェセンさんとお知り合いなんですか?」

「当然さ。我々アベランティクス(異次元科学)業界でも、未来予測技術としてアストロロジー(占星術)を重視している。そして彼女の技術は世界でもトップクラスと言える。まさか彼女もユラギにロングステイしてるとは思わなかったがね」

 本人はアベラント事件との相性は悪いと言っていたものの、やはりシェセンの力は業界でも世界クラスに有名らしい。


「ところで君達は元気かね?聞く所によると、最近もミクロの世界を探索したり、異次元魚類ナルペトと邂逅したりと、なかなかにエンジョイしてるそうじゃあないか」

「あはは……よ、よくご存知で」

 相変わらず、ARAの情報網の広さは底知れない。城崎教授の手は借りていない筈なのに、どこから情報を集めているのか。

「もう一つ聞きたいんだが、君達はこのキャンパス内で何かを感じなかったか?」

「え?いや、特には……稲川は?」

「わたしも感じなかったですけど、何かというのはアベラント関係の事ですよね……?」

「ユラギのベテランである君達が感じなかったのなら、私の勘違いかもしれないな。だが、アベレスティアルの気配には常に用心しておくことだ」

「アベレスティアル?」

「Aberrant Terrestrial、すなわち異次元生命の総称だよ。更に縮めてATと呼ぶ事もある。覚えておきたまえ、では失礼するよ」


 最後に教授らしく豆知識を披露して、そのままドクターは立ち去った。その場に残された2人は顔を見合わせる。

「やっぱり俺、あの人苦手だな」

「わたしもちょっと苦手ですけど、意外といい人なのかもしれませんよ。それより最後に言ってたのはどういう事なんでしょうね?揺大祭でアベラント事件が起きるって予言でしょうか」

「ATがどうこうとかも言ってたけど、俺たちを脅かしてるだけな気もするな」

 辰真達が話しながら歩き続け、広場から屋台の立ち並ぶ通りに戻ろうとした、その時だった。彼らの後方、第三校舎や体育館へと続く道の奥で、突然轟音が鳴り響いたのである。


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