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第9話 解読作業

《登場人物》


 アラン・ダイイング    探偵

 マリア・シェリー     探偵助手

 モーリス・レノール    シュゼット警察刑事部捜査1課警部

 カール・フリーマン    同刑事 モーリスの部下


 -被害者-

 エリー・アンダーマン  シュゼット国立中央図書館司書(第1被害者)

 イーライ・ゲイル   ブレーンスタイン博物館職員(第2被害者?)


 -容疑者-

 ジョルジュ・カイマン  シュゼット国立中央図書館司書

 シリル・プレヴェリネ    同         司書

 エリック・シルヴァ     同         司書

 クロード・モーマン     同         司書

 アリス・パルマー      同         司書

 ロビン・フィリモア     同         館長


 ― 5月2日 午後5時 ダイイング探偵事務所 ―




 倉庫見学を終えて、アランとマリアは探偵事務所に戻り、暗号の迷路を順を追って、解決しようと奮闘し始める。



 《F・56・A3TR》



 エリーが遺した暗号。イーライと思われる遺体が遺した暗号。アランにとって何故、同じものが遺されて発見されたのか?

 犯人を示す物? だとしても図書番号で遺される暗号について1文字1文字ずつ調べる事にした。



 まずは《F》。



 アランは椅子に座り、自分の脳にある言葉の事典で《F》を調べ上げていく。

図書館に関連するもの。博物館に関連するもの。人名、地名。あらゆる世界から《F》の付く単語を調べ上げていき、暗号の示す答えを探りあげていく。しかし、浮かび上がっているのは大量の選択肢。簡単には出す事ができない。

 


 そして次は《56》という番号。


 

 これが何を示すのかは、予想がついていた。

 図書番号ではない何かであるとすると、示す物は時間。もしくは日付、はたまたは地図の番号、極め付けは人の年齢。

 ここから探った方が暗号の壁は崩れやすいが、決めつけは良くない。ここは一旦、置いて、別の単語を置く。

 その間に助手は、探偵のサポートにまわる。

 さりげなく資料を机に置いたり、コーヒーや糖類補給となるお菓子を探偵の仕事の邪魔にならないように配置したりする。

 謎解きには糖類と苦味ある飲料は憑き物である。

「ありがとう」

 さりげない探偵のお礼が助手の励みになっていく。

「どういたしまして」

 アランは、一杯のコーヒーをすする。豆の種類に興味はないが、助手の淹れるコーヒーは何より格別だと考えてる。

 口に含んだ焦げ茶の液体は、いつものとは違いおいしい。焙煎豆の香りが丁度良い刺激を生む。

「美味しいね。このコーヒー」

「そりゃ、私が作ったブレンドですからね」

 たわいのない会話で探偵は小さな休憩に浸っていく。もう一口、コーヒーの香りと味を堪能してから作業再開しようと考えていた。

 もう一口と流し込んだコーヒーを舌の感覚を通り喉元をゆっくりと流れ、そのまま下へと落ちていく。

 カップを置いてひと呼吸をつき、再び、暗号との戦いを始める。



 《A3TR》という言葉。



 これが一番難解であるとアランは感じていた。何かの番号なのか? それとも、何か場所を示すものなのか? まったく想像がつかない。

 最大の障壁が今、大きく立ちはだかっているのが理解できた。

「うむ。そうくるか」

 マリアは自分も探偵業務のお手伝いとして、事務所の運営事務や経理事務等を行いながら事件の手伝いをしていく。アランに対するさりげない声がけも必要である。

「どうですか? 道は見えてきそうですか?」

 心配する彼女の表情に気にもせず、文面を見ながらアランは反応する。

「まだ行き止まり。ほかの道を探そう。ミス・シェリー」

「はい」

 必死に被害者が遺した暗号を解読しようと奮闘する探偵の姿にマリアは、薄い微笑みを浮かべながら自分の事務机に戻り、業務を再開。

 その間、ワープロのタイピング音と鉛筆もしくはシャーペンが紙に触れていく音が静かに事務所内を響く。

 この2人に《時間》という2文字の言葉は頭にもない状態だった。




 ―  同日6時すぎ シュゼット国立中央図書館 ―




 探偵が暗号解読を必死に挑んでいる中で、アリスはエリーの死について独自に調べ始め、自分の業務机に置いているデスクトップパソコンに記録をまとめていく。

 勤務時間外に残って自主勉強という形で調べ始めていた。

 彼女の死についてアリス自身、感じている事がある。それは、犯人がエリーの身近にいる人間ではないかということ。

 そしてその中でも一番怪しい人間が、外国所担当の人間である事これしかなかった。

 彼女は頭を抱え、両手で押さえた。

「どうしたの?」

 パルマーに向けて放たれた言葉。

 言葉が放たれた場所にはカイマンが心配そうに立ってアリスを見つめている。

 アリスはすぐに、微笑で返した。

「ん? いや、な、なんでもないんです」

「そうかい。近々休みを取ってみては? 働き詰めはよくないよ」

「ええ。そうします」

少し不思議そうに見つめながらもカイマンは再び自分の仕事に入っていく。

 アリスは、急いで、記録して自分のパソコンを閉じ、図書館の2号館へ。

彼女は本が入ったダンボールを詰めたスチールワゴンを運び、指定の本棚に入れる作業を行う。

 作業をする間、エリーの事を考え込む。

 何を告発しようとしていたのか? 怪しいのは誰か?作業をしながら、ふと見つめた先は、木箱。

 木箱には《ブレーンスタイン→国立中央図書館》と記載されている。

「もしかして……」

 アリスは思い当たる事が起き、急いで自分のデスクトップパソコンがある事務室へ足を急いだ。

 パソコンには、シュゼット国内で起きた出来事や事件等、過去の新聞記事も記録として蔵書されてあった事を思いだし、あることを調べていたそれは、1ヶ月前の事件記事。

 そうアリスは、アランたちと同じ記事を探していた。

 内容も全じ記事。

 しかし、その記事は探しても見つからなく、記事の日付と内容、そしてそれに対するキーワードを含めた検索をかけたが、全く見つからなかった。表示されている文字は、《この記事は見つかりません。削除された可能性があります》

「なんで見つからないの? あれおかしいわね?」

 もう一度記事について検索するが、結果は同じ。見つからなかった。

 その上、その日の記事は残っているのに肝心なページだけが開くことができない状態となっている事に疑問しか起きない。

「まさか……」

 アリスの背筋から感じる嫌な感覚と衝動、不安が一斉に押し寄せてきている事を感じた。

 彼女はすぐに記事記録の使用及び管理者の調べに移す。誰かがパソコンで、記事を消した可能性が残っている事にアリスは賭けた。

 静かにキーボードから発する独特な音が彼女の耳から響き渡り頭の中で巡り巡る。数分経ち、リストが開かれ最新の時間からおよそ1ヶ月前までの管理記録が閲覧出来た。

 アリスは自分の目で1つ1つずつ見ていき、リストを見ると表の真上に新しい記事記録管理者の表示され、記事の管理についての説明が書かれていた。



 《ブレーンスタイン博物館強盗事件の記事⇒削除済み》



「やはり削除されてたのね。削除申請者の名前は……」

 その表示の名前はアリスもご存知の人間だった。

「……これは!?」

 衝撃だった。

 少しの間彼女は手を止めて、誰もいない事を確認してから、記録を自分が持っているUSBにリストを写した。

 まさかアリスにとって、信頼していた人間がもしかしたらエリーの事件にとても深い関わりを持っている事に……


第9話です。 今回は暗号の解読作業になりますね。話は続きます!!



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