魔国合コン?
『自己紹介ターイム!』とやらをやろう、という事になった。いきいきとした金髪君に手をにぎられ、はて?この世界で合コンとは?となっていたらば、
いつのまにか、魔王様に背後をとられ両腕で囲う様に抱き込まれていた。
「・・・っぅ、も申し訳ございません。」
ふと下を見ると、白皙の美少年が、魔王様に手をはたかれ、その勢いのまま床に激突していた。
アニメか漫画だったら、ぷしゅぅう~、って残念なカンジだろう。
これが、4対1の『合コン』の始まりの合図だった。
まぁ『異種族合コン』かどうかはさて置き、自己紹介しましょう、となった訳よね?。
いきいきとした金髪君が、エリ様はこちらへ、と一人かけのソファーへ促され、向かい側の長いすの真ん中に魔王様、左に茶髪、右に銀髪、その横に一人掛けソファーを足して金髪君。4人ともなぜかお行儀よく、膝をとじて、その上に両手をのせているので、『合コン』というより『面接』。
なに、この不思議空間。
つか魔王様、執事とお行儀よく並んで座って、それでいいのですか・・・。
小柄な(魔王様比)三つ子の真ん中で、大きな体を縮こませ、ジッと自分の順番を待っている。
となりで茶髪君が、「いたっ、っま、魔王様~角があたります~。」と嫌がられている。
銀髪君が、魔王様の尻尾を握って「収納・・・」とつぶやいている。
金髪君が、「まずは我ら三兄弟からですねー、次がエリ様で、魔王様最後でいいですよね?」
「いえいえ最後でいいですよ」というと「そうですか?恥ずかしがり屋さんですね」と金髪。
いやそうじゃなく・・・・、魔王様最後って・・・。
魔王様ないがしろか?って恐れてたら「じゃあ、我ら、魔王様、エリ様ですね?」と仕切られた。
・・・おまえら魔王様が恐ろしいんではなかったのかい?
ついさっきまで、魔王様怖い恐ろしい、ははぁぁあ~って土下座してもいいくらいの雰囲気だったのに、『自己紹介タイム』ってなってから、なんだか問答無用に無礼講状態が出来上がっている。
まるで会社の忘年会、どんなに上司が「今日は無礼講だぞー」と言ったとしても、本気で無礼を働いては、翌日の勤務は辛いのであるゾ?。そんなの社会の常識だ。大丈夫か?おまえら。
仕切り屋金髪が立ち上がった。
「我ら似たようなモンだから、まとめてやってしまいますね。まず、銀色の毛がヴェリル、茶色の毛がヴェリーチェ。そして私がヴェリエと申します。魔王城で執事をやっております。種族は餓鬼、産まれは『ヴェーヌの木』の下で、たぶん200歳くらいになります。」
「っそ、そうなんですね・・・。」
さっき魔王様が「ヴェ」って呼んでたのは三人の総称なの?
種族が餓鬼で、200歳って、見た目は中・高校生くらいなのに・・・。
でも餓鬼って言えば、前世では餓えて死んだ子供がなる鬼って覚えてるんだけども、どうなのかしら?
「・・・あの、餓鬼?という種族の特徴など教えてもらえますか?」
「あー、そうですよね。我々餓鬼は、魔国で一番、数多く産まれます。そこらへんでポッコポコ産まれます。それぞれの固体で能力に差はありますが、魔国最弱種ですので、ほかの強い種に食べられてしまうのが一般的です。」
金髪君、ニコニコと、強いヤツに食べられるのがデフォでーす、と言っているが、不憫すぐる・・・。
哀れな顔をしてしまったのか、金髪君があわてて訂正してきた。
「大丈夫ですエリ様!我らは変種で、種族中最強なのです。そのあたりの種族にも負けません!」
「・・・そうですか。安心しました。」
胸を張る金髪君と、うんうんと頷く兄弟。安心しましたと言う以外になんと言えよう。
「あの・・・、すごーく食いしん坊だったりします?」
恐る恐る、一番気になることを聞いてみる。
すると、金髪君と茶髪君が、ほんのり赤くなって
「先ほどの事ですね・・・。申し訳ありません、食材と勘違いしまして。我らは決して食い意地のはった種族ではありません・・・が、ヴェリルだけは例外で、食い気ばかりで・・・・、そのぉ、先程からご不快ですよね?」
「・・・。」
そう、食べちゃダメ!と魔王様が注意しても、銀髪のヴェリル君だけは熱い視線が止まらないのですよ!
「・・・だって、エリ様・・・・良いにおい・・・。」
「・・・。」
ヴェリール君の口から、タリッと涎がたれた!!!!!
ヒッと身をすくませたら、魔王様が左手でヴェリール君の頭をガシッと掴んだ!
「食うのも、舐めるのも、嗅ぐのも禁止だ、よいな。」
「・・・・はぃ。」
ヴェリール君は蒼白で頷いた。