第4話 エリーの遺志
※この物語はフィクションです。
《登場人物》
アラン・ダイイング 探偵
マリア・シェリー 探偵助手
モーリス・レノール シュゼット警察刑事部捜査1課警部
カール・フリーマン 同刑事 モーリスの部下
エリー・アンダーマン シュゼット国立中央図書館司書
ジョルジュ・カイマン 同 司書
シリル・プレヴェリネ 同 司書
エリック・シルヴァ 同 司書
クロード・モーマン 同 司書
アリス・パルマー 同 司書
ロビン・フィリモア 同 館長
― シュゼット国立中央図書館 会議室 ―
アランは会議室にいる職員全員に訊く。
「皆さん、一応お伺いしますが、この数字とアルファベットの羅列についてはご存知ないんですね?」
職員の中で1番早く答えたのはカイマンだった。
「いえ、初めて見ました。全く知らないです。図書番号ならまだしもこういうのはね」
それの後を追うように、パルマーも返す。
「私もわからないです。はい」
シリルも同じ答えをアランに返した。
「知らないですね」
「そうですか」
マリアはアランに軽く耳打ちして確認する。
「あとはシルヴァさんとモーマンさんだけですか……」
「そうだね。でも、聞ける事は少なそうだな。時間がただただ過ぎていくだけは避けたかったんだけどね」
するとパルマーは立ち上がり、2人に言う。
「思い出した!」
「えっ? 何をです?」
アリスはアランに視線を向けて告げた。
「思い出したんです。エリー確か、何かを告発しようとしていたんです」
最初の事件の内容で穏やかではなくなったが、さらに内容が穏やかではなくなってきた。
危険な雰囲気。
アランは彼女の様子を伺いながら、頬をさする。
マリアは、パルマーに聞いた。
「何かを……ですか?」
「ええ。おそらく、何か図書館に関係することかもしれない。でも本当に何を告発しようとしたのか? よく分からなかったんです」
カイマンはパルマー向けて言う。
「でも、図書館とかエリーが関わるとしたら合併話ぐらいの事だろ? それだけで、告発する事か? 第一にそれは国会の投票で決まったんだろう? ストラングの博物館の老朽化も伴ってさ」
「ああ、ありましたね」
「あったね」
探偵と助手は同じ感覚の答えで、司書達に返した。
「皆さんは何も聞いてないんですか? エリーさんに?」
カイマンはすぐに答えをアランに返す。
「いいえ。全然」
シリルも即答だった。
「全く知りませんね」
「そうですか」
アランは少し会議室を歩き回り、考えてみる。エリーが殺されなければならない理由を。
何を止めるのか? 合併話を? だが、それは国民の投票で元から決まっている事で止めれないこと自体、明確だった。
情報が足りなさすぎる。それに被害者が残した暗号が導く物がなんなのか現時点では出てきていない。わからない。
「ふむ。合併か……」
「先生?」
マリアは考え込んでいる探偵の顔を覗き込む。
探偵は我に戻り、不思議そうに見つめている探偵助手に告げた。
「ああ、なんでもないよ。なんでもない」
それでも不思議そうに見つめている探偵助手。
「本当ですか?」
アランは強調した。
「本当だって!」
丁度その時に、エリックとクロードが1冊の本を持って会議室に戻ってくる。
「ダイイングさん。ありましたよ。この番号の本。こちらじゃないかと思われます」
アランは、エリックが机に置いた本を見つめた。
《イエロー・ゾーン 著 カート・ロックマン》
クロードはアランに分かる様に説明する。
「そちらの通りの番号を探したんですが、これ一冊です」
「なるほど。他のジャンルとかは違うんですか?」
アランはそう訊くと、エリックはこっちを見ながら首を横に振り、否定した。
「ありえませんね。この番号からすると外国書の部門になりますから僕らのテリトリーのものです」
本の題名からして、事件性に関係ないことが理解できる。
アランはエリック達に言う。
「どうやら、あまり事件性はないようですね。その本は。もしかしたら図書番号じゃない可能性も出てきたな」
「そうかもしれませんね。先生」
マリアも同調していた。
するといきなりアランのスマートフォンが鳴り響く。通話の相手はレノール警部。
「ちょっと失礼」
アランは、電話の通話ボタンをおして、耳に当てる。
「何だ? 警部?」
レノールは急いでいたのか少々、息が上がっている事に、理解できた。
「大丈夫か? 警部」
『ダイイング。残念なお知らせだ』
探偵は皮肉混じりに訊く。しかし、声からして、とんでもない事である事は理解できるし、おそらく良くない話だろうという覚悟は持っていた。
「それは、君達、警察の捜査的にか? それとも面子的にか?」
警部は答える。
『両方だよ。2人目の被害者が出た』
「!」
アランは、レノールの言葉を聞いてすぐさま問い詰める。
「暗号は? まさか、同じのが!?」
『ああ、同じさ。最初の被害者、エリー・アンダーマンが遺した暗号も見つかったんだ。すぐ来てくれ。場所のマップはこっちに送るから……』
「あ、おい! 警部!」
電話は切られた。その数十秒後に、メールが1件。送られてきた。
地図も一緒に添付されている。
地図が示しているのは、ストラングという地方都市。
「おい、マリア。これを見てくれ」
マリアの視線はアランの持つスマートフォンの画面に移動した。
「これは……」
探偵とその助手の態度の変化、アランの電話相手との通話の内容状況からしてただらなぬ出来事が起きた事を感じ取ったカイマン。
青年は、探偵に訊いてみた。
「どうしたんです?」
アランは何事もな買ったような振る舞いで返す。
「いえ、なんでもないんですよ。皆さん、また、何か聞きにこちらに寄らせて頂くかもしれませんので、その時は宜しく。マリア、ストラングに向かおう」
アランは急いで会議室出て行く。
「あ、待ってくださいよ! 失礼しました」
マリアも会議室を後にする。
会議室に残ったのは、図書館司書の人間だけ。嵐のように登場し、嵐のように去っていった。
探偵は足を急がせ、図書館を出て行こうとしていく。その後を探偵助手が追う。まさかの2人目の被害者。この事件が大きく展開していくとは思ってもいなかった出来事。
2人は事件の脅威と最悪の出来事を予測しながらストラングへ向かった。
第4話でございます。 次回はどんな展開になっていくのでしょうか?
話は続きますよ!