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第5話 都市ストラングの首なし遺体

※この物語はフィクションです。


《登場人物》


 アラン・ダイイング    探偵

 マリア・シェリー     探偵助手

 モーリス・レノール    シュゼット警察警部

 カール・フリーマン    同刑事 モーリスの部下


 エリー・アンダーマン   シュゼット中央図書館司書

 ジョルジュ・カイマン     同       司書

 シリル・プレヴェリネ     同       司書

 エリック・シルヴァ      同       司書

 クロード・モーマン      同       司書

 アリス・パルマー       同       司書

 ロビン・フィリモア      同       館長 

 



― シュゼット国地方都市 ストラング  ジール川―




 シュゼット国内の水流百選にも選ばれ、そう距離が国内で最も長い川がジール川。

 中央図書館のあるフィルストリートから約20キロ離れた所に、ある地方都市がストラングで、ジール川とつながっている。




 ジール川に設置された車両専用鉄橋は通行止めになっており、10台ぐらいの警察車両と救急車が停まっているのが理解できた。

 警察関係者達は鉄橋の下に集結しており、川には既に、数名の警察官が色々と捜索にあたっている。

 そんな現場が緊迫した状況の中で、1台の4WDが鉄橋の近くで停まり、探偵と助手が降りた。

「結構距離がありましたね。ここまで」

「そうだね。運転するの疲れたよ。帰ったらしっかり休もう」

 アランとマリアが到着し、現場へ近づくと、警察官の1人が声をかけた。

「おい、ちょっとあんた!」

 探偵は警官に一言、告げる。

「レノールの連絡を受けたんだが……」

 この言葉を受けた警官はすぐに態度を変えて、対応した。

「レノール警部ですか? 失礼しました。どうぞ、こちらです」

 警察官の先導でレノールのところまで2人は案内される。

 アランは警官に訊いた。

「被害者について何か知ってる?」

 アランの質問に対して、警官は事件に対してあまり気分がいいような素振りではない。

「被害者は、心臓を一突きですよ。しかも顔が分からない様に、死体の首だけとっているんです」

 マリアは警官の言葉を聞いて、背筋に冷たい風を感じた。

「なるほどね。えぐいね。あとは遺留品はまだ見つかってないのかい?」

「ええ、それが全く。カバンもここに来た経緯もないんですよ。被害者の車もないですし」

「ちなみに男性? 女性?」

 警官はアランの問いかけに即答する。

「男性です」

 現場には、レノールが両手で頭を押さえて、あるはずがない頭痛に苛まれている。

「相変わらず、忙しいね。警部」

「最悪だ。しかも首がない遺体は久しぶりだよ。で、遺体はそこの藪の中にあって、普段なら誰もわからない所をたまたま、犬とその飼い主が散歩で寄って発見したんだ」

 アランは警部に質問していく。マリアはその隣で、現場の周りを見渡している。

 砂利やゴツゴツした石が転がり落ち、川から流れ着くゴミや雑草がよく見えた。

「身元は?」

「身元が分かる遺留品は0。何も持っていない。ただ、ここ最近、捜索願いが出されているのが一件あって、名前はイーライ・ゲイルって奴だ。ほい。リスト」

 レノールは持っているリストをアランに渡して、特定のページを見つめる。

 リストには写真と一緒に、経歴などが載っている。



      ――――――――――――――――

 《捜索願》


 イーライ・ゲイル 34歳 

 事務職員 



      ――――――――――――――――



 どうやら、行方不明のゲイルは、痩せぼそった色白系であり、写真のゲイルは痩せぼそった様な頬骨が印象的であった。

 アランはリストを見た後、そっと閉じてレノールに手渡した。

「なるほどねぇ。それで、この遺体の死亡推定は?」

 警部は、答える。

「現時点でわかるのは腐乱状態を見て、約3~4日は経っている。それに……」

「それに?」

 レノールはある程度の警察の見解を2人に告げた。

「この遺体は川の水によって流れ着いたものじゃないんだ。そのまま放置されていた。服が濡れてなくてな。それにここ最近。この川の水量が若干減っていたのを見て、流れていないんだ。犯人は遺体を流さず、そのまま捨てたっていう見解だ。うちの鑑識は……」

「なるほどね。死因は?」

「腐乱状態と首が見つかってからになる可能性もあるが、心臓を1突きだった。おそらくエリーと同じ刃物だろう」

「でも、それは予測だろう?」

 アランの何気ない一言に対して、レノールは笑顔で返す。

「遺体をあとで見せてやろうか?」

 目が笑ってない笑顔は何より苦手で、アランは首を横に振って否定した。

「いや、いい」

 アランは続けて、訊く。

「それで遺留品は?」

「これだけ」

 レノールは1つの真空パックをポケットから取り出し、中に入ってある一枚の汚れたメモ紙を出して探偵に手渡した。

 白い手袋を着けて、アランは紙の内容を確認する。

アランにとってこの紙は大事で、表裏に書かれているものが何か? どうやら、エリーが残したものと同じ暗号が裏に記されているのが理解できた。

 


《F・56・A3TR》



マリアもアランの隣で紙を見つめた。

「また、同じ暗号ですね」

「ああそうらしい。面白くなってきたな」

「不謹慎だが、同感だよ。この手で犯人を牢獄へぶち込んでやるさ。でもこれで連続殺人が始まったわけだな。死体は第一被害者と関係を持っていた人間か、それとも犯人が遺した挑戦状というべきか……どう思う? ダイイング」

 アランはその間に首なし遺体の情報について1つ考えを展開してみた。

「首なし遺体の身元は身近なところだ。1件目のエリー・アンダーマンと」

 探偵の言っている推理に対して、警部の理解力は乏しい。

「どういうことだ?」

 この噛み合わない探偵と警部の間に、探偵助手が、さりげない発想が答えとなって現れた。

「あ、もしかして、図書館関係者!?」

 アランは首を縦に振り、肯定した。

「おそらくね。どっちかというと、美術館、博物館、図書館特にあの中央図書館にここ最近、関わった人間だろうね」

 レノールはアランの言葉に、少々疑問を持つ。

「でも、首無し遺体が持ってたのは、ただの暗号1つだけだぞ。もしかしたら関係ないやつかもしれない」

「おかしくないか? 仮に残すとすれば、他に何かあったはず、しかし遺体は、その汚らしい紙だけ肌身はなさず持っていた。だとすれば、ほかに身分証明書とか通帳とかクレジットカードを大事にするはずだよ」

「そうか。でも被疑者が奪った可能性が?」

「それは否めないね。でも少なからず、この首が吹っ飛んだ被害者はエリーとの事件に関わりがあるかもね。近くに博物館あったろ? どっちだ?」

「ああ、それならここから数百メートル離れたところにある。行っても無駄だ。老朽化に伴い閉館になってるよ。おっと、フリーマンから連絡だ。ちょっと失礼」

 とレノールは携帯を取り出して、通話ボタンを押し、そこからちょっと離れる。

 アランはその間、事件について暗号と共に考えている。今回の2件の殺人、繋がりがあるとすればそれは何処か? 何なのか? いつなのか? 頭の神経を研ぎ澄ませるが、未だ答えは出そうにないし、現時点で暗号が示すものが何なのか、答えが自分の脳を通って出る事はなかった。

「なぁ、マリア?」

「はい。なんでしょう?」

「家に戻ろう。そこでじっくり考えよう」

 マリアはアランのなんとないやる気が落ち込みへと感じたのを読み取り、答えた。

「はい」

 アランは踵を返して、両腕を上げながら背伸びをする。気怠そうな気持ちを抑えながら、再び、車を停めたところに向かって、マリアと共に歩いていく。

 途中に通話中のレノールに挨拶し、通り過ぎて車に向かう。

 2件の殺人とそして被害者達が遺した共通の暗号。謎は深まり、アランの心に大きな暗雲をたち込ませていった。


第5話です。 第2の事件。そして見つかった同じ暗号。展開はどうなっていくのやら次回をお楽しみに!!

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