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体に触れて

 そう言って、今までマリアの隣に座っていたレイヴンは、マリアの正面に立ち、そしてマリアの太ももに跨るように、座席に膝を立てた。レイヴンの両腕はマリアは閉じ込めるように壁についている。 


「レイヴン様!? あの……! 一体何を……!?」

「しーっ……目をつぶって、おとなしくしてろ」


 レイヴンの命令に反射的に目をつむる。

 言う事を聞いたマリアに、満足げなレイヴンが、ゆっくりとマリアの体をなぞり始めた。


 首、肩、二の腕、胸、腹、そして太ももと、以前エドワードから触られた箇所をレイヴンが忠実に触っていく。

 しかし、エドワードにされたような不快感はまったくなかった。

 エドワードは強引に、性的な感情を伴ってマリアの体を蹂躙したが、レイヴンは全く逆で、マリアの心の傷を癒そうと、優しく触れてきてくれた。


 最初は体を強張らせたままだったマリアだが、徐々に緊張が溶けていき、レイヴンの気遣いに思わず笑みがこぼれた。

 

「……何笑ってんのさ」


 不服そうなレイヴンの言葉に、マリアは目を開けて、お礼を言った。


「ありがとうございます、レイヴン様。レイヴン様の優しさが伝わってきて、思わず笑ってしまいました」

「ふん……別に、僕がしたいようにしただけだ」


 レイヴンはマリアから顔をそらしたが、耳が少し赤くなっていた。

 しかしすぐに目線をマリアに向け、質問をした。


「なんで記憶を消さなかった? その方がはるかにいいだろう。嫌な事を思い出さずに済む」


 その言葉にマリアはしばらく沈黙した後、そっと告げた。


「……確かに魔法で記憶を消した方が、楽かもしれません。けれど、嫌な記憶を含めて、今の私がいるんです。それに、嫌なことがある度に、記憶を消してもらう訳にはいきません。この先も嫌な事はありますから。それなら、嫌な記憶を持ってでも、前向きに生きていたいと思うんです」


 マリアはレイヴンの頬にそっと手を添える。


「何より、レイヴン様に負担をかけたくないんです。記憶を操る魔法はかなりの高度魔法ですし、触媒を使っても寝込む人が多いと聞きますから。……レイヴン様のお体が一番です」

「…………生意気」


 レイヴンはそう呟くと、マリアの胸をぎゅむっ!と掴んだ。


「きゃん! な、何するんですか!?」


 マリアは顔を真っ赤に染め、レイヴンを抗議するが、レイヴンはマリアの座っている側に横になり、マリアの膝に自分の頭を載せる。そして顔をマリアのお腹に押し当てた。

 レイヴンの行為に逃げようとするマリアの腰を、レイヴンは片腕で抱き込み、ぐいぐいとマリアの下腹部に頬ずりする。


「お前のいいところ探してるんだから抵抗するな」

「そ、そんな!――――っ! やぁ、だめぇ!」

 

 抵抗するなとは言われたものの、下腹部に感じる吐息に体が反応しそうになる。

 しばらくじっとしていたマリアだったが、もう我慢できないと涙目になりながら、レイヴンの頭をどけようとした時、


「スー……スー……」


 と、規則正しい寝息が聞こえてきた。マリアがレイヴンの顔をのぞき込むと、気持ちよさそうに眠っている。


「~~~~~~~~~~っ!!!」


 何とも言えない感情がマリアの頭を駆け巡ったが、あどけない寝顔に、何も言えなくなってしまう。

 やはり空間転移で体は疲れていたのだろう。マリアは傍にあった毛布を掴み、そっとレイヴンの体にかける。

 まだまだ首都まで時間がかかる。少しでも体が楽になるようにと、マリアは優しく、レイヴンの頭を撫で続けた。


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