攫われる記憶持ち
「おまえが、王を作る者か?」
と聞かれて、その後の展開を恐れて『yes』といったので、誘拐されました。
現在、誘拐犯の『たぶん魔王』の小脇にかかえられ、手足をブラブラさせながら空中移動しています。わー、町並みがおもちゃの様ですねっ(遠い目)。
というかね『たぶん魔王』の腕が胃のあたりにあるので、とても苦しいです。ちょっと、中身出そうです、出したら怒られるかな?
と、『たぶん魔王』の顔をチラリと見たら、目があいました。
「おまえの魂の色は、おもしろい。なぜだ?」
魂の色!?
魔王ってそんなの見えるんだ!つか色ついてるんだねぇと驚きと関心していたら、顔にでたのか、「魔人でも人間でも、なかなか見た事がない色だ。」って!
ほぅほぅ、魔人にもない、とそれはそうかもしれません。
「私は、記憶をもって転生した者なんです。」
私をお腹に宿したお母様が、神殿へ安産祈願へ行くと徳の高い神官様が、
『その腹の子は前世の記憶持ちである、記憶持ちは我々の生活をよりよく導くであろう』と宣言されて生まれたので、私が『記憶持ち』なのは、国では周知の事実である。そのおかげで王城勤務になったしねー。
「ほお。」
魔王さまは、興味なさげに生返事すると、手が疲れたと言って、右手でも足をかかえ、両手で私を抱きなおしてくれました。
ぉお!
人生初(前世含む)のお姫様抱っこですよ!
というか、前世の記憶あるって事は、悪魔にはあまり興味ないみたいですねぇ。
チラッそのせいで誘拐されてるのかと思ったんですけどね?
魂の色が違うのには興味深々だったくせに、訳がわかったら「なーんだっ」っていうくらいの事なんですね・・・。
ということは、やっぱり鍵になるのは『王を作る』これだよ、なんなの王を作るって、実際のところ、りっぱな王様になる為に皇子を教育するのは『教育係の教師』ではないかな、帝王学っつの?よくわからんけど
だから、今、『王を作る者』として誘拐されている私は、不正解ってことだよね?それとも、やはり物理的な、『将来王様になる赤ちゃん作る者』って事だと
やっぱ王様と王妃様?
王はここにもういる(魔王がね)から、王妃様が必要ってこと?
え、
王様は、もう、いる。(種はある)
将来王になる皇子を産む王妃様がいない。(畑がない)
じゃあ攫ってこよう。
んで、私は今、攫われ中。
つーことは、ナニ?わたしナンパされたってこと?
・・・・ありえないでしょ。うん、色んな意味でね!
自慢じゃないが、このかた見た目で褒められた事なんか、いちっどもないし!
背も低いし!スタイルなんて、キュッキュッボーンだし!
じゃああ何でなんだよ!!と結局また『王を作る』という謎に戻りつつ、なぜか自分の容姿に残念になったりグルグルしていたら、いつのまにか眼下に黒い城砦が見えてきました。
「あと少しだ。」
低いナイスボイスが耳元で囁く。うん、ナイスボイス。恐いけどね!
いろんな意味で、慄きながら、私はまがまがしい城砦を視界から外した。
あれが着地点だと認めたくない(涙)