作るのは誰
日々、ぼんやり考えてみてる妄想キャラです
とある魔王様は考えました。
魔人と生まれ50年程で魔王と呼ばれる様になり、
魔王は城で寝起きしろと言われ、城在住となり50年あまり、
寝て起きて玉座に座り、城に持ち込まれる相談事から厄介事を(なんとなく)片付け、そしてまた寝る。
だいたい毎日これの繰り返しである、たまに暗殺っぽいのやら堂々と殴りこみやらあるけれど鼻クソほじって飛ばすくらいの労力で終了してしまう。
「魔王とは、つまらんなぁ」
玉座に膝をかかえて座ってポツリ呟く。
明日も明後日も同じ日々の繰り返しなんだろうか?
やだなーつまんねぇなー
だいたい他の奴らときたら、困った時か『俺つえぇ!今なら魔王殺れっかも?!』って時しか城に来ない。
だいたい『魔王』ってコレでいいの?ねぇ、いいの?
答えを求めたくとも側で控える餓鬼達は、プルプル振るえて四隅に固まるばかり。
「つまらんなぁ」
つぶやいてみても返事をくれる者はない。
退屈でしかたがないので、いつもの『秘儀!人界|睥睨≪へいげい≫』をやろうと、魔鏡を出現さる。
まぁ、なんのことはない覗きだが。
魔鏡の向こうに一山はあろうかという屋敷が見える、あぁ、あれは人の王が住む王城か・・・。
そして魔王は、ひらめいた。
そこに、王様としての生活の正解があるではないか、と。
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とあるメイドは労働していました。
王城の中庭で、御年8つになる皇子様の散策という名の冒険に付いてまいりました。やんちゃ盛りです、目など離せません、しっかりお見守りさしあげなければ、と気合をいれる為に背筋を伸ばせば、なにやら目の前に暗く影がさしました。
雲がお日様を隠したのかな?と見上げれば、燦々(さんさん)と降り注ぐお日様を逆光に黒い大きな鳥の影!
バッサバッサと盛大な羽ばたきも聞こえます!見たことはありませんが、北の方に住む魔物であったら大変です!
「皇子様!」
あわてて皇子に駆け寄ろうとした時、
「それは、王になる者だな?」
心の臓にひたりと刃物をあてたような畏怖感のある、それでいて静かで低く魅惑的なバリトンの美声が降ってきました。驚き逆光の影を見上げると、影はフワリと私と皇子の間に着地しました。
や・ば・い、これ、超やばくね?
皇子様と私の間に着地したのは、正体不明の鳥ではなく、黒衣を纏った超絶バリトン美形。背中に漆黒の翼、艶やかな黒髪から二本の巻いた角、そしてまるで血のように赤い瞳が、ヒタリと皇子を見ております!
やばい!これ、やばい確定だわ!!
これ、どっからどう見ても『魔王』でしょ!お、お皇子逃げてー!逃げてぇぇぇえ!!
心の中で絶賛にげてコールするも恐怖からか声にならず、ただ、はくはくと口を動かすにいたるのみ。
皇子様はその異様に驚いてか、放心して口開けたままポカーン。魔王と皇子の距離1m足らず・・・。
積・ん・だ
片田舎の貧乏貴族の次女に産まれ、12歳で我が家のほっそい縁をたぐり辺境伯のもとへ行儀見習いとしてメイド修行をし、14歳で伯爵夫人に産まれ持っての特異体質に目をつけられ、お墨付きで王城のメイドに推薦していただき、16歳の時に、裏庭で洗濯要員していた私をなぜか幼い皇子様に気に入られ、末端貴族の私が、皇子付きという栄誉をいただいて2年・・・・。
私のとんとん拍子の出世街道は、本日をもって終了しそうです(涙)、しかも私だけならまだしも、魔王による皇子誘拐を(とか惨殺とかお食事?)ゆるしたら、これは田舎の一族も終了しそうです(号泣)
ごめんなさい父上ぇー!
「ならば、おまえが王を作る者か?」
「は?」
心の中で、『父上没落ごめんね大セール中』だった私に、いつのまにか赤い瞳が向けられておりました。
あっれー?なんでコッチ見てるの?
「おまえは、王を作る者か?」
返事のない私にイラッとしたのか、魔王様の眉間にシワがよりました・・・おしっこちびりそうです。
大事な事なのでしょうね、二回聞きましたもんね。
でも聞かれている意味がわからないのです。
王を作る?たしかに皇子は次代の王様ですが、作ったのは王妃さまと王様です。わたしじゃありません
でもコレ、素直に違いますって言ったら、どうなるの?
じゃあダレだよ!って話になるよねぇ・・・王と王妃に決まってるじゃんー!なんて言っちゃって矛先そっちにいったら、没落どころか一族郎党死刑コースじゃね?
「・・・。」
「・・・。」
「違うのか?」
おぉう!魔王様眉間のしわ!しわが!のどかな谷山だったのが凍てつく険しい雪山になってます!
私は、張り付く喉にむりやり唾液を飲み込み、どうなるのかは解らないですが、そう、被害は最小限に留めたく・・・・。
「・・・ぉうさまを、っつ作っているのは、わたし!・・で、す?」
やっと搾り出した声で『わたしがママよ』宣言すると、魔王様の雪山の渓谷は消え去り、魔王様は一言そうか、と言うと私のウエストを左腕でグワシッと抱え、皇子様をチラリ。皇子ビクリ。
「もらっていく、お前は新しいのを探せ。」
ではな。と別れの挨拶と共にバサリと舞い上がりました、小脇に私を抱えたままで。
視界なかで、口を三角に開けたままの皇子が小さくなっていきます。
「ぇぇぇええええええっつ!!」
小さくなってゆく皇子が叫んでらっしゃいます。申し訳ありません皇子、先ほどの『偽証ママ』発言は
どうか、どうか忘れて下さい。出来れば言わないで下さい、不敬罪ですものね。
・・・というか私も、ココ叫ぶトコ?